Updated by 『森林循環経済』編集部 on May 18, 2026, 11:54 AM JST
Editorial Board, Forest Circular Economy
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We aim to realize "Vision 2050: Japan Shines, Forest Circular Economy" promoted by the Platinum Forest Industry Initiative. We will disseminate ideas and initiatives to promote biomass chemistry, realize woody and lumbery communities, and encourage innovation in the forestry industry in order to fully utilize forest resources to decarbonize the economy, strengthen economic security, and create local communities.
オンラインイベント「森林循環経済トークライブ Vol.2 森のしごとをつくる女性たち ― 森と地域をつなぐ実践会議」を2月27日に開催しました。全国各地の現場で仕事をつくってきた女性たちが、これまでの実践や思考の過程を共有する場として企画しました。林業現場の作業員や会社経営者をはじめ、カフェ・ゲストハウス運営、メディア・プロデュース事業など、多種多様な形で森に関わる9名の女性たちが集まりました。個性豊かなバックグラウンドや現場のリアルな声は大きな共感と反響を呼び、これからの森との多様な関わり方を示すものとなりました。
登壇者の一覧はthis way (direction close to the speaker or towards the speaker)

登壇者の皆さんがどのような経緯で今の仕事に就いたのか、その入り口はまさに十人十色です。
レジャーや移住がきっかけとなった方もいます。北海道ニセコ町でトドマツ精油の製造などを行う澤田さんは、「毎日スノーボードをしてみたい」という夢から移住し、地域おこし協力隊の活動を通じて森の仕事に行き着きました。千葉県でカフェ&ゲストハウスを営むkaoriさんも、「サーフィン目的で移住したら、たまたま自宅の隣に荒れた山があった」というエピソードを披露。自力で山を整備しているうちにスキルが向上し、特殊伐採まで行うようになったそうです。
一方で、強い使命感や人生の転機から森に入った方もいます。和歌山県で会社代表を務める奥川さんは、高校時代に紀伊半島大水害で被災し友人を亡くした経験から、「土砂災害をなくす山づくり」を目指し起業しました。静岡県で林業会社代表を務める兵庫さんは、兄の死や自身の結婚を機に家業を継ぐ決断をしたと語りました。
また、日常の直感から飛び込んだ方も。山形県で林業に携わる「きよみ」さんは、「近所を走る木を積んだトラックがきっかけで林業会社を見学に行き、山に入った瞬間『楽しい!』と感じた」ことで未経験から飛び込みました。岩手県の林業会社で働く千葉さんは、不登校の子どもに挑戦を促す中で「自分も挑戦していない」と気づき、46歳でこの世界へ入ったという力強いストーリーを教えてくれました。岡山県でメディア事業を展開する山本さんは、大学時代に配属された研究室で「木材流通」をテーマにしたことがきっかけだと振り返りました。
澤田さんが経営するHIKOBAYUのインスタグラム
kaoriさんのインスタグラム
奥川さんのインスタグラム
過酷な環境であっても、現場で働くからこそ得られる喜びや魅力がそれぞれの言葉で語られました。
きよみさんが語った「毎日山の姿が違うので楽しい。動物の足跡がついたり、花が咲いたり」という言葉からは、現場の特等席で自然と向き合う日々の喜びが伝わってきました。同じく林業会社で働く高橋さんも、「レアな3日間しか咲かない花を見れたときは『勝った!』と思う」と自然を感じる楽しさを表現しつつ、「チェーンソーが重かったのに、だんだん筋肉がついてきて嬉しい」と自身の体の変化を楽しむたくましさも覗かせました。千葉さんも「体を動かして必死に働くのが好き。その瞬間瞬間に携われるのが楽しい」と、現場ならではの充実感を語りました。
