Updated by 『森林循環経済』編集部 on November 14, 2025, 11:49 PM JST
Forestcircularity-editor
プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
徳島県牟岐町で使われなくなった人工林をフィールドに、感性・創造性を起点に人・文化・自然の関係を再構築するカルチャーブランド「yusan(ユサン)」が11月29日に始動する。山に入る日常的な営みとして、かつて徳島に根付いていた「遊山文化」を現代に再生させることを目指し、日本の山林保有者が抱える管理の課題に対し、文化と経済の両側面から解決を図る。
同ブランドは「感覚の再起動」をコンセプトに掲げ、放置され経済的な負債となっている山林の価値を資産へ変容させることを目的とする。具体的には、山を文化や感性を生み出す場所として捉え直し、山の中の体験を通して失われた身体の知覚を取り戻し、“つくる”行為を通じて山との関係性を再構築する。

活動の核となるのは「現代の遊山文化」だ。「遊山」は野山に遊びに行くことを意味し、徳島にはかつて「遊山箱」を持って節句に山へ出かける風習があったという。yusanはこの遊山文化を現代にひらき直し、「山に足を運び、食べる・つくる・読むといった日常の行為を山の中で行いながら、感性や創造性をひらいていく生活文化」と定義した。
yusanの特徴は、山林を観光や資源としての消費に留めるのではなく、日常の行為を山に持ち込む点にある。山林の存在を暮らしに取り戻す試みは、現代生活の中で薄れた身体の知覚を取り戻すとともに、人が山と応答しながら“つくる”という原初的な関わり方を再構築するきっかけとなる。
具体的な事業として、「山の茶空間体験の提供」「プロダクトの開発・販売」「出版活動、体験提供」の3つを展開する。山の中で茶を楽しむ、山の素材を使った茶や家具などの販売、「新しい遊山文化」を広める出版物や体験の提供など、いずれも山の存在を日常に接続する試みだ。
11月29日には、「山と、遊ぶ?」をテーマにした体験イベント「yusan open market」を開催する。県内外13の出店者によるフード・クラフトや、番茶の飲み比べ、茶会などを楽しめる。また、月に一回はyusanの拠点である茶空間/shopのオープンdayを実施予定だという。

自然環境の保全を「文化」という視点からアプローチする同ブランドの取り組みは、山を再び経済的・精神的な資産へと変える可能性を秘めている。文化と経済の両輪で山林の価値を再定義するこの徳島発の挑戦は、全国の山林地域が抱える課題解決のヒントとなるだろう。
■参考サイト
Instagram(@yusan_forest)