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「花粉を出す森」を衛星データとAIで特定 woodinfoが解析サービスを正式リリース005

Updated by 『森林循環経済』編集部 on April 10, 2025, 11:53 AM JST

『森林循環経済』編集部

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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

スギ花粉の発生源を高精度で可視化する「花粉発生源解析サービス」を、4月9日にwoodinfoが正式リリースした。衛星画像、ドローン、地上実測を組み合わせた「統合型モニタリングシステム」により、花粉の発生量を特定する。対象森林の管理方針を合理的に見直すことが可能となり、花粉症対策と森林経営、さらにカーボンクレジットの創出も同時に支援することを目指している。

衛星画像の解析で71%の正答率を実現

「統合型モニタリングシステム」は、広域をカバーする衛星画像、近接観測が可能なドローン、そして詳細な現地情報を得るための地上実測という複数のデータソースを組み合わせて解析する点に特徴がある。これらのデータを統合的に解析することで、これまで把握が難しかったスギ林における雄花(花粉の発生源)の着生量や、花粉飛散量を高精度で可視化する。

woodinfoは、経済産業省の令和5・6年度「宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業」の支援を受け、山口県長門市の市有林および鹿児島大学附属高隅演習林で実証実験を実施した。検証の結果、衛星画像のみを用いて雄花の着生位置と密度を推定するモデルは、71%の正答率を記録。この成果は地上での検証作業により信頼性が確認されており、広域森林を対象としたリモートセンシング解析技術として実用段階にあることを示している。

花粉症対策と森林経営、カーボンクレジット創出を支援

このサービスは、「花粉症対策 × 森林経営 × カーボンクレジット」の同時実現を目指し、多方面の課題解決に貢献する可能性を秘めている。

具体的には、花粉発生源を高精度で特定することで、科学的根拠に基づく効率的な花粉症対策の立案と実行が可能となる。また、森林資源の詳細な状況把握は、伐採計画の最適化や持続可能な森林管理といった森林経営の高度化に直結する。さらに、森林の状態を正確にモニタリングする技術は、CO2吸収量の評価精度を高め、カーボンクレジット市場における新たな価値の創出にもつながる。

衛星データとAIの活用は、さまざまな産業でデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させている。woodinfoの新サービスは、これまで経験や勘に頼ることが多かった森林管理の分野において、データに基づく客観的な意思決定を可能にする、新たな一手となることが期待される。

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