また、兵庫さんは、一歩間違えれば命に関わる急斜面での作業を通じて「ああ、これ生きてるなっていうのをすごく実感する」と現場の圧倒的な手応えを語りました。一方、元看護師の澤田さんは、森の魅力を「全ての命がただあるだけで、共生し合っている」と表現し、人間が本能的に心地よいと感じる「森の香り」が都会の人に癒しを与える根源的な価値を強調しました。
きよみさんが勤める高菊林業のインスタグラム
兵庫さんが経営する兵庫親林開発のインスタグラム
それぞれの活動をいかにして地域社会や一般の人々に届けているのか、具体的な工夫が紹介されました。
岩手県で林業会社を経営する會澤さんは、SNSで発信する効果を共有しました。もともとは「社員の家族に現場の様子を知ってもらいたい」と始めたInstagramが、結果的に全国から人が集まる大きな反響に繋がり、1年待ちで入社した女性もいるというエピソードが語られました。
奥川さんは、個人がどんぐりから苗木を育てて山に返す「戻り苗」を展開しています。「ただ売って終わりではなく、2年間通してお伝えし、愛着も湧いてくる」と語るように、参加者が大切に育てた苗木は、獣害などで再造林が困難になった伐採跡地など、林業家が困っている場所を自社で手配して植林しています。体験を通じて森を再生する仕組みを構築している取り組みが紹介されました。
また、地域の人々を巻き込む工夫も語られました。kaoriさんは、裏山を整備する際に「歩くところを伐倒しながら遊んでもらい、みんなで豚汁を食べる」とイベント化し、都会の人々が無心になれるアクティビティとして提供しています。山本さんも、かつての山道を取り戻すために竹林を切り拓く「山道ピクニック」を実施し好評を得ているほか、鹿児島県産材のPRにおいては「島津家の時代から400年続く林業」という歴史的背景を打ち出し、木材の価値を地域文化と結びつけて発信する取り組みを教えてくれました。
會澤さん・千葉さん・高橋さんが勤めるアイシンフォレストのインスタグラム
山本さんが運営する「ちょうどいい材木ラジオ」
「女性が長く続けるための工夫は?」という視聴者からの事前質問に対しても、登壇者の皆さんから等身大の答えが返ってきました。
体力差は避けられないため、「できないことはお願いします、と伝える。生理の話なども伝えています」と、無理をせず率直にコミュニケーションをとる重要性が語られました。一人暮らしの社員のために自らお弁当を作って体調を気遣うなど、温かい環境づくりの工夫も共有されました。
また、過酷な環境さえもポジティブに捉える強さも語られました。真冬の現場ではお弁当のご飯が凍ってしまうほどの寒さになるそうですが、「楽しめばネタなので」と笑い飛ばし、厳しい環境を受け入れて働く力強さが印象的でした。
今回のイベントは100人以上が視聴し、うち8割は女性でした。開催後、多くの共感の声が寄せられましたので、一部をご紹介します。
・どんぐりから苗木を育て、約2年後に山に植林するという体験を商品化して、しかもその苗木を戻す場所も手配出来ているところが正に循環経済かと思いました。
・『毎日山の姿が違うので楽しく幸せ』という言葉が林業の本質を捉えているなと。体調面について日々正直に伝えるようにされている点は、どんな業種でも共通するので見習いたい点でした。
・みなさんそれぞれの、山に対する目線の角度の違いが面白く、楽しく聴かせていただきました。場所や職が違えど、山に関わっている人が感じる心地よさは同じなのだなと改めて確認することができました。
・海やレジャーなど様々なきっかけから森林に関わるようになった経緯が大変印象的でした。自ら林業の現場に入っている方や、自分で事業を起こしている方など、ビジョンやチャレンジ精神をお持ちで、自分自身と照らし合わせて見つめ直す機会となりました。
森というフィールドでポジティブに働く女性たちの姿が希望を与え、トークライブは最高の盛り上がりで幕を閉じました。木材生産だけではなく、体験や香り、空間づくりといった多様な森との関わり方が、これからの森林循環経済の未来を力強く広げていくことを感じさせてくれる時間でした。『森林循環経済』編集部ではこのトークライブの続編の開催を予定しています。森と地域をつなぐ実践者たちの今後の展開に、ぜひご期待ください。