The presence of trees, which we interact with for "play" and "healing." Let's re-examine the benefits they provide in our daily lives.
Updated by 小倉朋子 on April 24, 2026, 9:48 AM JST
Tomoko OGURA
Total Food Corporation / Japan Chopstick Culture Association
(Representative Director of Total Food, Inc., comprehensive food consultant / Outside director of two companies listed on the Tokyo Stock Exchange / Concurrent lecturer at Asia University, Toyo University, and Tokyo Seitoku University / President of Shoku Kijuku / President of Japan Chopstick Culture Association, etc. / After working for Toyota Motor Corporation's Public Relations Department, he became director of international conferences and studied abroad before assuming his current position. After working for Toyota Motor Corporation's Public Relations Department, he worked as a director of an international conference and studied abroad before assuming his current position. With "food and mind" as his main focus, he is well versed in all areas of food, from trends (analysis and development) to food culture, manners, nutrition, health management, food environment and mental health, and has a wide range of specialties. He has written academic papers on "chopstick culture and rituals," "Japanese chopsticks and peculiarities," and "waribashi and the food service industry," and has authored and supervised numerous books on chopsticks. He is said to be the only researcher of Japanese chopstick culture in the world.Total Food official website Japan Chopstick Culture Association website
昭和の時代まで箸やタンス、テーブルなど日常生活において必要な道具には木製のものが多く、昔から木に触れて木に守られて日本人は暮らしていたことを以前書きました。家屋も木造が多かったのですから木々がなくては日本の生活は成り立ちませんでした。しかし、こうした生活必需品以外の、例えば“遊び”や“癒し”などの視点においても、木々と触れ合ってきました。
昭和の時代はまだまだ素朴な遊びをしていました。例えば落ち葉を重ねて風車を作ってみるとか、幼少時代に小枝を箱型に重ねていき、落とした人が負け、というゲームをしたことも思い出します。どんぐりを拾ってつま楊枝を差してコマを作ってコマ回しをしたり、どんぐりを顔に見立てた人形を作ったり。
竹は様々な遊び道具になりました。竹を削って竹とんぼを作って飛ばしてみたり、笹の葉に細工をして笹舟を作ったり。笹の葉の内側にちょっとした切り込みを入れるだけで笹笛になるので、しばしば作っては吹いて遊びました。私の場合は、全て祖父母から教わった遊びでした。夏休みに蓼科の別荘に行った時に、森林に囲まれたひと時の中で散歩がてらに覚えたのです。ですが、こうした遊びを東京に戻って同級生に教えても、誰も笑うこともなく覚えてくれて一緒に楽しめた記憶があるので、おそらく当時は違和感なく受け入れられる土壌があったのでしょう。例えば公園の砂場に何かを書こうとしたら、落ちている枝を使って文字や絵を描く、といったことは、“ふつう”のこととして子ども達はしていたので、日頃から「木に触れる」ことが自然に受け入れられていたのです。
幼稚園や小学校では、図画工作の授業で落ち葉や松ぼっくりを利用してアート制作をしましたので、教育機関においても自然に触れさせ木々を利用していた時代です。
ですが、時代は急速に変わり、子ども達の遊びは室内ゲームが主流となりました。菌の発生を恐れて砂場は公園から撤去されています。落ち葉や小枝で遊ぶ子どもには「汚いから触るのはやめなさい」という保護者の声が聞こえそうです。

香りに関しても次世代の感覚はかなり変化しています。森林浴という言葉があるように木々の「気」や香りを感じることは心身の癒しになりリフレッシュ効果があるとされています。林野庁や森林総合研究所の資料によれば、我々が森林の香りと言っている物質は「フィトンチッド」という樹木が発散する揮発性物質で、そのおもな成分はテルペン類とよばれる有機化合物だそうです。本来は樹木が害虫や微生物などの外敵から身を守り、病原菌の感染を防ぐために発するものですが、人間にとっては無害で、そればかりかリフレッシュ、消臭、脱臭、抗菌、防虫など人間の暮らしに有益な効用があるとされています 。
しかしある企業から聞いた話で小学生の中にはアレルギーでなくても天然の檜風呂の香りに吐き気を催す、また、森林の香りに気分が悪くなる子どもがいるそうです。森林ではないですが、生の苺の香りと苺香料の匂いをかがせて「どちらが美味しそうな本物の苺の匂いか」尋ねたところ、8割超の児童が人工香料を「本物」「おいしそう」と答えたという調査もあります。
かつて日本は、たたみを張り替えてはその香りに癒され、新芽の香りに春を感じ、新たな気持ちとなったものです。薪を割り、火を起こして煮炊きをして熱い風呂に入り木材の有難さを実感できました。生活の中に木々が入り込んでいない現代では、五感までもが変化しているのでしょうか。
技術革新が進めば生活も社会も変わるのは自然な流れですから、変化は日本だけではありません。ですが、日本は他国と比較して木々の恩恵を相当受けてきた国ですから、近年の急激な生活の変化は、人間力に何かしらの影響をもたらすのではないか、といった懸念も抱いてしまいます。AIの発展も目覚ましく、すぐに答えらしいものが見つかり、また言語化を求められ、急ぎ次へ進まなくては置いていかれるような不安感を抱きながら生きている人が多いと感じます。木々にもう少し触れてみる、それだけでも柔かな気持ちが膨らむのではないでしょうか。(トータルフード代表取締役・日本箸文化協会代表 小倉朋子)
※参考
森林の有する多面的機能について 保健・レクリエーション機能:林野庁
「森の香りを科学する」国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所/季刊 森林総研 No.49