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木造混構造6階建ての住友林業社宅が完成 中大規模集合住宅の新たなモデルに056

Updated by 『森林循環経済』編集部 on June 04, 2025, 10:00 AM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、木造都市の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

住友林業は、茨城県つくば市に木造混構造6階建ての社宅を完成させ6月1日から利用を開始した。総戸数46戸のこの社宅は、中央部がRC造、両端が木造の平面混構造であり、これに対応した構法や部材のほか、合理化された設計・施工技術が多数採用されている。「木造混構造中大規模集合住宅」のモデルケースと位置付け、木造住宅の新たな可能性を示している。

設計・施工の合理化でコストと工期を圧縮

この社宅には、中大規模木造建築が抱える課題を解決するためのアイデアが詰め込まれている。構造面では、建物全体の水平力を全て中央のRC造に集中させ、耐震性を確保した。木造部分にかかる負担も軽減し、木造柱や梁のスリム化を実現。木造が組み合わさることで建物全体の重量が軽くなるため、基礎も小さくできる。

木造部分には、日建設計と共同開発した木梁とRC床版を組み合わせる「合成梁構法」や、オリジナルの2時間耐火構造部材「木ぐるみCT」を初めて採用した。木造とRC造の接合部分には、カナイグループと共同開発した「混構造用接合金物」を採用。また、設計・施工の合理化で現場作業を簡略化し、建設コストの削減や工期の短縮を実現した。

木が健康に与える効果を検証

脱炭素を見据えた工夫は、単なる木材の利用にとどまらない。設計時からCO2排出量を見える化し、CO2排出量削減の効果を適宜モニタリングしながら、よりCO2排出量の少ない部材を使用した。木材以外にも、環境性能の高い素材や太陽光発電、独自の緑化システムなどを導入し、建物のライフサイクル全体でCO2排出量を削減する。

2025年6月から2026年5月にかけては、旧社宅と比較して「木」が人の心身の健康などに与える効果を検証するという。床の硬さ、光、温湿度、香りや社員の心理的・生理的な状態を測定し、非木造建築を木造に変える効果を定性的・定量的に立証する。木造建築がもたらすメリットを科学的根拠に基づいて明確にすることは、今後の木造化・木質化を推進していくうえで極めて意義深い。

多様な技術や知見を結集させた中大規模建築物の木造化・木質化は、環境負荷を低減し脱炭素社会の実現に貢献するとともに、高齢化や職人不足に直面する建築業界に対し、新たな解決策を示している。

■物件概要
所在地:茨城県つくば市みどりの2丁目31-4,5,6
主要用途:共同住宅、店舗、事務所(1階はサテライトオフィス・店舗等、2~6階は住居)
総戸数:46戸 ※シングル1K(約26平方m)41戸、ファミリー2DK(約52平方m)5戸
敷地面積:2,825.53平方m
構造・階数:鉄筋コンクリート造+木造・地上6階(中央がRC造・両脇が木造の平面混構造)
着工・竣工:2024年5月着工・2025年5月末竣工

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