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煩雑な森林由来J-クレジット申請業務を90%削減 旭化成が開発したDXシステムを延岡市で実証193

Updated by 『森林循環経済』編集部 on November 08, 2025, 11:41 PM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

旭化成は、森林由来J-クレジットの申請手続きを効率化するシステムをこのほど開発。宮崎県延岡市における実証試験に活用され、クレジット創出に係る申請業務量を約90%削減することに成功した。作業負担の大幅な軽減により、デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じた森林資源の活用と地域経済循環の同時実現に向けた道筋を示した。

データ管理と自動化のノウハウを活用

このシステムは、同社が長年培ってきたデータ管理と自動化のノウハウが活かされており、自治体や森林組合の持つ情報をデータベース化することで申請手続きを大幅に効率化する。各種データの収集、候補地の選定、吸収量の算定といった煩雑な作業が効率化され、従来は1.5〜3か月要していた作業を約4〜5日で完了することを可能とした。これにより、専門知識のない者でも短時間で正確な申請が可能となる。

森林クレジット申請プロセス効率化イメージ

延岡市で発行されたクレジットは10月1日より販売が開始され、2040年度までに合計3万4370 t-CO2相当の創出が見込まれている。購入企業はカーボンオフセット効果に加え、クレジットと紐づくエリアや保全効果を示す「森林環境貢献ストーリー」の紹介、認定証の発行といった付加価値を得られる。

森林クレジット活用による脱炭素と地域経済循環モデル

森林由来J-クレジットの売却によって得られる収益は森林保全活動を支える財源となり、環境保全や地域経済の活性化にもつながる。しかし、従来は申請手続きの煩雑さや専門知識なくして認証取得が困難という構造的な課題があった。実際、延岡市もかつて単独でクレジット創出を試みたが、途中で断念せざるを得なかった経緯がある。

旭化成は、自社の発祥の地である延岡市への地域貢献の一環として、2023年より延岡市や延岡地区森林組合などと連携して森林クレジット創出に取り組んできた。この活動が今回のシステム開発へと結実した形だ。今後は、宮崎県内を中心とした自治体や企業への本システムの展開や社内でのカーボンニュートラル実現に向けた活用も視野に入れる方針だという。

今回の産官連携による取り組みは、従来の体制ではJ-クレジットの創出が困難だった組織に対し、DXを活用した効率化が新たな可能性を示すモデルケースといえる。森林資源の活用が加速され、得られた売却益が持続的な森林保全活動へと循環することで、地域経済と脱炭素化への貢献が期待される。

■参考リンク
森林由来J-クレジット創出支援システムを開発 宮崎県延岡市での実証において、申請業務を90%削減に成功 |旭化成株式会社

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