Making the Ate Forest "Visible" and Connecting It to the Future: Reconsidering Forest Heritage Management in the Context of Noto's Reconstruction
Updated by 一二三悠穂 on March 16, 2026, 9:26 PM JST
winning hand containing one of each terminal and honor tile plus one extra copy of any of them
Yuho HIFUMI
Ishikawa prefecture (Hokuriku area)
He joined the Ishikawa Prefectural Government in 2012. After working on forest planning and forest GIS, he worked as a forestry extension advisor at the Agriculture and Forestry General Office, where he was involved in the registration of "Noto's Ate Forestry" as a forestry heritage site and the establishment of the "Creative Reconstruction Platform for Noto Using Ate Forestry and Noto Hiba" after the Noto Peninsula Earthquake of 2024. He holds a Master's degree in Global Environmental Studies from Kyoto University. He is a Noto Satoyama Satoumi Meister at Kanazawa University. Forest General Supervisor (Forester).
「能登のアテ林業」は、先人の長年の実践から編み出された独自の技と知恵に支えられてきた。しかし、震災や豪雨の被害、農山村の担い手不足、病害の発生などにより、その継承は岐路に立たされている。本稿では、能登で受け継がれてきたアテ林業の特徴と課題、そしてデジタル技術を用いて森の診断、再生を試みる新たな取り組みを紹介する。
林業遺産「能登のアテ林業」は、能登の農家林家の実践から派生した独特の施業体系であり、同じ場所で植栽と間伐を繰り返して仕立てた択伐林景観が大きな特徴である。アテ(ヒノキアスナロ)は、スギに比べ成長は遅いものの、耐陰性が高く、林床の弱光環境でも長期間にわたり生存、成長できる。また、枝などから発根して成長する「伏条更新」によるクローン繁殖を得意とし、天然林では成木のアテの周囲に伏条で更新したアテが多くみられる。
能登の林家には古くから、若いアテの下枝を石などで地面に押さえて発根を促す、アテの生態を”模倣”した独特の造林技法が伝わってきた。こうした技は、個々の林家の観察と創意工夫から生まれたものであり、能登ならではの林業のスタイルを形作ってきたと考えられる。

一方、このような特殊な人工林景観は、林業経営の重要なファクターである密度や林齢構成の基準がないまま、家計などその時々の需要に応じて、いわば「気まぐれ」的に伐採と造林を繰り返した結果とも言われている。森林の構造を長期的にどう育成・更新するかを捉える視点が弱いため、伐採や更新の判断が属人的になりやすく、専門家による現地調査でも、たびたび林内の照度不足や間伐の遅れが報告されている。
この「間伐遅れ」は、特に若いアテの成長にとって厄介な問題である。暗く風通しの悪い湿った環境ではアテは「漏脂(ろうし)病」になりやすく、放置すると材の周辺部分から腐朽が進み木材としての価値を大きく損なう。また、「アテ=陰樹(暗い環境を好む)」という誤解から、複層林化を目指してアテを樹下植栽したものの上層の間伐を十分に行わず、数年後には再び林内が暗くなり、下層のアテの成長が止まってしまう(最悪の場合は枯死する)事例もみられる。耐陰性が強いアテも、成長には一定以上の明るさが必要である。
アテ択伐林の継承が図られていない背景には、木材価格の低迷以外に、こうした管理の曖昧さが指摘されている。

こうした状況の中、輪島市など奥能登2市2町の森林所有者で構成される能登森林組合は、農林中央金庫の公益信託「森林再生基金」(通称、森力〈もりぢから〉基金)の助成を受け、林業遺産であるアテの森を再生させる「県木アテ100年の森づくりプロジェクト」に着手した。
対象地に選ばれた輪島市三井(みい)町は、アテの主産地として知られ、国鉄の貨物列車が運行していた時代には、地元の駅が木材の集積地として機能するなど、かつて林業で活況を呈した「木の町」であった。周囲の山には100年生のスギやアテも見られ、長年にわたり手が加えられてきた一方で、一筆ごとに木の大きさや樹種が異なる複雑な林相となっており、今後の施業方針を立てるのは容易ではない。また、個人所有の山林は昔の記録が少なく、広い山のどこにいつアテを植え、どのような保育(間伐や枝打ちなど)をしてきたかといった履歴をたどることも難しい。

そこで、このプロジェクトでは、近年林業の現場で活用が進んでいる「スマート林業」技術(レーザ計測やドローンなど)を用い、地上と上空の両方から森林構造を詳細にスキャンし、森を「解読」する作業からスタートした。樹種・本数・直径などのデータが揃うことで、森林のタイプを「単層林/複層林」「一斉林/混交林」にタイプ分けでき、木の成長や混み具合から「伐る/伐らない」の判断や収穫量の推定が可能になる。
また、これらの情報を林業用の地理情報システム(GIS)に保存し、デジタルマップとして「見える化」することで、伐採の範囲や作業用の路網の位置など、現場の具体的な作業内容を決め、事業を進められるようになる。今回行った地上レーザ計測では、樹木1本1本の樹形を表す点群データや座標まで記録されており、より高度な解析を行えば、将来、「木の健康や活力」を推定したり、「どの木を残し、どの木を伐るか」といった選木の判断などに利用できることが期待されている。
また、今回の事業では、森林の立木調査に加えて土地の境界測量も行った。能登の山林の多くは地籍調査が完了していないため、所有者も土地の境界が分からないケースも多く、森林整備の合意形成を遅らせる原因となっている。スマート林業技術で取得した森林のデータからは、精度の高い地形図も作成可能で、こうした境界の推定にも威力を発揮している。

奥能登では、これまでアテ林業を支えてきた篤林家や森林組合のベテラン職員が第一線を退きつつあり、これまで経験や記憶に頼ってきた管理を若い林業者へ引き継ぐことが課題となっている。今回のプロジェクトで行われた森林調査は、森の状態や境界を明確にし、森林所有者や現場の技術者の合意形成を進めるための基盤づくりとなった。森林の構造や履歴が「見える化」されることで、個々の判断に依存していた施業を、より科学的で共有可能な形へと転換できる。これは、地域の森づくりを持続的に続けるために欠かせない取り組みで、今後も継続して取り組んでいく必要がある。
能登のアテ林業は、長い年月をかけて地域の人々が築いてきた知恵と実践の積み重ねで成り立っている。震災を経て、改めて森と向き合う今こそ、伝統と新しい技術を組み合わせ、次の世代が安心して森を受け継げる環境を整えていく好機でもある。=後編へ続く(石川県農林水産部森林管理課 一二三 悠穂)

*References
石川県輪島林業事務所:収量密度図を使ったアテ択伐林の密度管理方法.石川県(普及資料) (1994)