Wooden high-rise construction realized with unique KES construction method and fire-resistant technology
Updated by 株式会社シェルター on May 12, 2025, 9:47 AM JST
Shelter Co.,Ltd.
本社:山形県山形市。KES構法(接合金物工法)、 COOL WOOD(1・2・3時間の木質耐火部材)、 FREE WOOD(曲線・ひねりの部材)の3本柱で木質構造部材を開発・製造。木造建築の設計(意匠設計、構造設計)・施工・改修工事、また木造都市づくりの企画・コーディネート、PFI・PPP提案なども行う。公式サイト
「木造都市(R)」の展開は林業再生のひとつの柱であり、都市を「第二の森林」にすることによる温室効果ガス削減、あるいは都市環境改善の視点からも、その進展に大きな期待が寄せられる。創業以来半世紀、一貫して「都市(まち)に森をつくる(R)」事業に取り組んできたのが木質構造部材の研究設計を行う株式会社シェルターだ。
シェルターの「都市に森をつくる」事業は、創業者である木村一義氏(現会長)の掲げる使命感=ミッションと、長年育まれた同社独自の技術=シーズの結合が強固な土台を成している。「木は環境にやさしい素材で、地球温暖化対策になりますし、何より住んでいて人の心を癒し、温かくしてくれる魅力があります。人々が心身ともに豊かに暮らすことができる環境づくり、それがわれわれの『木造都市』が目指すところです」
そう語る木村氏自身、生家は代々、木造住宅を中心に手掛けてきた大工の棟梁であり、少年時代から同年代の弟子とともに家業を手伝ってきた。なかでも重要とされたのが〝刻み仕事〟と呼ばれるもので、これは木材同士(柱と梁など)を〝ほぞ〟と〝ほぞ穴〟で接合する高度な職人技術。しかし、木村氏はこれに少なからぬ疑問を感じていたという。
「習得に年単位の時間がかかるのに、できるのはごく単純な間取りや外観に限られる。構造上も削りとる部分が多いため、木材が本来もっている強度を弱めることにもなる。実際、接合部分は木造建築の弱点とされ、もっと簡単に、もっと強度を上げるやり方があるはずだと考えました」
そうしたなか、大学卒業後すぐにアメリカへ留学、足を延ばしたパリで出会った金物を使った建物をヒントに、1974年には日本で初めて接合部に金物を使用した旧社屋を建築。その後、研究を重ねて同社独自の「KES構法(Kimura Excellent Structure System)」(日本・アメリカ・カナダで特許取得)を開発・実用化するに至る。
「木造建築の普及を図る際、接合金物工法は世界共通の認識になるという確信がありました。ただ、日本では海外のように鉄骨の柱を使ったり、接合部分が表に出ていてはダメ。そこで、片方の部材にオリジナルの金物(コネクター)を組み込み、もう一方の部材に埋め込んだプレートにドリフトピンで緊結する――シンプルながら強度が高く、見た目も美しいやり方を開発したわけです」
1974年のプロトタイプ構法による旧社屋の建築を経て、1988年には正式に「KES構法」としてフランチャイズ加盟店の募集を開始。全国から124社という多数の加盟があったのは、汎用度と強度を両立した同技術が大きなニーズを掘り起こしたために他ならない。
「最大の転機は1995年の阪神・淡路大震災でした。当時、被災地には加盟店の建てた住宅が73棟あり、震災発生の報に社員ともども神戸へ駆けつけたところ、一面に広がる瓦礫の山のなかでポツンと白い3階建てが……自分たちのKES構法による家がしっかり立っているのを見て、胸が熱くなりましたね」
この時、73棟すべて倒壊を免れた事実が大きく報道されたことで、KES構法は俄然注目の的に。2011年の東日本大震災でも、同構法による宮城県石巻市の北上総合支所(木造2階建て庁舎事務棟)が大津波の襲来にも倒壊を免れるなど、木造建築の耐震性に対する不安は完全に払拭されている。
「行政や法整備の点でも、2000年の建築基準法改正で接合部に金物を設置することが盛り込まれたのをはじめ、2010年には『公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律』が成立。2021年には超党派の『森林(もり)を活かす都市の木造化推進議員連盟』による議員立法で『都市の木造化推進法』として改正・施行されるなど、『都市(まち)に森をつくる』ための動きは大きく前進しています」
一方で、4階以上の中高層ビルを木造で建設する場合、厳しい基準の課せられる耐火性能に関し、シェルターでは核となる木材を石膏ボードで囲み、外側をさらに木材等で覆った耐火部材「COOL WOOD」(特許取得)で3時間耐火の国土交通大臣認定を取得。「曲げる」「切り出す」「削り出す」といった方法により曲線やひねりをもたせた部材「FREE WOOD」で多様なデザイン創造にも応えるなど、同社の技術はわが国の木造建築を牽引する勢いを見せ、各地に先進的な大規模建築が多く誕生している。
「いずれも、基本にあるのは『エンジニアード・ウッド・ストラクチャー』の考えであり、構造計算を基にした設計思想は従来の木造建築とはまったく異なるものです。その甲斐あって、今年(2025年)からは木造建築物の耐久性に係る評価でも、一定の条件のもとコンクリート建築と同等、あるいはそれ以上の耐用年数が認められるなど、状況は大きく変わっています」
プラチナ森林産業イニシアティブには、「CO2を大量に街中に固定するという点で、私どもの目指すところと一致している」との立場から積極的に参加し、2018年には企業として第6回プラチナ大賞・経済産業大臣賞を受賞した同社。これからの目標としては、木材のJAS規格制定とそれに伴う林業全体の再活性化も視野に入れているという。
「高精度の構造計算に応じた、木材加工の厳格な等級化の導入によって、川下から製材などの川中、良質な丸太を育てる川上まで、大きな視野で改革と再編に取り組もうと思っています。それによって、国土の70%を占め、55億立方メートルという森林資源に対し、伐って、使って、植えて、育てるサイクルを促したいですね」
シェルターが掲げる「木造都市」のビジョンは確実に大きく、いよいよ力強いものになっていく。
■関連サイト
・アメ横 純木造3階建てビル「御徒町計画」着工
・静岡県富士山世界遺産センター
・『シェルター・木村一義の「木造都市を全国につくる!」 』(村田博文、財界研究所 2024)