"Biomass resources" that also contribute to global warming countermeasures
Updated by 鎌形 太郎 on July 07, 2025, 5:05 PM JST
Taro KAMAGATA
(Platinum Initiative Network, Inc.
After graduating from Keio University with a degree in economics in 1982, he joined Toppan Printing Co. In 1988, he moved to Mitsubishi Research Institute, where he was in charge of urban and regional management and public-private partnerships (PPP, PFI, etc.). He later became an executive officer and served as Director of the Regional Management Research Division, Director of the Platinum Society Research Division, and Managing Executive Officer and General Manager of the Research and Development Division, etc. He was seconded to Mitsubishi Research Institute DCS as Senior Managing Director in 2018, retired as an officer of Mitsubishi Research Institute in 2021, and became an advisor to Platinum Initiative Network in 2022. Leader of the Secretariat of the Platinum Forest Industry Initiative.
last timeの振り返りとして、我が国における化学産業の製造プロセスを、原料から化成品の生産まで改めて見ていきましょう。
我が国の化成品は、主に化石資源である輸入原油(13,504万kL)から精製された国産ナフサと、海外で精製された輸入ナフサ(2,336万kL)を原料として生産されています。国産原油はわずか39万kLしかありません。リサイクル原料は製品化されたプラスチックの3割以下です。
生産される化成品のうち、合成樹脂(いわゆるプラスチック)が696万トンと、およそ3分の2を占めています。そのほかには、合成ゴム、塗料、洗剤、繊維など多様な化成品があります。
プラスチックについては近年リサイクルの取り組みが進んでいますが、塗料や洗剤など、プラスチック以外の約3分の1を占める製品群はリサイクルが難しく、再利用原料としての活用はあまり期待できません。また、プラスチックをリサイクルしても製造時に減量が生じ、100%の再生産は困難です。
したがって、仮にプラスチックをすべて分別回収し、リサイクルできたとしても、化成品全体の3分の1程度しか賄えないと見込まれます。
このような背景から、前回お話ししたように、化学産業の脱炭素化に向けた原料転換には、バイオマス資源の活用が不可欠となります。
それでは、バイオマスとは何でしょうか? 太陽光のエネルギーによって成長した動植物など、生物由来の資源のことを指します。バイオマスには、農業系、木質系、動物系、微生物・藻類系などがあり、それらの廃棄物もバイオマス資源として利用できます。
バイオマスの語源は「bio(生物)」と「mass(物質・量)」を組み合わせたもので、生物由来の物質や資源の量を表す言葉です。主な特徴は以下のとおりです。
<再生可能な資源>
化石資源は一度使うと、再生に数千万年以上を要する有限な資源です。一方、バイオマスは植物や動物などの生物に由来するため比較的短期間で再生可能な循環型資源です。化石資源と異なり枯渇しにくいという利点があります。
<カーボンニュートラル>
植物は成長過程で大気中のCO2を吸収し、炭素を体内に蓄えます。これを燃焼・分解してエネルギーとして利用すると、排出されるCO2は、成長時に吸収した量と等しく、大気中のCO2を新たに増やすことにはなりません。一方、化石資源を燃やして発生したCO2は再生に非常に長い時間が必要なため、大気中にCO2を増やし地球温暖化の原因となります。
<地球温暖化対策への貢献>
再生可能かつカーボンニュートラルであることから、再生が難しくCO2を排出する化石資源の代替資源として注目されており、地球温暖化対策にも貢献します。
プラスチックをはじめとする多くの化学素材は、炭素(C)と水素(H)を骨格とする有機化合物から構成されています。そのため現在は、炭素と水素を豊富に含む石油が主要な原料となっています。
まず、石油を精製(加熱・蒸留)して、「ナフサ(例:C6H14やC6H12)」と呼ばれる液体原料を得ます。ナフサをクラッキング(高温分解)することで、「エチレン(C2H4)」や「プロピレン(C3H6)」などのモノマー(単量体)が生成されます。これらのモノマーを重合することで「ポリマー」(重合体)ができ、プラスチックなどの化成品の素材となります。得られたポリマー(合成樹脂)は、熱や圧力を加えることで、さまざまな製品形状に加工されます。
ここで注目すべきは、素材の“元”は炭素であるという点です。すなわち、炭素を含む化合物が得られれば、石油以外の原料でも化成品は製造可能です。つまり、炭素を多く含むバイオマス資源からも、プラスチックなどの化成品を作ることが可能なのです。
以上のように、バイオマス資源を活用した化成品製造は理論的に可能であることがわかります。そこで、プラチナ森林産業イニシアティブでは、化学産業の脱炭素化に向け、これまで化石資源に依存してきた化成品製造のプロセスを、リサイクル原料とバイオマス原料を中心とした持続可能な製造プロセスへと転換していくことを目指しています。
では、それは実際に実現可能なのか? 次回以降では、バイオマス資源を用いた化成品生産に関する技術動向や、具体的な企業の取り組みを取り上げていきます。(プラチナ構想ネットワーク顧問 鎌形太郎)
地域振興や脱炭素社会の鍵を握る「森林循環経済」。その最前線を紹介するウェビナー「森林循環で創出する未来」を開催します。登壇するのは、小林靖尚氏を含む産官学の実践者10名です。森林資源の活用がもたらす変革を、全国の先進事例も交えて議論します。
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