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Why Focus on “Wood Utilization” Now? — Satoshi Tachibana, Chair of the Forestry Policy Council, Discusses the Goals of “A ‘Forest Nation and City of Wood’ That Will Last a Century”323

Updated by 『森林循環経済』編集部 on July 15, 2026, 2:37 PM JST

Editorial Board, Forest Circular Economy

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We aim to realize "Vision 2050: Japan Shines, Forest Circular Economy" promoted by the Platinum Forest Industry Initiative. We will disseminate ideas and initiatives to promote biomass chemistry, realize woody and lumbery communities, and encourage innovation in the forestry industry in order to fully utilize forest resources to decarbonize the economy, strengthen economic security, and create local communities.

6月5日に閣議決定された新たな森林・林業基本計画において、初めて「百年つづく『森の国・木の街』へ」という副題が掲げられた。計画取りまとめを牽引した林政審議会会長の立花敏氏(京都大学大学院教授)への独占インタビューを通じて、「木材利用」から始まる林政の転換点に迫る。さらに、森林・木材がもたらすウェルビーイングや新たな空間価値の事例を交え、森林循環経済の最前線に立つ実務者は今、木材の価値をどう評価し、どこへリソースを投資すべきなのかを探る。

基本計画はどう変わったのか―日本の林政の大きな転換

「森林循環経済」編集部(以下、編集部):今回新しくなった「森林・林業基本計画」は、全体としてどのような意図が込められているのでしょうか。

立花敏氏(以下、立花):まず注目していただきたいのは、今回の計画で初めて「百年つづく『森の国・木の街』へ」という副題がついた点です。一般の方々にも広くアピールし、「木材を使うことが森林の持続性、持続的管理につながる」というメッセージを強く打ち出すために、委員からの提案で追加されました。

さらに、序文の構成も異例のものとなりました。従来は、森林にはこんな機能があるという森林の多面的機能、「川上」の話から始まっていましたが、今回は「木材利用」から始まる構成に変更しました。木材を使う社会を作ることが、森林・林業・木材産業の良い循環に寄与し、ひいては森林の持続性をより確実にするという強いメッセージの表れです。

Source: Forestry Agency

また、計画を作って終わりにするのではなく、KPI(重要業績評価指標)を活用したPDCAサイクルを本格的に導入しました。林野庁担当者から林政審議会に進捗を毎年報告していただき、できたところとできなかったところを振り返るという仕組みができたのは大きな進歩です。

加えて、市場の前提となるマクロデータの計算手法も変更されました。木材自給率の計算において、これまで考慮されていなかった「輸出分」を含めるようになり、新たな計算では実態に合わせて2%ポイント程度上昇する見込みです。また、森林資源量の把握についても、総蓄積量と総成長量には精度の高い「森林生態系多様性基礎調査」のデータを用いています。それにより1haあたりの森林蓄積量、つまり生産量が大きくなりますので、再造林率が現在より高まると見込まれます。

これにより、従来の「森林簿」ベースでは2022年に約55億立方メートルとされていた蓄積量が、森林生態系多様性基礎調査を用いることで2025年に約100億立方メートルへと大幅に増加し、1ヘクタールあたりの年成長量は5.1立方メートルと見積もられています。その結果、生産量から逆算される主伐面積(分母)が小さくなり、再造林率の値も実態に合わせて40%超へと上昇することになります。

これらの変更には、これまで過少評価されていた森林資源量や利用実態をより正確に捉え直し、今後の議論の前提となるベースラインを実態に近づける狙いがあります。

国産木材を多面的に長く使う社会へ

編集部: 国産木材をより多く使う社会を作っていく上で、市場やルールはどのように変わっていくのでしょうか。

立花: まず重要なのは、建築に多く使われる「製材用材」を増やすことです。1973年頃には日本人1人当たり0.6立方メートルの製材用材が使われていましたが、現在は約3分の1の0.2立方メートルまで減少しています。林業先進国のドイツでは生産される丸太の7割が製材として使われ、輸出もされています。日本もこうした状況に近づけるべく、今回の計画では製材用材の利用量を1,400万立方メートル(令和6年実績)から1,800万立方メートル(令和12年目標)へと増やす方針を打ち出しています。前計画から引き続き、製材用材を増やしていく方向性になっています。

