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住友林業とレンゴー、木質バイオエタノール生産で協業 建築廃材を「持続可能な航空燃料」の原料に活用012

Updated by 『森林循環経済』編集部 on April 24, 2025, 10:24 AM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、木造都市の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

住友林業とレンゴーは4月23日、木質由来のバイオエタノール生産に関する基本合意書を締結したと発表した。住宅建設現場から発生する木くずなどの建築廃材を原料とし、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の原料となるバイオエタノールを生産する。これまで有効活用が難しかった建築廃材に新たな価値を見出し、石油代替燃料として需要が高まる木質バイオエタノールの量産技術確立を急ぐ方針だ。国内の資源循環と脱炭素化に向けた重要な一歩として注目される。

新たな資源としての建築廃材 

今回の合意の核心は、従来、廃棄物として処理されることも多かった建築廃材を、価値ある資源としてとらえ直した点にある。住友林業の住宅建設現場では、木材の端材や加工時に発生する木くずなどが排出される。これらを原料としてバイオエタノールを生産することで、廃棄物の削減と資源の有効活用を両立させる循環型経済の実現に貢献する。

バイオエタノール

生産されるバイオエタノールは、SAFの原料として活用される。航空業界は、CO2排出量削減が喫緊の課題であり、SAFへの期待が世界的に高まっている。SAFは、廃食油や植物、木くずなどを原料として製造され、従来のジェット燃料と比較してライフサイクル全体でのCO2排出量を大幅に削減できるとされる。

現在、SAFの供給量はまだ限られており、その多くを輸入に頼っているのが実情だ。国内で発生する建築廃材を原料としたバイオエタノール生産が軌道に乗れば、SAFの国産化と安定供給に繋がり、日本の航空業界における脱炭素化の取り組みを加速させる可能性がある。エネルギー安全保障の観点からも、国内資源を活用した燃料生産は大きな意義を持つ。

量産技術確立への挑戦

両社は今後、木質バイオエタノールの量産技術の早期確立を目指す。木材から効率的にエタノールを生産するには、セルロースなどの成分を糖に分解する技術などが鍵となる。住友林業の持つ木材調達や建築現場でのノウハウと、レンゴーが製紙事業などで培ってきた技術や知見が組み合わされることで、実用的な量産プロセスの開発が期待される。

住友林業はこれまでも森林資源の循環利用に取り組んできたが、今回の合意により、住宅建設時に発生する廃材をさらに高付加価値な用途に転換する道筋を示した。従来であれば焼却や低価格でのリサイクルにとどまっていた建築廃材を、SAFという高付加価値市場へと送り込むことにより、森林産業全体の経済循環モデルの高度化にもつながる。

レンゴーは包装資材大手としてリサイクル原料の活用に実績があり、今回、住友林業との連携を通じてバイオエタノール製造の新たな展開に踏み出すこととなる。

今回の協業は、単に新しいエネルギー生産技術の開発にとどまらない。これまで結びつきの強くなかった住宅・建設業界と製紙・エネルギー関連業界が、脱炭素という共通目標のもとに連携し、廃棄物であったものに新たな価値を与えるという点で、産業構造の変革や新たなビジネスモデル創出の可能性を示唆している。

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