• 執筆者一覧Contributors
  • ニューズレター登録Newsletter

乾燥中のヒノキ天板を地域で活かす「森に座るベンチ」 岡崎発・循環プロジェクト始動194

Updated by 『森林循環経済』編集部 on November 08, 2025, 8:55 PM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

木材は伐採から出荷までに長い乾燥期間を要し、このあいだ天板は“眠っている時間”を過ごす。この時間を地域で活かす新たな循環プロジェクトが愛知県岡崎市で始まった。一般社団法人AndForestとタキコウ縫製は、乾燥中のヒノキ天板を活用した「森に座るベンチ」をこのほど共同開発した。これは出荷に向けて乾燥中のヒノキ天板を一時的なベンチとして活用するものだ。木材に新たな価値を見出し、地域の技術と森の再生をアイデアでつないだ。

「乾燥期間」を収益化する循環設計

「森に座るベンチ」は、乾燥中のヒノキ天板と地域企業のビーズクッションを組み合わせている。天板には木材のわずかな反りや根曲がり、荒挽き材といった不定形な木の揺らぎが残るが、クッションがこれを柔軟に吸収するため、屋外の凹凸のある地面でも安定して使用できるのが特長だ。

このベンチの最大の特徴は徹底した循環設計にある。イベントなどで一時利用されたベンチの天板は、乾燥が完了した後、再び製材所へ戻され、家具や什器、建築材などの木工プロダクトへと生まれ変わる。脚部として使用されたビーズクッションも再使用が可能であり、プロジェクト全体を通じて廃棄物を出さない構造を実現している。

根曲がり材
製材後の乾燥

さらに、プロジェクトでは市場価値が低いとされる根曲がり材なども適正価格で仕入れることで、林業従事者に対し正当な対価を還元する仕組みとなっている。木の「乾く時間」そのものが収益を生み、森の再生を支える資金循環となる、まさに発想の転換と言えるだろう。森林資源の価値を時間軸と利用用途の両面から最大化し、地域内での持続可能なサプライチェーンを確立する先進事例である。

Tags
森林循環経済 Newsletter
ニューズレター(メルマガ)「森林循環経済」の購読はこちらから(無料)
JA