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Innovations in Technology for Easily and Accurately Measuring Forests Visualizing Forest Resources with a Simple Forest Measurement Tool Using a Commercially Available All-Sky Camera152

Technological innovation for easily and accurately measuring forests - Visualizing forest resource volume with a simple forest measurement tool using a spherical camera

Updated by 金本望 on October 09, 2025, 9:07 AM JST

desire for money

Nozomi KANEMOTO

Leaf Rain Co.

He joined the Japan Forest Technology Association in 2021 and has been involved in several ODA projects in the forestry sector, calculating GHG emission reductions and managing project operations. 2024 he became independent and is currently working in the forestry sector based in France.

近年、森林が果たす役割が注目を集めています。SDGs(※1)や2050年カーボンニュートラル(※2)の実現に向けて、森林が持つ二酸化炭素(CO2)吸収機能は、持続可能な社会づくりに欠かせない存在です。さらに、企業の森林経営により吸収されたCO2を「Jクレジット」として認証・取引する仕組みも拡大しており、正確に森林情報を把握することがますます重要となっています。

従来の森林調査は効率性とコスト面で課題

また、日本の人工林は50年以上たった成熟林が半分以上を占めるようになり(※3)、伐採して利用し、再び植林する時期を迎えています。これらの一連の循環を進めるうえでも、効率的に森林の状態を把握する方法が必要とされています。

一方で、従来の森林調査は効率性とコスト面で課題がありました。これまでの調査方法では、樹木の直径や高さを一本ずつ測定する「毎木調査」や、区画ごとに測定する「プロット調査」が一般的でしたが、いずれも多くの人手と時間を要します。レーザー測定機器やドローンを活用する場合は、数十万~数百万円の初期投資が必要となり、コスト負担が大きくなります。「手軽に、低コストで概要を把握したい」というニーズに応えることは、従来の手法では難しかったのです。

(出典)林野庁ホームページ 森林生態系多様性基礎調査内容

*Reference 1:外務省「JAPAN SDGs Action Platform」(2025年9月22日閲覧)
*Refer 2:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2025年9月22日閲覧)
*Reference 3:林野庁「森林整備保全事業の概要 令和6~10年度」P3,(2025年9月22日閲覧)

現場で行うのは写真撮影のみ

こうした課題を解決するために一般社団法人日本森林技術協会が開発したのが、全天球写真を使った「簡易林内計測ツール」(※4)です。

必要なものは、家電量販店などでも購入可能な10万円前後の全天球カメラと一般的なパソコンだけ。現場で行うのは写真撮影のみで、低木や下草の除去なども不要です。解析は無料ソフトで行え、インストールも専門知識も不要。そのうえ、均一な人工林であれば、森林の断面積を実際の値の±10%程度の精度で推定できるので、実用レベルのデータが得られます。

(出典)(一社)日本森林技術協会資料より

「当協会は、もともと航空写真を使った森林航測技術を有していました。2013年にリコーから世界初の全天球カメラTHETAが発売され、購入して使用したところ、全天球写真から森林情報を取り出せるのではないか、ということに気づきました。」

そう語るのは、簡易林内計測ツールを開発した一般社団法人日本森林技術協会 業務執行理事の金森匡彦氏。行政研修などで現地調査と写真計測を比較してもらうと、意外に精度が高いことに驚かれることが多いと話します。

「毎木調査と遜色ない精度でデータが取れることが、この技術の大きな魅力だと感じています。」

一般社団法人日本森林技術協会の金森匡彦氏

*Refer to 4:森林情報サイト羅森盤(2025年9月22日閲覧)

無償ソフトで森林全体の断面積を自動計算

この方法は、80年ほど前にオーストリアの森林官ビッターリッヒが考案した、プロットを設定することなく森林の胸高断面積(※)を推定する「ポイントサンプリング法」を現代に応用したものです。従来は視準器という道具を使って調べていましたが、全天球写真を使えば同じ原理をパソコン画面上で実行できます。斜面の林分もそのまま解析でき、従来必要だった傾斜補正も不要です。

実際の流れも非常にシンプル。森林内で数枚の全天球写真を撮影し、その画像をパソコンに取り込みます。専用ソフトに画像をドラッグ&ドロップし、マウスで対象の木をクリックして数えるだけで、森林全体の断面積が自動的に計算されます。

結果はCSVファイルとして保存でき、炭素クレジットの算定などにも役立てることができます。このソフトは国の補助事業の一環として開発されており、誰でも無償で利用できる点も魅力です。

精度の検証では、スギやヒノキなど針葉樹の人工林18か所で試験したところ、実測値との誤差は平均0.7%(最大+8.93%~最小-9.88%)と非常に小さく、またばらつきもなく安定した結果が得られました。下草が多い林や、レーザー測定が苦手とする条件でも精度が落ちなかった点は特に注目されます。

(出典)(一社)日本森林技術協会資料より

※胸高断面積とは、胸高位置(地上から1.2mの位置)での樹木の断面積(横断面)のことで、ある森林におけるすべての木の胸高断面積を足し合わせたものを林分胸高断面積といい、森林の資源量の目安となります。

利用者支援と活用の幅

日本森林技術協会では利用者支援も行う予定です。メールやオンライン会議での無料相談、現地調査の受託、撮影画像の解析代行、レポート作成、炭素クレジット算定支援など、利用者のニーズに応じたさまざまなサービスの提供が可能です。

「森林は社会全体の財産です。本ツールは、行政による森林モニタリングや、企業の社有林管理、個人所有林まで幅広く使っていただけます。この技術を通して、もっと身近に『自分の森を知る』ことにチャレンジしていただければ嬉しいです。」(金森氏)

全天球画像を使った森林計測は、「簡単・安価・十分な精度」の三拍子がそろった新しい手法です。従来の高価な機材を使わなくても、手軽に森林資源量やCO2吸収量を把握でき、森林所有者や企業にとって大きな助けになります。これからの森林経営や脱炭素社会づくりに向けて、大きな力を発揮すると期待されます。(株式会社リーフレイン 森林コンサルタント 金本望)

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