Updated by 『森林循環経済』編集部 on July 23, 2025, 4:19 PM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
大林組のグループ会社であるサイプレス・スナダヤと中部電力は、北海道釧路市に国内最大級規模の製材工場を新設し、2028年4月の商業生産開始を目指す計画を7月22日に発表した。両社は2024年11月に共同出資で釧路ウッドプロダクツを設立しており、今回の発表はその事業計画の詳細を示すものとなる。
新工場では、集成材用ラミナとディメンションランバー(2×4材)を主力製品として製造し、副産物として製紙用チップやおが屑を生産する。原木は北海道産のトドマツなどを主原料とし、欧州製の大型製材機械を導入して高品質かつ大量の生産を可能にする。操業3年目には年間約36万立方メートルの原木消費を見込み、品質・価格・供給量の面で輸入材に対抗できる安定供給体制を整える計画だ。
日本の住宅用木構造材市場では、価格や品質の安定性から外国産材が主流となっており、国内の豊富な森林資源が十分に活用されていない現状がある。本事業は、国産材の活用を促進し、住宅メーカー各社の国産材利用拡大を後押しすることを目的としている。
釧路は道東地域に広がるトドマツやカラマツなどの針葉樹人工林に近く、安定した原木調達が見込めるほか、国際拠点港湾である釧路港は大型船の接岸や本州航路を持ち、木材チップなど林産品の取り扱い実績もある。さらに、かつて製紙工場が操業していた広大でインフラの整った工業用地が利用可能となっていることや、釧路市が木材加工やバイオマス関連産業の誘致を推進していることも、生産拠点としての魅力を高めているとみられる。
大林組は木造・木質化建築の普及に向け、設計から施工、資材供給までを含めたサプライチェーン全体を最適化する循環型ビジネスモデルの構築を掲げており、この製材事業もその一環に位置づけられる。また、中部電力は経営ビジョンの中で森林事業への参画を打ち出し、CO2吸収源の確保や地域経済への貢献を目指している。両社は、北海道の森林資源を活かした今回の取り組みを通じて、国産材の競争力強化と林業の持続可能な発展に寄与するとしている。