A gender perspective opens up the future of forests and forestry
Updated by 金本望 on July 22, 2025, 5:15 PM JST
Nozomi KANEMOTO
Leaf Rain Co.
He joined the Japan Forest Technology Association in 2021 and has been involved in several ODA projects in the forestry sector, calculating GHG emission reductions and managing project operations. 2024 he became independent and is currently working in the forestry sector based in France.
日本の林業といえば、チェーンソーを持ちヘルメットをかぶった男性の姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実際、林業は重労働で危険を伴う作業が多く、林業現場の従事者の約9割が男性を占めています(※1)。しかし、森林資源を持続的に管理・活用するためには、伐採・加工・流通のみならず、森林保全・地域振興・文化的価値を含む多面的な視点が求められます。こうしたなかで、森林・林業に「ジェンダーの視点」を取り入れる重要性が、国際的にも日本国内でも広く認識されつつあります。
環境管理と開発における女性の参画の重要性は、以前から国際的に認識されていました。1992年のリオ地球サミットでは「環境と開発に関するリオ宣言」の第20原則において「女性は、環境管理と開発において重要な役割を有する。そのため、彼女らの十分な参加は、持続可能な開発の達成のために必須である(※2)。」と明記されています。
そして2015年、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」では、17の目標のうちSDG5で「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る(※3)」ことが国際目標として明確化されました。
森林分野では、女性の参画によって森林資源の持続可能な管理と地域社会の発展が促進されることが、国際事例を通じて示されています。たとえば、西アフリカのコートジボワール共和国の農村部で展開されている「Women and Forests project(※4)」は、女性主体の非営利団体 MALEBI(※5)がアグロフォレストリー(森林農業)による森林再生活動を推進するとともに、持続可能な木炭の活用を進め、女性が森林の管理・保全に積極的に関わることを実現しています。
注目すべき点は、こうした活動を通じて女性たちが、森林資源の重要性や持続可能な管理の利点について地域住民に働きかけ、森林減少問題への意識を高める役割も果たしていることです(※6)。
また、インドの研究では、森林プロジェクトへの女性の参画は、地域の天然資源ガバナンスと森林の保全活動の改善に貢献し、森林再生の可能性を28%高めたことが報告されています(※7)。
※参照1:農林水産省『林業労働力実態調査』(2022)、P.90 資料Ⅱ-13「林業従事者数の推移」(閲覧:2025年7月8日)
*Refer 2:データベース「世界と日本」, 「環境と開発に関するリオ宣言(L.33/Rev.1)」(1992年6月14日)、『外交青書36号』(外務省仮訳)(閲覧:2025年7月6日)
※参照3:UN Women Japan公式サイト「SDGsの目標5:ジェンダー平等を実現しよう」(閲覧:2025年7月6日)
*Refer to 4:European Commission(閲覧:2025年7月6日)
*Refer 5:MALEBI公式サイト(閲覧:2025年7月6日)
※参照6:ITTO『Tropical Forest Update, Vol.28』(2019) P9(閲覧:2025年7月6日)
※参照7:UNDP (2016) GENDER AND CLIMATE CHANGE Gender and REDD P5(閲覧:2025年7月6日)
日本国内でも、女性の視点を生かした森林活動が多様に展開されています。例えば、フレグランスボディケアブランド「Beauté de Sae(ボーテデュサエ)(※8)」を手がける木村小枝さんは、荒廃が進む里山の現状を知り、森林保護と人の癒しを繋げる新ブランド「FORÊIGE(フォレージュ)」を立ち上げています。女性の感性を生かしてこれまで廃棄されていたクロモジを安眠や美容に役立つ製品に加工。里山を守り人々に安らぎをもたらす商品開発は、地域資源の価値向上と森林保全を両立させています(※9)。
高原林産企業組合(栃木県)では、女性職員だけの素材生産班(ガールズユニット)を結成。女性の活躍促進は、現場従事者不足の改善、業務の質の向上、職場内コミュニケーションの円滑化等、様々な効果をもたらしています。
※参照8:Beauté de Sae 公式サイト(閲覧:2025年7月8日)
※参照9:FOR GOOD プロジェクトページ「森林保護のために捨てられている、香木クロモジを安眠や美容に生かしたい!」(閲覧:2025年7月8日)
女性の多様な視点と感性を取り入れることは、森林保全だけでなく、地域経済の活性化や住民同士のつながり強化にも寄与します。林野庁では、事業の一環として「森女ミーティング(※10)」や「Forest Creative Women’s School(※10)」などのネットワーク形成を支援し、多様な担い手の育成を積極的に進めています。今後、森林・林業の持続的な発展を支えるうえで、女性の果たす役割と期待はさらに大きくなるでしょう。(株式会社リーフレイン 森林コンサルタント 金本望)
※参照10:林野庁「林業における女性の活躍」林野庁公式サイト(閲覧:2025年7月8日)