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すべて岐阜県産材の大型木造倉庫で「20メートル無柱空間」を実現 セブン工業、非住宅の木質化に新たなモデル003

Updated by 『森林循環経済』編集部 on April 03, 2025, 2:25 PM JST

『森林循環経済』編集部

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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、木造都市の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

セブン工業は、非住宅分野における木造建築の実用化を推進するため、岐阜県美濃加茂市の自社敷地内に大型木造倉庫を建設し、2月に完成させた。耐震性・耐火性に優れたCLT(Cross Laminated Timber)工法と、20メートルの大空間を可能にするATAハイブリッドトラス構法を組み合わせており、木造による中大規模建築の可能性を示す先進的なモデルとなっている。

ATAハイブリッドトラス構法による20mスパンの実現

この倉庫は、平屋建て・床面積約900平方mの大規模木造建築で、約200立方mの木材を使用した。すべて岐阜県産材で、柱や梁にはヒノキ集成材、壁にはスギの直交集成板(CLT)を採用し、自社工場で加工した。

通常、倉庫のような大規模空間を確保しようとすると、構造的な制約から鉄骨造などが主流となり、木造の採用は限定的だった。この倉庫では、CLTを構造体の主要部に使用し、高い剛性と耐震性能、ならびに優れた耐火性を確保している。もう一つの特徴が、ATAハイブリッドトラス構法の採用だ。木材と鉄材を組み合わせた構造梁(トラス)を用いることで、倉庫内部に柱を設けることなく、20メートルという広いスパンの大空間を実現した。

非住宅分野の木造建築に求められる安全性と信頼性を備え、今後の公共建築や商業施設への木造展開に向けた実用性を示している。木造建築の設計自由度を飛躍的に向上させるだけでなく、木造ならではの断熱性や調湿性、施工時の環境負荷の軽減といった利点も、大規模非住宅建築における木造化の意義として注目される。

地域の森林産業の拡大へ

セブン工業はこの倉庫建設を通じて、地元材の使用を積極的に推進した。建築物としての完成度を追求するだけでなく、川上の林業や製材業と連携した供給体制の確立にも取り組んでいる。

これにより、単発の建設事業にとどまらず、継続的な材の需要創出と林業サイドの収益性向上という好循環を生み出す。中山間地域が抱える「雇用の確保」や「林業離れの抑制」といった課題にも対応するものであり、地方創生の観点からも意義深い取り組みである。

非住宅建築における木造化が進展することで、木材市場の拡大や森林の循環的利用が促進される可能性がある。今回の倉庫のようなモデル事例は、今後の地域主導型の木造建築推進にとっても、有益な示唆を与えるだろう。

【タイムラプス】大型木造倉庫ができるまで|岐阜県産材×CLT×ATAハイブリッドトラス – YouTube

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