Updated by 『森林循環経済』編集部 on April 15, 2026, 9:13 PM JST
Editorial Board, Forest Circular Economy
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We aim to realize "Vision 2050: Japan Shines, Forest Circular Economy" promoted by the Platinum Forest Industry Initiative. We will disseminate ideas and initiatives to promote biomass chemistry, realize woody and lumbery communities, and encourage innovation in the forestry industry in order to fully utilize forest resources to decarbonize the economy, strengthen economic security, and create local communities.
日本が直面する超高齢化や人口減少、地域経済の停滞といった課題に対し、森林資源を地域の価値創出につなげる「森林循環経済」の社会実装が注目されている。3月30日に岡山市で開催された日経地方創生フォーラム「木造のまちづくりを創出し、森林循環経済を実現する」では、自治体、大学、地域金融機関、民間企業のトップが集結。産官学金の枠を超えた連携を軸に、森林産業のアップデートと新たな地域経済の「岡山モデル」としての木造まちづくりの社会実装に向けた活発な議論が交わされた。

プラチナ構想ネットワーク会長の小宮山宏氏は基調講演において、日本が化石資源への依存から脱却し、再生可能エネルギーや都市鉱山、バイオマスを活用する「資源自給国家」になれるポテンシャルがあると語った。
木造のまちづくりを推進する最大の意義は、都市部に巨大な木材需要を創出し、停滞する川上の林業を牽引することにある。小宮山氏は、技術開発により10階建てや20階建ての高層木造建築が可能になっていることに加え、石油資源に代わる「木質バイオマス」によるバイオマス化学のポテンシャルを強調。1万ヘクタール規模で木材を集約する拠点を全国に1000カ所構築し、日本の木材生産量を現在の3倍にして自給するという具体的な構想を示した。

さらに、森林という「社会的共通資本」を維持するための資金面の解決策として「住民出資」を紹介。新NISAなどで巨額の資金が海外に流出する中、住民や自治体が「国内の一次産業と連携したエネルギー事業」に出資し地域に還流させる「投資の受け皿」を作ることが不可欠だと指摘した。こうして生まれる資金が、これら事業の収益化を促し、林業や農業の事業承継問題の解決、さらにはAIやドローン技術導入による作業機械化の資金源にもつながると訴えた。
木造のまちづくりを推し進める上で長年のボトルネックとなっていたのが、建物の接合部の耐久性や強度の問題である。この課題に対し、染めQテクノロジィ代表取締役の菱木貞夫氏は、物質同士を一体化させる独自の「ナノ結合技術」という解決策を提示した。
菱木氏は、60歳の時に「10億円の借金」を抱える状態から事業をスタートさせたという自身の原体験を告白。全く相手にされない状況から執念で研究を続けた同社の新素材は、日本大学で行われた強度実験において、激しい振動を加えても接合部が破壊されず、最終的には木材(母材)そのものが折れるという結果を出したことを報告した。

この強靭な接合部による「耐震補強」の可能性に、菱木氏は「木でこそ超高層ビルができるのではないか」と、木造建築のさらなる高層化へ期待を寄せた。さらに、木固有の美観を保ちながらUVカットや防腐・防水効果を付与する独自の「木部ソリューション」技術も確立しており、あらゆる建築物の木造化・長寿命化に寄与すると語った。
パネルディスカッションでは、現場における社会実装の壁などが議論された。
岡山県知事の伊原木隆太氏は、県内の人工林で植林から50年が経過し十分に育ちきった木が伐採されずに滞留しており、伐採面積に対する再造林の面積が3分の1にとどまっている現状を指摘した。また、各事業者が自身の扱いやすさを優先して局所最適に陥り、規格が揃った輸入材に依存してしまうサプライチェーンの分断が壁になっていると言及した。これに対し県は、非住宅の木造化や海外への需要拡大でサプライチェーン全体を連動させるとともに、林業の採算性向上と環境改善を両立させるため、花粉が1%以下というスギ・ヒノキの「少花粉苗」への植え替えを強力に推進していると述べた。


ライフデザイン・カバヤ代表取締役社長の窪田健太郎氏は、岡山県が川上から川下までの産業が全て揃う稀有な環境でありながら、県産材の県内消費が半分にとどまるサプライチェーンの分断を課題として挙げた。解決策として、同社が県と「5年間で5万立方メートルの県産材を使う」協定を達成した実績を紹介。川下企業がまとまって需要予測と消費を確約することで、価格統制や計画的生産がしやすくなり、100%県内で循環するモデルが構築できると提唱した。また、西粟倉村での社員による植林活動や、産学連携によるCLT構法開発など、サプライチェーンを回し木材の価値を高める独自の取り組みも報告した。
ちゅうぎんフィナンシャルグループ常務執行役員の西明寺康典氏は、同社が取り組む建築物LCA(ライフサイクルアセスメント)の算定支援について紹介した。具体例として、岡山県産の認証木材の積極的な活用と省エネ設計により、温室効果ガス排出量を4割削減できた環境価値を可視化した事例を挙げた。さらに、従来の金融ロジックでは評価しにくく資金が集めにくい「自然資本ファイナンス」の課題に対し、地域金融機関がアレンジャーとなることで、機関投資家や事業会社などの民間資金に加え、公的機関や開発金融も含めて資金を集め、地域に投資してもらう「ブレンディッドファイナンス」のスキーム構築を目指していると語った。


岡山大学長の那須保友氏は人材育成の重要性を強調した。学内では、CLT(直交集成材)を用いた講義棟「共育共創コモンズ(OUX)」を実践的な教材として活用している。木の持つ力が学習環境に良い影響を与え、建築系の学生が木質材料や構造を研究する場として機能している。さらに、真庭市のサテライトキャンパスにおいて、学生が泊まり込みで地元の林業課題に向き合うワークショップを実施していることを報告した。現場で社会課題に主体的に取り組む「熱い学生」たちを、持続可能な未来を創る次世代の担い手として輩出していく姿勢を示した。


フォーラムでの議論を通じ、「木造のまちづくり」が単なる建築手法の移行ではなく、分断された地域経済のサプライチェーンをつなぎ直す「ハブ」として機能することが見えてきた。新たな技術が中高層木造化の安全性を担保し、川下企業が県産材の確実な消費を約束し、金融機関が環境価値を評価して投資を呼び込み、大学が現場で熱量を持った人材を育てる。これら産官学金の連携が「都市の木造化」という一つの明確な出口に向かうことで、滞留していた人工林に経済的価値が生まれ、持続可能な林業サイクルが動き出す。
岡山で実践を目指すこの連携モデルは、日本の森林資源を真の国家的な強みへと転換するための、有効な社会システム変革の形を示していると言える。
*Reference link
21おかやま森林・林業ビジョンの進捗状況について – 岡山県ホームページ(林政課)
3/30「日経 地方創生フォーラム」 菱木の講演登壇を配信いたしました|お知らせ|染めQテクノロジィ
本学学長がパネルディスカッションに登壇 地域と連携した森林循環経済の実現に向けて – 国立大学法人 岡山大学
日経 地方創生フォーラム「木造のまちづくりを創出し、森林循環経済を実現する」へ登壇 | ライフデザイン・カバヤ
Life Design Kabaya Wins Good Design Award and Wood Design Award for CLT Hybrid Construction Method to Promote Use of Lumber from Okayama Prefecture and Establishment of Circulating Wooden Housing Supply Chain
40% Reduction in GHG Emissions through the Use of CLT Timber Produced in Okayama Prefecture LCA Calculations for the New Serio Building Show "Regional Contribution Using Trees