Updated by 『森林循環経済』編集部 on May 22, 2025, 9:48 AM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、木造都市の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
王子ホールディングスは、鳥取県にある王子製紙米子工場敷地内に建設した「木質由来糖液・エタノール製造パイロットプラント」の竣工式を5月21日に実施した。同施設は、糖液で年間最大3000トン、バイオエタノールで年間最大1000キロリットルの生産能力を有し、国内における同種プラントとしては最大規模の実証設備。従来、石油や穀物に依存していた糖液・エタノール生産に対し、国産の木質バイオマスを原料とする持続可能な代替手段として大きな注目を集めそうだ。
このパイロットプラントでは、同社が製紙に使用してきた「木材パルプ」を原料として糖液を製造し、さらに酵母による発酵プロセスを経てエタノールを効率的に生成する技術の確立を目指す。
木質由来の糖液は、食品や医薬品の原料となるだけでなく、バイオプラスチックの製造にも応用できる可能性がある。また、エタノールは燃料としての利用に加えて、様々な化学製品の原料として石油由来製品の代替となり得る。特に、持続可能な航空燃料(SAF)としての利用も期待されており、今後の需要拡大が見込まれる。このように、木質バイオマスは単なる燃料を超え、高機能な化学製品を生み出す新たな資源として、その価値を大きく高めることになるだろう。
このパイロットプラントは、2030年度の事業化を視野に入れた技術検証とプロセス最適化のための重要なステップとなる。王子グループは、製紙業で培った木材調達や処理技術を応用し、森林資源の高付加価値化を推進する。木材を「燃やす資源」から「化学変換する素材」へと再定義するこの試みは、林業・製紙・バイオ化学を横断する新たなサプライチェーンの構築につながる可能性を持つ。