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【木造建築を「現場」から再考する:3】人手不足時代の工程合理化―木質建築が普及する4つの条件244

Rationalizing construction in an era of labor shortages: Four conditions for the spread of wooden construction

Updated by 加藤聡悟 on February 16, 2026, 10:30 PM JST

加藤聡悟

Sougo KATO

株式会社リーフレイン

金融機関でハイテク分野の企業調査に携わったのち、造園建設現場における監督業務を経て現在独立。素材産業や再生可能エネルギー、木材利用の分野に関心を持ち、近年は林業に関する企画執筆に取り組んでいる。かつて現場を通して山林作業に携わった体験を背景に、現場のリアルと産業構造の接点を探る執筆を目指している。

まず第1回では、木質建築が人手不足や省技能化に対して持つ施工上のメリットを整理し、第2回では、木質建築が現場で「扱いにくい」と受け取られる施工上の課題を確認した。ただしそこで見えた課題は、木質建築に固有の問題ではなく、現場合わせや調整に依存してきた日本の建設業全体の構造問題である。

そこで本稿では、木質建築の施工上のメリットと日本の現場が抱える構造課題を重ね合わせ、木質建築が普及に転じるための条件を施工現場の視点から整理する。結論として、日本の施工現場という制約条件の下で木質建築が普及するには、①人手不足が深刻な工程をどこまで代替できるか、②現場工程と人員をどこまで圧縮できるか、③現場で「作る」作業を減らし品質を安定させられるか、④施工管理が把握できる範囲に工程を収められるか、の4点が同時に満たされる必要がある。

① 人手不足が深刻な工程をどこまで代替できるか

重要なのは、人手不足が顕在化している工程を見極め、どこまでを上流(設計・工場)に移せるかである。日本の現場では、専門技能を要する職種や長時間・重労働の工程で人手不足が深刻化している。RC造やS造は型枠工・鉄筋工・左官工などへの依存度が高く、職種分断も大きい。

木質建築は、工場加工を前提とすることで作業を「製作」から「組立」に移行させやすい。プレカット材やCLTパネルは位置決めと固定が中心となり、熟練技能や現場判断の一部を代替しやすい。木質建築の有効性は、作業量の削減そのものではなく、人手不足が集中する工程や役割をどこまで設計・加工段階で置き換えられるかに依存する。

② 現場工程と人員をどこまで圧縮できるか

次に重要なのが、工程短縮と人員配置の簡素化である。工程が細分化し工期が長期化するほど、工種間調整が増大する。木質建築は、部材精度を確保した状態で搬入できれば、建方から躯体完成までを圧縮しやすい。

工程圧縮は、人手不足が常態化する中で一つの現場に人員と管理リソースを長期間拘束しないための、業界全体を回す前提条件となる。さらに構造材を現しとする設計は、構造体が仕上げを兼ねることで内装下地やボード・クロス等の工程を削減し、躯体と内装を統合することで工程短縮の効果を全体として引き出しやすくする。

③ 現場で「作る」作業を減らし、品質を安定させられるか

日本の現場には、設計で決め切れない部分を施工段階で「作りながら調整する」文化が残り、品質ばらつきや手戻り、施工管理負荷を生んでいる。木質建築は工場加工を前提に、寸法精度を事前に確定しやすく、品質変動を抑えやすい。

また品質問題が生じやすいのは木材そのものだけでなく、塗装やモルタルなど複数の材料・工種が重なる工程にある。複数材料を重ねて仕上げていく工程自体が、周囲の汚れや調整を前提とした作業を生みやすい。したがって品質安定の鍵は、現場で発生する調整作業や汚れを生む工程をどこまで減らせるかにある。

④ 施工管理が把握・制御できる範囲に工程を収められるか

最後に重要なのが、施工管理が全体を把握・制御できる範囲に工程を収められるかである。人手不足は職人だけでなく施工管理側にも及び、書類作成や対外調整等のマルチタスク化が進む一方、残業規制が強まっている。その結果、先回りして判断・修正する余裕が失われている。

木質建築は、工程が整理されるほど施工管理の負荷構造が軽くなる。工程数や同時稼働工種が減れば、把握・判断すべき情報量と判断回数を抑えることができ、現場の混乱リスクも低減できる。木質建築が普及するには、「現場で何とかする」前提を捨て、上流で工程と管理対象を整理し、管理可能な範囲に現施工プロセスを構築できていることが不可欠である。

CLT工法普及モデル(出典:林野庁 CLTの活用促進に向けて)

本稿で整理した4条件は、施工現場という制約の下で、木質建築が現実的に普及し得るための成立条件である。CLTの供給体制やコスト、設計確定度、降雨が多い日本の施工環境など論点は多いが、最終的に建物が成立するのは施工現場である。

その意味で、①人手不足工程の代替、②工程と人員の圧縮、③現場調整の削減、④管理可能性の確保という4条件は、木質建築が日本の建設産業で「選ばれる工法」となるための、施工側から見た最低限の成立条件である。(株式会社リーフレイン 林業ライター 加藤聡悟)

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