Updated by 『森林循環経済』編集部 on October 16, 2025, 2:57 PM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
きたもっく、御手洗龍建築設計事務所、とおい山が協業して群馬県・北軽井沢に建設した「暖居(だんきょ)」が、このほど「2025年度 グッドデザイン・ベスト100」を受賞した。地域の自然資源を活用した約10平方メートルの小屋に込められたユニークな構造や、詩人・谷川俊太郎氏の詩の世界に通じる、人と建築が大切に紡がれている環境づくりが高く評価された。
「暖居」は、「谷川さんの住宅の離れ」というコンセプトで、現在の所有者によって計画された。設計においては、厳しい寒冷地である北軽井沢において、単に暖かな居場所を確保するだけでなく、利用者と周囲の自然が五感を通じて一体となるような空間の創出を目指した。

この建築の最も際立つ点は、周囲の自然環境への負荷を極力抑えた特異な構造にある。木の根の生育を阻害する基礎の打設を避けるため、敷地に自生する4本のナラの木にアンカーボルトを打ち込み、建物を「引っ掛ける」構造を採用した。これにより、「暖居」は地盤から約1.5メートルの高さを保ち、浮遊感のある佇まいとなっている。

内部の中心には、きたもっくが長年にわたり培ってきた知見を反映した薪サウナが設けられた。火の温もりを通じて身体を温める機能を担うとともに、内装には自社で伐採・製材した地域の広葉樹キハダが使用され、自然資本の地域内循環が図られている。

4本のナラの間には、高低差を設けながら螺旋状に配された4つの窓辺空間が配置されており、利用者はあたかも自然を全身で包み込んでいるかのような独特の体験を得られる設計となっている。
「暖居」は、地域材の活用と土地固有の環境特性に応じたものづくりの重要性を示している。それぞれの地域独自の資源をその地域ならではの方法で活かすモデルケースとなることが期待される。