Implementing Future Tree Selection and Group Selection Harvesting in the "Ate 100-Year Project": Reconsidering Forest Heritage Management in the Context of Noto's Reconstruction (Part 2)
Updated by 一二三悠穂 on April 21, 2026, 9:14 PM JST
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Yuho HIFUMI
Ishikawa prefecture (Hokuriku area)
He joined the Ishikawa Prefectural Government in 2012. After working on forest planning and forest GIS, he worked as a forestry extension advisor at the Agriculture and Forestry General Office, where he was involved in the registration of "Noto's Ate Forestry" as a forestry heritage site and the establishment of the "Creative Reconstruction Platform for Noto Using Ate Forestry and Noto Hiba" after the Noto Peninsula Earthquake of 2024. He holds a Master's degree in Global Environmental Studies from Kyoto University. He is a Noto Satoyama Satoumi Meister at Kanazawa University. Forest General Supervisor (Forester).
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Visualizing the Ate Forest and Linking it to the Future: Revisiting the Forestry Heritage Forest on the Occasion of Noto's Reconstruction (Part 1)
能登半島地震と奥能登豪雨は、地域の森林とアテ林業に深刻な影響を与えた。一方で、この危機は「百年先の森をどう残すか」を林業関係者に改めて問う契機にもなった。輪島市で始まった「県木アテ100年の森づくりプロジェクト」は、被災地の復興と未来の森林づくりを同時に進める試みである。本稿では、震災後1年間の取り組みを通じて見えてきた新たな森づくりの姿を紹介する。
デジタル技術を活用した森林調査(前編参照)の結果、プロジェクトの対象地は、55~120年生のスギとアテの入り混じった混交林で、成立本数が650本/ha~1,500本/haと密度のバラつきが大きく、若いアテには初期の漏脂(ろうし)病が発生していた。林内には、植栽や伏条により更新したアテの稚樹がところどころ見られたものの、照度不足で成長が遅れているものが多かった。
林業では木を育てるため、枝打ちや間伐などの「保育」を行う。アテ林業にとって、間伐には以下の効果がある。
・過密状態を解消し、光環境を改善することで、アテの生育を促す
・林内の風通しが良くなり、湿気を好む「漏脂病」の原因菌の活動を抑える
より長い目線で見れば、間伐とは、「伐る木」と「残す木(育てる木)」を選ぶことで、将来の森林の価値を決定づける重要なプロセスである。そこで求められるのは、最終的な収穫目標となる木の具体的なイメージ(径級、品質)で、それを決める要因は市場の動向である。現在、能登ヒバ(アテの製材)は、従来の住宅用の土台、柱としての利用が伸び悩む一方、家具、内装向けの板材が取れる大径木ニーズが高まっている。大径木を育てることは、植林から伐採までの期間(伐期)が通常の林業よりも長くなるため、「長伐期施業」とも呼ばれる。 アテは成長が遅い木で、大径材を収穫するには80年から100年以上の年月が必要とされている。

間伐を行う際にはまず林内を踏査し、どの木を残し、どの木を伐るのか選ぶ「選木(せんぼく)」を行う。選木は単なる作業ではなく、「未来の森の価値を決める」意思決定であり、伐採後の山の良し悪しは選木を行う技術者の力量によるところが大きい。
間伐には、品質の悪い木を淘汰する「劣勢間伐」や収穫に重きを置いた「優勢間伐」などいくつかの方法があり、選木の仕方も山の状態や作業の目的に応じて変わる。今回の調査で計測したアテは、まだ細い個体が多いことから、付加価値の高い大径木のストックを増やすべく、アテの成長を阻害しているライバルを丁寧に間引いていく必要があった。こうした方法は、欧州では「将来木施業」や「育成木施業」と呼ばれている。
今回の現場では、樹勢・形質・安定性に優れた100本のアテを「将来木」として選定し、その周囲の木を間伐するための選木を行った。作業に参加した森林組合職員からは、「普段は伐採する木を選んでいたが、残す木を意識した選木は初めてだった」「普段(の選木)とは考え方が違い、凄く頭を使う」といった声が聞かれ、気づきも多かったようだ。良い選木は、長伐期施業の基本であり、その判断には、地域の林業者が長年培ってきた経験と、理論的なアプローチの両方が求められる。今回の取り組みは、そうした知識の融合を進める貴重な機会となり、森林組合の技術レベルの向上にも資するものだったといえる。現地で白くマーキングされたアテの将来木は、作業に当たった関係者の間では「百年木」と呼ばれており、今回の森づくりプロジェクトの象徴となっている。

能登ヒバは、ブランド木材として近年評価が高まっており、復興需要も相まって市場で能登ヒバを求める声は増している。一方で、山にある資源量は限られているため、将来に渡って資源量を維持していくためには、伐採後の跡地に新たに苗木を植え、収穫された資源を補っていく必要がある。しかし、アテの育林はこまめな間伐や枝打ちによる密度管理が必要であり、林業の担い手不足が進む中、かつてのような丁寧な管理は難しいのが現実である。そこで新たな更新のアプローチとして導入された手法が、「群状択伐」である。
群状択伐は、森林の一部を小面積まとめて伐採し、天然更新や植栽によって森林の更新を図る収穫方法である。木々の間を1本ずつ間引く間伐と違い、部分的に樹冠の無いエリアを作ることで林床に十分な光が届くため、アテの生育に適した条件が長期にわたって維持され、更新や成長を成功しやすくする狙いがある。ただし、アテは浅根性のため強風で倒れやすい樹種で、過去には台風被害により広い範囲で倒木被害が発生している。伐採区の設定では、強風が吹き付ける方位や尾根部分は避けるなど、風向きや地形を慎重に考慮する必要がある。このように、過去の経験を教訓に、新しいアプローチを取り入れていくことでアテ林業の継承とアップデートを進めていく。

「県木アテ100年の森づくりプロジェクト」は、地震発生から間もない2024年4月に始まり、9月の豪雨によって一時中断を迫られながらも、県内の他事業体や行政の協力を得て2025年3月に完了した。約18ヘクタールの森林で間伐や枝打ち、群状択伐を行い、新たに1,000本近いマアテが植栽された。現地には林業遺産「能登のアテ林業」を紹介する木製看板が設置され、2024年秋には地域の小学生達による記念植樹も行われた。
能登のアテ林業は、他に類を見ない独自のスタイルとして発展し、文化財建築や輪島漆器など地域の文化の継承を図る上で絶やすことの出来ない資源だが、人が植えて育てた人工林である以上、施業のバランスが崩れると、成長や更新がうまくいかなくなるという弱点を持っている。今回の取り組みを通じ、アテ林業の継承のためには、気象害や病害虫のリスクを見極めながら、形質の良い木を残して大径木へ育てる重要性が再確認された。また、人口減少が進む中、市場のニーズや労働力の変化を踏まえ、先進技術や海外の知見も取り入れながら施業や更新の戦略を柔軟に再構築する必要性も実感された。今回のプロジェクトを通じ、いくつかの新しい試験的な施業を実践する機会を得られたことは、アテ林業にとって大きなプラスになると考えられる。
地震発生から2年が経過し、現在能登では、今回取り上げた「林業遺産の森」をはじめ、県内外の企業、団体が参加する林業のスタディツアーや植林体験など、森林整備や地域との交流を通じた「関係人口」の動きが広がりを見せている。震災を乗り越えて進められた能登の森づくりが、多様な主体に支えられながら未来の世代へ確かに受け継がれていくことを願いたい。(石川県農林水産部森林管理課 一二三 悠穂)
