Updated by 『森林循環経済』編集部 on April 11, 2025, 10:14 AM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、木造都市の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
長谷工コーポレーションは4月10日、住宅・木材関連事業を手がけるウッドフレンズの普通株式に対する公開買付け(TOB)を開始した。同社を完全子会社し、住宅事業における付加価値向上とともに、木質資源の利活用を視野に入れた新たな成長領域の確保を図る。
ウッドフレンズは、自社で木材工場を持ち、設計・加工・施工においてJAS構造材や地域材を積極的に活用する体制を築いている。とりわけ、プレカット加工済み構造材を用いた効率的な住宅施工、林地残材の利用、さらには森林由来のカーボン固定にも積極的だ。「伐って、使って、植えて、育てる」という森林資源の持続可能な循環と、都市生活者が居住を通じて間接的に森林再生に関与する構造を生み出しており、カーボンクレジットや森林サービス産業との親和性も高い。
長谷工はこれまでRC造のマンション建設で実績を築いてきたが、今後はZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)や脱炭素型集合住宅など、持続可能な建築への転換が求められる局面にある。今回のTOBは、単なる住宅ラインの拡充ではなく、素材調達から環境戦略までを見据えた事業構造の再編成といえる。
今回の背景にあるのは、国内林業が直面する構造的課題と、建築業界に求められる脱炭素・サステナビリティ対応だ。
日本の森林の約4割を占める人工林(スギ・ヒノキなど)は、戦後植林から50年以上が経過し、本格的な伐採・利用期を迎えている。しかし、搬出コストの高さ、担い手不足、流通の非効率性などにより、資源が活用されずに放置されるケースも少なくない。
一方で、建築業界では、コンクリートや鉄骨に依存した従来の都市開発から、木材を活用した低炭素建築や中大規模木造建築への転換が加速している。これは脱炭素社会を目指す国際的潮流とも軌を一にしており、日本でも「公共建築物等木材利用促進法」などにより制度的な後押しが進んでいる。
このような状況で、木材を住宅供給のインフラと位置づけ、川上(林業)から川下(住宅供給)をつなぐウッドフレンズのような企業の存在は、単なる地方住宅メーカーという枠を超え「木材資源を都市部で機能させるハブ」としての役割を担いつつある。
木材の安定供給を都市部で担保するには、住宅事業者が木材流通や加工まで責任を持つ体制が重要になる。林業事業者にとっても、都市住宅市場の安定化は、素材の高付加価値化や再投資の循環を生む重要なパートナーシップの構築につながる。