Updated by 『森林循環経済』編集部 on July 30, 2025, 9:34 PM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
都市に暮らす人々が、どのように森林と関わっているのか──。国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所は、東京23区の住民5000人を対象に森林利用に関する大規模調査を実施し、その結果をこのほど公表した。過去1年間に森林を訪れた人は全体の約3分の1にとどまったが、訪問を促す具体的なきっかけや都市特有の課題が明らかになった。
回答データを多角的に分析した結果、森林訪問の頻度が高い人ほど、日常的な散歩や旅先での自然散策といった自然接触の機会を持っている割合が高いことが分かった。特に「旅行先で景色のよい場所を歩く」経験は、訪問頻度を大きく押し上げる要因として際立っていた。また、幼少期の自然遊びの有無や、普段から近所を散歩する習慣も、訪問頻度や関心の向上と関連が見られた。この結果から、都市部でも身近な自然と触れ合う場や時間を意識的に増やすことが、森林利用の裾野拡大につながると考えられる。
調査では、高齢者や車を持たない世帯の訪問頻度が低い傾向が確認された。全国的な調査では高齢になるほど自然訪問が増える傾向が一般的だが、今回の都市部調査では逆の結果となった。背景には、自家用車保有率の低さに加え、公共交通網が充実していても森林エリアまで直通しにくい構造がある。郊外や隣接自治体との交通接続を見直すことが、利用拡大の条件となる。
今回の成果は、都市に暮らす人々と森林をつなぐための実践的な条件を示している。地域イベントや自然体験プログラムの充実、公共交通や送迎サービスなどの移動手段の確保といった施策が、利用拡大の鍵となりそうだ。都市と森林の距離を縮める取り組みの広がりが期待される。