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People and Society Inheriting Forests that Have Lived for a Long Time: Memories of Seven Communities Depicted in "Forests and Time153

People and Society Inheriting Long-Living Forests: Memories of Seven Regions Depicted in "Forests and Time"

Updated by 山本伸幸 on October 10, 2025, 9:15 PM JST

山本伸幸

Nobuyuki YAMAMOTO

Forestry and Forest Products Research Institute, National Forestry Research and Development Institute

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 林業経営・政策研究領域長/専門は森林政策、林業経済。近年の研究テーマは近代化と森林・林業。著書に『森林と時間 森をめぐる地域の社会史』、『地域森林管理の長期持続性 欧州・日本の100年から読み解く未来』、『森林管理制度論』など。「森林管理制度の近代化過程に関する研究」(林業経済学会賞(学術賞))、「日本における森林計画制度の起源」(日本森林学会論文賞)受賞。

『森林と時間 森をめぐる地域の社会史』という本を研究仲間たちとともに新泉社から上梓したのは昨夏のことだ。奥山へと続く一本の道の写真を装幀にあしらった本の帯には、こんな惹句が並ぶ。

樹木の生命は数十年、数百年に及ぶ。森林と地域の持続的な関係の構築には長期の時間スケールが不可欠だが、一人の人間の一生では抱えきることができない。
次世代への継承の困難さが増す農山村を見据え、人びとが地域の森林に刻んだ歴史を道しるべに、森と人のよりよい関係の未来像を探る。

プラチナ構想ネットワークがその主眼をおく企業主体の動きと、地域社会における様々な森林と人の関係をつづったこの本の中味は、少なからぬ距離があると思っていた。だから、拙著を読んでいただいた『森林循環経済』編集長の住友馨さんから、自分たちのコンセプトと重なるので、何か書いてみないかとお誘いいただいた時には、正直言って、少し意外だった。

その後、住友さんとプラチナ構想ネットワーク顧問の鎌形太郎さんと直にお話しする機会があった。そして、なるほど、確かに2つは共鳴する部分があり、私たちの本を『森林循環経済』の読者の皆さんに知っていただくことで、一見遠いと思っていたお互いに化学反応を起こすことにもなるのではないかと思い直した。共鳴する部分、それは「時間」である。

企業にしろ、地域社会にしろ、人が集い、まとまり作るものである。そして、そうしたまとまりを作る人という生き物は、誰しも年老い、やがて生命を終える。遠い未来に不老長寿の薬ができるかもしれないが、少なくとも今現在、人はおしなべて長くても百年ほどの限られた時間の中で、ただ一度きりの生を生きている。

だから、企業や地域社会といった人間集団は、日々変化し、明日には昨日とは違う態様を見せる。数十年もすれば、まったく異なるものとなっていることもままある。そんな人間集団よりも、もう少しゆっくりとした時間を刻む森林は、企業にも地域社会にも厄介なものであると同時に、とても魅力あるものだ。私たちはこの思いを共有しているのではないか。

拙著の章立ては次のとおり。森林をめぐる地域の社会史に関して、場所、時代、そして人を異にする7つの物語が紡がれる。

序章 森林の時間と人の時間 山本伸幸
第1章 山造りに出会った人びと 島﨑洋路と森林塾 三木敦朗
第2章 山村社会の継承と女性のライフコース 栃木県の山村の二〇〇年にみる女性たちの歩み 山本美穂
第3章 山と川と共に暮らす集落と住民の生活史 竹本太郎・佐藤周平・松村 菖
第4章 福島県浜通りの近代と森林・断章 山本伸幸
第5章 紙・パルプ産業と地域持続性の懸隔 王子製紙山林部の展開と現場作業組織の相互連関 早舩真智
第6章 赤井学校の時代 ある地方大学にみる国産材供給整備の源流 奥山洋一郎
第7章 森林管理の当事者性と専門性 林政の変遷と天竜・富士南麓にみる地域実践 志賀和人
終章 森林と人の関係を紡ぎ直し続けるために 山本伸幸

この先、『森林循環経済』上で、この7つの物語から派生した記事を、各著者による筆で、掲載できればと思っている。関心の在りかは読者それぞれだろうが、何かしら興味を持っていただけるならば、たいへん嬉しい。

最後に、本のあとがきに書いた次の文章で、今回のエッセイを締めくくろう。

『森林と時間』というタイトルには、森林を考える際の困難や切なさ、そしてそれでもなお、胸躍ってしまう気持ちを込めた。私たちは長くても一〇〇年前後の時間しか生きることのできない人であり、その私たちが集いつくる社会は移ろいやすい。そんな私たちとともに長い時間をかけて成長する森林と人、社会の関係は複雑さに充ち満ちている。本書を契機として、森林と時間についての思索がいっそう深まればと願う。

新泉社のホームページ上では、立ち読みもできる。 パラパラとで良いので、ぜひ一度ページを捲っていただけたならば、編著者としてこの上ない喜びである。(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 林業経営・政策研究領域長 山本伸幸)

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