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「現場の一人工」をどう補うか スマート林業の次の論点は苗木運搬ドローンなど省力化技術へ303

How to compensate for the lack of "one person on site": The next topic in smart forestry is labor-saving technologies such as seedling transport drones.

Updated by 加藤聡悟 on May 27, 2026, 11:58 AM JST

加藤聡悟

Sougo KATO

株式会社リーフレイン

金融機関でハイテク分野の企業調査に携わったのち、造園建設現場における監督業務を経て現在独立。素材産業や再生可能エネルギー、木材利用の分野に関心を持ち、近年は林業に関する企画執筆に取り組んでいる。かつて現場を通して山林作業に携わった体験を背景に、現場のリアルと産業構造の接点を探る執筆を目指している。

林業DXの焦点は、森林情報の高度化から、現場作業の安全化・省力化へ広がり始めている。これまでのスマート林業では、航空レーザ計測や森林クラウドを活用し、森林資源の把握、境界確認、施業計画の効率化が先行してきた。一方で近年は、苗木運搬ドローン、遠隔操作の下刈り機械、架線集材の自動化技術など現場の負荷を直接下げる技術が目立ち始めている。山を見える化し、施業判断を高度化するだけでなく、現場の一人工(いちにんく・1日分の労働力)をどう補うか。林業DXは、管理の技術から、少人数でも現場を回す技術へ広がろうとしている。

「森林情報の見える化」が先行した理由

林業DXの初期段階では、森林資源を施業に乗せるための情報整備が重視されてきた。狙いは、山の稼働率を高めることにある。資源量は出材量の見通しを左右し、境界や所有者情報は施業地の集約に関わる。地形や搬出距離は路網設計や機械配置の前提となり、施業履歴は次の伐採や再造林を判断する材料になる。

航空レーザ計測、ドローン空撮、森林クラウド、森林GIS、施業提案ソフトは、こうした情報を施業判断につなげる技術として導入されてきた。森林情報の見える化は、森林資源を施業計画に組み込み、事業として動かしやすくするための土台である。

焦点は造林・下刈りなど周辺作業へ

焦点は、森林情報の整備から現場作業の省力化へも広がっている。これまで路網整備が進んだ現場では、ハーベスタやフォワーダによる伐採・搬出の機械化が進んできた。いま焦点が移り始めているのは、その周辺に残された造林、下刈り、苗木運搬、急傾斜地での補助作業である。

近年、この領域に技術が入り始めている。背景にあるのは、建設、農業、物流で育った技術の転用である。ドローン、小型走行機械、遠隔操作、センサー、通信、画像認識、小型電動化が、林業の一工程単位の負荷を削れる水準に近づいた。苗木運搬ドローンや下刈り機械、遠隔操作が可能な林業機械が注目されるのは、そのためである。

重要なのは、これらの技術が現場の一人工を置き換える費用対効果として見え始めたことにある。林業DXは、森林情報を整える技術から、現場作業を採算に乗る形で省力化する技術へ広がり始めている。

造林のためのドローン活用事例集(出典:林野庁 Webサイト)

林業DXで問われる「一人工」の課題

多くの産業で進むDXは、すでに動いている業務をデータで捉え直し、管理や判断の精度を高める方向にある。金融では与信やリスク管理、小売では在庫や需要予測、建設では工程・原価・安全管理、製造業では機械化された工程の稼働監視や品質管理が中心となる。現場で発生する情報を可視化し、業務全体を効率化していく発想である。

林業DXも、森林クラウドや航空レーザ計測による森林情報の整備という点では、この流れに重なる。山の境界、資源量、施業計画をデータで把握し、施業判断の精度を高める取り組みは各地で進み始めている。

ただ、林業の課題は情報管理だけに収まらない。林業では、新規就業者を確保しても10年後定着率が5割を切るとも言われており、一通りの作業を覚えて戦力化した人材が離れていく構造がある。背景には、危険性や身体負荷の大きさに加え、将来の働き方や収入への不安もある。

だから林業DXでは、管理の高度化だけでなく、現場作業そのものを支える技術が重要になる。苗木運搬ドローン、小型機械、遠隔操作技術は、現場を上から管理するためではなく、一人工を補い、危険作業や重労働を減らし、現場で働き続けられる環境をつくる技術として意味を持っている。

現場起点のDXは林業を変えるか

長期的には、AIや自動化による林業の高度化も進んでいくだろう。ただ、足元で広がりやすいのは、現場の一人工を補う技術ではないか。

省力化技術が使いやすくなれば、林業従事者の選択肢も広がる。独立を考える従事者にとっては、少人数でも仕事を受けやすくなり、既存事業者にとっても、限られた人員で現場を組み立てやすくなる。雇う側と働く側の双方にとって、一人工を補う技術は、林業を続けやすくする手段になり得るだろう。

個人や小規模事業者でも使いやすい省力化技術が増えれば、林業に参入する魅力も高まる。林業DXは、管理の高度化と並行して、現場起点で一人工をどう補うかという方向へ広がっていく可能性がある。(株式会社リーフレイン 林業ライター 加藤聡悟)

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