[Austria inspection report: Recommending high-quality forestry] Investment in forestry roads increases productivity; gravel is 40 centimeters thick, twice as thick as in Japan
Updated by 小林靖尚 on January 26, 2026, 8:15 PM JST
Yasuhisa KOBAYASHI
株式会社アルファフォーラム
株式会社アルファフォーラム・代表取締役社長、プラチナ森林産業イニシアティブ・ステアリングコミッティー 1988年早稲田大学理工学部応用化学科卒、三菱総合研究所主任研究員(住環境担当)を経て、同社のベンチャー支援制度を活用し2001年に株式会社アルファフォーラムを設立。以降、木材利用システム研究会(常任理事)、 もりもりバイオマス株式会社(顧問)、富山県西部森林活用事業検討協議会(事務局)等を歴任。2023年9月には木材利用システム研究会賞を受賞。
※前回のコラムはこちら
【オーストリア視察レポート】文化×環境×構造のバランスが導く「高品位森林業」の要件
林業に必要な「道」の話をしたい。大きく3種類の林道がある。普段の生活にも利用され、一般車も通れる「林道」は、林業に関係しない方々も意識しない中で通過していると思う。林業を目的とした大型車両が通ることを目的とした「林業専用道」がある。これは一般車両が入れないので、お目にかかることは少ないだろう。
20センチと40センチ、これは林業専用道に敷く「砂利」の厚さのことだ。日本の林業専用道の規格については林野庁のHPより詳しく情報がとれる。日本では一般に林業専用道の砂利敷厚さは20センチとされている。40センチは、2025年12月3日に視察したAustria Pichl(オーストリア・ピヒル)の演習林の林業専用道の砂利敷厚さだ。日本の倍の砂利敷厚さはAustriaでは普通なのだ。

これには山林の土質の理由がある。日本は「泥(でい)」、Austriaは「岩(がん)」に代表される表層土質だ。Austriaは岩を削り砕きながら道を開き進んでいくわけだ。砕いた岩は細かく砕いて砂利になり、その砂利をそのまま敷き詰めて固めていくことで、砂利層は厚くなる。Pichlで案内していただいた所長にお聞きすると、「実際は岩質の地余(道路を切り開く際に発生する掘削土や岩塊)を削るだけでは40センチもの砂利層をつくれないので、足らない分は運んでくる。恒久的に使える林業専用道を想定している」との説明をいただいた。
写真は砂利を40センチ敷いたAustria Pichlの演習林の林業専用道である。うっすらと雪が積もっていたが、その形状にも注目してもらいたい。いわゆる「かまぼこ型」の断面である。降水時に水の流れが林業専用道を横断しないように、山側にも切り込みを入れて、適切な間隔で排水パイプを道路下に通している。素材(丸太)を運ぶトレーラがストレスなく通れるように、傾斜も緩い。


一方で、日本でも表層が岩の場合も少なくないが、基本泥なので、砂利敷をするには他の場所から運んでくることになる。泥はバックホーで容易に削れるが、岩が出てきた場合はバックホーでは歯が立たないので、別途岩を砕く重機ヘッドを用意しなければならない。一般的に砂利を敷く場合にはダンプトラックなどで他の場所から運び入れるしかない。
岩を砕くことと、泥を削るコストはどちらがかかるのか? 見るからに「岩を砕くコスト」だと思う。岩を砕いた砂利が足らなければ運んでくるコストもかかるわけだが、まずは丸太を満載したトレーラが通れることを実現するべきだ。
すぐに轍(わだち)ができて、ズブズブになる林業専用道、それを都度直したり、恐るおそる通ることを考えると「最初にコストがかかってもトレーラがラクに通れ、使い続けられる道」を開設すべきだ。コストダウンについては土木建築技術とも協力しながら徹底的に研究すれば良い。
そんなこと言ったって収支が合わない…との声を聞くが、研究開発の余地は多いと思っている。
我が国では「法や条例の規制」「公的な予算不足」「過去に前例がない」「担当者がかわったばかりで」「あくまで目標だから(タテマエだから)」など「やれない理由」を耳にする。結果、目標の半分程度しか達成できなかったと、悪びれもせずに他事、他人のせいにする。過去、私は様々なデータ収集のために、タワーヤーダでの広葉樹列状間伐をある市と県に申請したことがあるのだが、「前例ないので、広葉樹の支障木整理」にしてください…と言われ、しぶしぶ合意した。タワーヤーダ搬器での横引き集材距離は極端に短くなってしまった。
考え方は逆で、対象地で毎年100の素材生産をしなければならないことに対して、「伐倒は毎日〇立方メートルする必要がある」「トレーラは毎日何往復する必要がある」「重機の不具合が出た場合の対策(代替)は」「規制のグレーゾーンの交渉をしなければ」「条例改定を進めなければ」…目的達成のために何をしなければならないか? 優先してどこから対応しなければならないのか? 何が必要か? 誰が責任を持って対応するか? そして実際に作業を始める。これがバックキャスティングだ。
Austriaは欧州の中央に位置していて、北欧や隣接する各国との「競争」が当たり前だ。1班(3人)で20,000立方メートル/年の素材生産をしないと、目的とする営業総利益が得られないと考えれば、できない理由を聞いているヒマはない。Austriaでは、作業班から高性能林業機械メーカに要望をぶつけ、それにどこまで対応できるか? できるだけ実現する…を進めてきた結果、世界の林業機械をリードするメーカが複数社育ってきた。
我が国の林業では、伐倒現場からトラックに積み込む山土場までは「フォワーダ」というキャタピラ重機が往復することが一般的だ。林業専用道までは10トン車が入れたとしても、その先の100~300メートル程度は作業道を通し、フォワーダやハーベスタ、グラップルなどの重機だけが動く。高性能林業機械であるハーベスタは作業効率も高く、50~60立方メートル/日の伐倒(素材生産)作業は可能だ。どの現場を見ても、律速はフォワーダだ。フォワーダは4~7トン/回積であり、フォワーダに積み込んで200メートルをキャタピラで移動し、また山土場で丸太をおろし、再度伐倒現場まで戻ってくる。果たして、1往復に何分かかるだろう。積み下ろしまで考えると、15~20分/往復はかかる。1時間に3~4往復…しかできない。フォワーダ距離をできるだけ短くすることが素材生産効率の向上につながる。
Austriaでもフォワーダは利用する場合があるが、タワーヤーダでの造材現場のすぐ横までトレーラが横付けできることを基本と考えている。タワーヤーダは使い方によってとても効率アップできるので、今回視察した現場(コンラッド社の案内)では、タワーヤーダ利用の間伐作業で、12,000立方メートル/年だ。
「わが国では無理だから…」と言った瞬間、敗者宣言を自覚すべきだ。お金の話を抜いて、何が必要でどこから動くべきかを整理して、コストは最後に計算する。コストが高くて事業収支が合わなければコストダウン策を検討する。それでも合わなければ作業効率をどこまで上げなければならないかを検討し、それでも合わなければ最後に補助事業等獲得を考えたい。(株式会社アルファフォーラム・代表取締役社長、プラチナ森林産業イニシアティブ・ステアリングコミッティー 小林靖尚)