その上で、私は木材を「長く使う」ことが必要だと考えています。化石燃料に代わって再生可能資源である木材を使うことには意義がありますが、伐採後すぐにバイオマス発電等で燃やしてしまうのではなく、まずは使えるところはしっかりと建築物や家具として使い、その後はボード等の木質系新素材へと形を変えながら形を変えて長く使っていく、そして最後に燃料にするという「カスケード利用」が重要です。木材が広範に使われ、かつ長く地上に留まることは、炭素の固定量が増加することを意味し、気候変動対策に直結します。

Source: Forestry Agency

基本計画には含まれませんが、中古住宅市場の整備も今後の大きな課題です。現在、日本の住宅の寿命(滅失年数)は平均30年余りですが、アメリカは60年弱、ヨーロッパは70〜80年と長く使われています。実は、日本の住宅寿命の短さがネックとなり、建築物に使われた木材の炭素固定効果が「J-クレジット」として認められなかったという経緯もありました。中古住宅が適切に評価され、売買される市場が育ち、性能の良い木造住宅がライフスタイルに合わせて何十年も長く使われ続けるようになれば、炭素の固定期間も延び、社会全体にとって非常に大きなメリットが生まれます。

木材を長く使えば、木材を大量生産する必要がなくなります。どのように木材を使い、それを供給する森林をどう取り扱うかは重要な視点です。今回30年ぶりの変更として、森林のゾーニング(機能に応じた区域設定)をシンプルにしました。天然林と人工林という2つのカテゴリーに分け、将来的に人工林の経営対象を今の約6割の630万ヘクタールに集約する方針です。林業用適地として主伐・再造林を行っていく人工林です。天然林については、そのなかに利活用等により機能の維持増進を図る天然林を設けています。生産の対象を明確にし、出てきた木材を長く使い資源を循環させることで、森林を劣化・減少させない形を目指しています。

木材の「合理的な価格」のカギはウェルビーイングと環境貢献

編集部:木材の買い手有利の現状を打破し、持続可能なサプライチェーンを築くためには何が必要でしょうか。

立花:現状では買い手の力が強く、木材が安く買われる傾向があると考えています。低迷する立木価格のままでは山元へ利益が還流せず、再造林の費用を捻出するのが難しくなり、持続的な林業が成立しません。使う側が再造林費用を含む合理的な価格で納得して購入するための鍵となるのが、「ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良い状態)」や、「ネイチャーポジティブ(生物多様性などの環境への貢献)」といった価値の再定義です。

具体的な事例はいくつもあります。公共建築物の木質化を進める「みなとモデル」(東京都港区)の調査結果では、ある保育園で内装に木材を使ったところ、木の調湿機能によって空気が適度に保たれ、「子どもが風邪をひきにくくなった」という声があがっています。また、ある眼鏡店で店舗を木造化し、木の積み木で遊べるスペースを作ったところ、従来の年配層から子連れファミリー層へと客層が大きく拡大し、売り上げにつながったというケースもあります。

Source: Forestry Agency

さらに、建築材としての木のメリットはコスト面にも表れます。例えばコンビニエンスストアの店舗を軽量鉄骨造から木造に変えたケースでは、木材は軽量であるため土台の工事費が安く済むうえ、熱伝導率の違いから鉄より夏や冬の光熱費の削減効果があるという声も聞いています。

