Updated by 『森林循環経済』編集部 on June 20, 2025, 10:00 PM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、木造都市の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
王子ホールディングスとグループ会社の王子ネピアは、星野リゾートと連携し、ホテルやレストランで排出される使用済みの紙製ハンドタオルを、新たな「nepiaハンドタオル」へと生まれ変わらせる水平リサイクルを始めた。廃棄物の削減と資源の有効活用を進め、循環型社会の実現に貢献する。
水平リサイクルは、使用済みの製品を原料として同じ種類の製品を製造する手法で、資源の節約やCO2排出量の削減につながる。星野リゾートでは2024年7月から施設で使われた紙コップを回収し、「nepiaハンドタオル」に再生する取り組みを進めてきた。今回の取り組みでは、資源循環の動きをさらに加速させるため、星野リゾートの4施設で紙製ハンドタオルを回収し、再びハンドタオルとして生まれ変わらせる。
使用済み紙製ハンドタオルは水を吸っても破れにくいよう強度を持たせているため、溶解性が低い。加えて、汚れや臭いの問題もあり、リサイクルは難しいとされてきた。回収ルートも存在しなかったため、焼却処分されることが一般的だった。
しかし、王子ホールディングスは、王子ネピアの協力工場で独自の技術により溶解性を向上。効率的に繊維分(パルプ)を回収・再製品化することに成功した。さらに、協力会社のツチハシと連携し、既存の物流網を活用した回収・納品ルートも構築。これにより、使用済み紙製ハンドタオルを新たな製品として再生する仕組みが整った。
紙製ハンドタオルの使用量が多い「星のや軽井沢」「軽井沢ホテルブレストンコート」「軽井沢星野エリア 村民食堂」「リゾナーレ八ヶ岳」の4施設に専用の回収ボックスを設置。2025年1月15日から2月14日までのテスト期間中には、58.3kgの使用済み紙製ハンドタオルが回収された。これは年間約700kgに相当する量で、1パック200枚入りの「nepiaハンドタオル」に換算すると、年間2917パックの再製品化が見込まれるという。
プラスチックの代替素材として紙の需要が高まるなか、使用済み製品を原料として再利用するマテリアルリサイクルへの関心も高まっている。今回の取り組みは、従来リサイクルが困難とされてきた製品の資源循環を可能にした点で画期的だ。ホテルやレストランなどの行楽地・保養地で排出される紙製品から新たな製品を生み出すこの仕組みは、他の業界や地域における資源循環モデルの構築にもつながる可能性を秘めている。