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森林総研、土壌の温室効果ガス測定時間を7分の1に短縮 気候変動研究や森林管理の高度化に貢献する革新的技術097

Updated by 『森林循環経済』編集部 on July 12, 2025, 11:42 AM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所は、森林土壌から放出される二酸化炭素(CO2)と吸収されるメタン(CH4)の測定を、従来の約7分の1の時間で行える新たな分析手法をこのほど開発した。広域かつ高頻度の観測が可能となり、気候変動研究の発展への貢献に加えて、炭素会計や森林管理の高度化に貢献する技術となる。

2つの測定手法を組み合わせ効率化

地球温暖化対策において、森林がCO2を吸収する役割は極めて重要である。しかし、その吸収・排出量を正確に評価することは、技術的に大きな壁があった。ガスクロマトグラフ法は多地点観測に対応できるが分析に時間を要し、ガスアナライザー法は現場で迅速に測定できる一方で、広域同時観測には不向きだった。

今回開発された手法では、現場で採取したガスを真空ボトルに保存し、実験室に持ち帰ってガスアナライザーを用いて分析する。これにより分析時間は大幅に短縮され、直線性・反復性・頑強性といった信頼性の指標でも、従来法と同等以上の精度を示した。

この成果により、森林土壌におけるCO2放出量やCH4吸収量を広域かつ高頻度で把握できるようになる。炭素吸収・排出の実態が精緻に可視化されれば、科学的根拠に基づく森林管理の高度化や、カーボンクレジット算定の精度向上につながる。森林資源を基盤とした循環型経済の推進においても、政策判断を支える研究基盤となることが期待される。

森林総研は今後、この手法を活用して環境変化が森林土壌に与える影響をより正確に把握し、気候変動研究と政策実装の橋渡しを進める方針だ。

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