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木のまち・新木場の木くずが駅の情報拠点に生まれ変わる JR東日本スタートアップが仕掛ける循環デザインの挑戦195

Updated by 『森林循環経済』編集部 on November 15, 2025, 9:12 PM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

JR東日本スタートアップとSpacewaspと博展は、東京・新木場駅周辺で「地域資源の循環デザイン」をテーマとした実証実験を12月11日から13日まで実施する。新木場駅はJR京葉線・東京メトロ有楽町線・りんかい線が乗り入れる湾岸部の拠点で、駅周辺には木材加工や倉庫業の事業者が集積している。新木場・辰巳エリアから排出される植物性廃棄物を再利用し、高架下空間を地域産業と来場者が交わるハブへ再生させるというユニークな試みだ。

植物性廃棄物から「駅の案内ブース」をつくる実証

Spacewaspは、植物性廃棄物を空間づくりに使える素材へと再利用するスタートアップ企業で、木くずや端材など、本来であれば処分される素材を生かした建材・内装材の開発を行ってきた。今回の実証実験では、新木場・辰巳エリアの木材事業者から排出される木くずが、Spacewaspによって回収され、ブース制作に利用可能な素材へと再利用される。この素材は、地域回遊イベント「SHINKIBA CREATIVE HUB」の情報拠点「SCH EVENT GUIDE BOOTH」の建築材料として活用される。

SCH EVENT GUIDE BOOTHイメージ

貯木場として生まれた新木場は、“木のまち”として日本の木材産業を支えた歴史を持つ。現在も多くの木材事業者が活動しているが、製材や加工に伴う木くずや木端といった植物由来の廃棄物が大量に発生している。また、JR東日本においても線路沿線で生じる雑草や間伐材などの植物性廃棄物が発生しており、これらの活用と環境負荷軽減は双方に共通する課題だった。

ブースでは、実際に再利用された製品の展示や、再利用プロセスを学び・体験できるコンテンツの展開を予定している。単なる情報提供の場ではなく、地域資源の循環を可視化し、来場者に気づきを与える「体験型」のハブとして機能する。

再利用する木くず
切り株をコンセプトとした案内ブースイメージ

今回の取り組みは一過性の実験に留まらない。将来的には、駅や高架下などの未利用地に、植物性廃棄物の原料化から製品化までを一気通貫で自動化する製造拠点を設置し、地域資源の循環を本格的に推進する構想を掲げている。さらにこの拠点を、地域の人々が集う交流の場としても機能させる計画だ。これは、林業・木材産業が直面する課題に対し、鉄道会社が所有する未利用資産を転用し、新しい解決モデルを提示するものだ。

この取り組みは、主に二つの点で意義を持つ。一つは、木材事業者から排出される端材などを「廃棄物」ではなく「地域資源」として再定義する点だ。そしてもう一つは、駅や高架下といった未利用資産を循環経済の基盤として活用する点である。これは鉄道会社ならではのユニークな着眼点であり、今後の展開が注目される。

■参考リンク
駅からはじまる、地域資源の循環デザイン~高架下を人が集まる場所へ。植物性廃棄物を循環させる“新しい駅のかたち”に向けたチャレンジ~ – JR 東日本スタートアップ株式会社
「SHINKIBA CREATIVE HUB」実証プロジェクト実施のお知らせ(株式会社Spacewasp)
駅・高架下からはじまる、地域資源の循環デザイン | 株式会社博展 HAKUTEN | Communication Design®
SHINKIBA CREATIVE HUB

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