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東京大学CGC、自然資本を企業会計に反映する産学連携事業「Nature on the Balance Sheet」を始動 王子HDや住友林業など4社が参画143

Updated by 『森林循環経済』編集部 on September 02, 2025, 2:00 PM JST

『森林循環経済』編集部

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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

東京大学グローバル・コモンズ・センター (CGC)はこのほど、産学連携による「CGC-NBS協賛事業」を始動し、自然資本をバランスシート上に反映させる取り組み「Nature on the Balance Sheet」を開始した。異常気象や自然災害などが企業・経済・社会にとって深刻な脅威となり、カーボンニュートラルやネイチャーポジティブに焦点を当てた国際的なルールメイキングが進むなか、自然資本を財務的に可視化し、企業や金融機関が持続可能性を判断に組み込める仕組みづくりを目指す。

ネイチャーポジティブの国際動向を経営戦略に活かす

協賛企業として王子ホールディングス、住友林業、味の素、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングスの4社が参画する。いずれも自社の事業活動を通じて自然資本と深い関わりを持つ日本企業だ。

王子ホールディングスは森林資源の活用と広大な社有林を管理する知見を活かし、自然資本会計の導入を検証する。住友林業は森林の公益的価値評価や持続可能な森林経営および木造建築に関する知見を提供。味の素は原料調達や農業生態系サービスの価値評価に取り組む。MS&ADインシュアランス グループ ホールディングスは自然災害リスクや生物多様性損失が保険・金融に与える影響を分析する。

各社はそれぞれの専門分野で貢献するとともに、日本ひいてはアジアの視点を国際社会のルールメイキングに反映していく役割を担う。また、東大CGCから提供される国際動向をいち早く経営戦略に活かすことが期待されている。

自然資本会計から財務会計の統合に向けての3ステップ(出典:Mountains Group)

自然の価値を評価する経済モデル転換に向けて

本事業は、東京大学CGC、Capitals Coalition、Systemiq、Landbanking Groupの4者で構成される国際的枠組み「Mountains Group」の一環として推進される。Mountains Groupは、自然資本を財務諸表に反映させるためのロードマップの策定を進めている。

自然システムの崩壊は、異常気象や自然災害、サプライチェーンの寸断といった脅威に直結する。しかし、自然資本はこれまで「無限」かつ「無償」の資源と見なされ、その本質的な価値が市場で適正に評価されているとは言い難い状況だった。

自然資本の価値を企業の意思決定に組み込むことは、自然システムを保全し、持続可能な経済社会を実現する上で不可欠だ。四方を海に囲まれ、国土の3分の2を森林が占める日本は、豊かな自然資本を持っている。その声は、ネイチャーポジティブに関する国際的なルール形成において大きな説得力と価値を持つだろう。

本事業は、民間セクターがネイチャーポジティブへの移行に果たす役割を国内外に示すと同時に、コストと見なされがちな自然回復を企業価値の向上へと転換する挑戦だ。単に自然を「守る」だけでなく「活かす」経済への転換点として、森林循環経済の観点からも注目すべき動きといえる。

■参考リンク
東京大学CGC – Nature on the Balance Sheet 協賛事業を始動

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