Updated by 『森林循環経済』編集部 on June 03, 2025, 10:00 AM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
自由民主党は「森林資源による循環経済の実現に向けた提言」を6月2日に公表し、改正森林経営管理法の施行とともに、新たな国土づくりと地域経済の再活性化を目指す集中対策パッケージを打ち出した。地方創生・脱炭素・防災といった複数の政策課題を統合的に解決することを目指す。森林・林業・木材産業の構造転換を国家的課題と位置づけ、次期森林・林業基本計画の策定も見据えた包括的な政策提案となっている。
今回の提言の背景には、森林資源の「利用期到来」と加速する過疎・高齢化、林業従事者の減少、住宅需要の減退といった構造的な課題がある。提言では、ウッドショックや輸入材依存のリスクを踏まえ、「災害に強い国土形成」や「経済安全保障」の観点からも、国産材の安定供給体制の構築が不可欠としている。このような状況を打破し、森林を循環資源として再定義することが、循環経済の中核を担うものとして期待されている。
提言では、森林の集積・集約化を加速させるため、改正森林経営管理法の新たなスキームの早期運用を促進する。また、所有境界の不明確さを克服するためにリモートセンシング技術の活用やデジタルネットワークの整備も推進する。加えて、スマート林業の実装により、林業従事者の所得向上と働き方の改善を図り、他産業からの新規参入も含めた人材育成に取り組む方針が示された。
国産材の需要拡大に向けては2点が柱となる。 一つは、住宅分野における輸入材からの転換を支援するため、製品開発や川上から川下のサプライチェーン強化を進めること。 もう一つは、非住宅分野における木造化の推進だ。中高層建築に対応する防耐火技術の開発・実証や、公共建築物への率先導入を通じた「都市の木造化」の流れをつくる。さらに、木材由来のカーボンクレジット創出支援や、改質リグニン、木の酒といった木質バイオマス製品の研究開発支援も盛り込まれており、新たな付加価値創出に期待が寄せられる。
治山事業や林野火災対策をはじめとする国土強靱化策の加速も打ち出された。災害発生時の仮設住宅の木質化や地域材の活用といった点も明記されている。
また、花粉症対策として、スギ人工林の伐採・植え替えや低花粉苗木の普及促進が盛り込まれ、国民生活の質の向上ともリンクした林業政策が打ち出されている点が注目される。
自治体による森林整備の資金源である森林環境譲与税の活用促進も提案されている。国による優良事例の共有や、国民理解の醸成を通じて、持続可能な制度運用の枠組みを強化する方針が示された。