このように、木材がもたらす健康面での効果や、エンドユーザーのビジネスに直結するメリットをしっかりと提示していくことが重要です。

「森業」が企業経営にもたらす価値

編集部:今回の基本計画では、新たに「森業(もりぎょう)」という言葉も登場し、異業種からの関心も集まっています。

立花:森業は、林業以外の産業が森林空間を活用して新たな価値を生み出す取り組みを総称するものです。森林空間をどう使うかを捉え直す広い概念として、森林サービス産業や、二酸化炭素の吸収量を取引するJ-クレジットなども含んでいます。森業の展開によって山村地域の所得につながることを期待しています。

新たな可能性として非常に興味深い実例があります。ある企業では新卒入社3年後の離職率が3〜4割に達していましたが、新入社員に対して森林セラピー基地で1週間の企業研修を導入し、継続的に実施したところ、なんと離職率がゼロになったそうです。普段のオフィスとは違う森の中を歩くことで、仲間意識が強まり、困ったときに相談しやすい関係性が築けたためです。この会社では入社数年後にも同様に研修を行っていると聞きました。莫大な採用・教育コストを抑えられるという点で、森の活用がすべての企業経営にもたらす価値は計り知れません。

Source: Forestry Agency

森林と地域の循環をどう回すのか ― 地域ごとの「多様な林業」へ

編集部:全国で森林循環経済のモデルを展開し、地域エコシステムを構築するには何が必要でしょうか。

立花:まず、日本の森林と林業は一様ではないという前提に立つ必要があります。一般材生産を中心とする地域もあれば、吉野や尾鷲のように優良材生産を行う地域もあり、それぞれの地域に即した林業と木材利用の形があります。

ですから、全国一律のモデルを当てはめるのではなく、自治体を含めた「地域の皆さんが自分たちのことを考える」という主体性が何より重要です。国から降りてくるものを待つ、この計画をなぞるのではなく、都道府県にも市町村にも独自のKPIを作っていただき、地域ごとの特性を生かした森林循環のエコシステムをどう構築するかを自ら実践してもらうことを期待しています。100年後に、それぞれの地域の特長を活かした森林や林業、木材産業、そして木材利用の姿ができ上れば、強靭な地域や国土になるはずです。

木材の価値をどう評価するか ― 実務者へのメッセージ

編集部:最後に、森林循環経済の最前線に立つ実務者に向けて、メッセージをお願いします。

立花:私が実現したいのは、「森林を劣化・減少させずに、木材を多面的に長く使う社会を作りたい」ということです。そして、それは日本だけでなく、世界全体がそういう方向に向かってほしいと願っています。

個人的には現在の人工林すべてを生産の対象にする必要はなく、条件の良い林業適地をしっかりと循環的に経営していけば、今の半分の面積でも十分に木材需要をまかなえると考えられます。その生産林から出てきた木材を、欧米のように70年、80年と長く大切に使い続ける社会こそが理想です。

特に事業者の皆様には、木材を単なる資材として扱うのではなく、環境保全やウェルビーイングといった「多面的な価値」を適正に評価し、森林の循環を念頭においた適正な価格で買い支えるという行動への転換をお願いしたいです。そうした価値評価の転換こそが、持続可能なサプライチェーンを築き、100年先の未来へとつながっていく第一歩になります。

<プロフィール>
京都大学大学院農学研究科教授。岩手県生まれ。
東京大学・文部教官助手、森林総合研究所・主任研究官及び北海道支所・チーム長、筑波大学准教授等を経て現職。専門は林政学・林業経済学。農林水産省・林野庁・環境省の審議会や委員会の委員等を多数歴任。
単著に『入門・森林経済学』(学文社、2024年)、編著に『東アジアの森林・木材資源の持続的利用:経済学からのアプローチ』(農林統計協会、2018年)、『木力検定3 森林・林業を学ぶ100問』(海青社、2014年)。
(公社)大日本山林会刊の月刊誌『山林』に「林産物貿易レポート」を2003年4月より連載中。

*Reference link
森林・林業基本計画:林野庁
林政審議会:林野庁

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