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新しい森林文化と技術革新で2050年カーボンニュートラル実現に邁進しよう039

Let's strive to achieve carbon neutrality by 2050 through new forest culture and technological innovation

Updated by 小林靖尚 on June 06, 2025, 4:27 PM JST

小林靖尚

Yasuhisa KOBAYASHI

株式会社アルファフォーラム

株式会社アルファフォーラム・代表取締役社長、プラチナ森林産業イニシアティブ・ステアリングコミッティー 1988年早稲田大学理工学部応用化学科卒、三菱総合研究所主任研究員(住環境担当)を経て、同社のベンチャー支援制度を活用し2011年に株式会社アルファフォーラムを設立。以降、木材利用システム研究会(常任理事)、 もりもりバイオマス株式会社(顧問)、富山県西部森林活用事業検討協議会(事務局)等を歴任。2023年9月には木材利用システム研究会賞を受賞。

ぼくたちが約束した2050年カーボンニュートラル達成まで、あと25年! CO2排出抑制だけでは達成できないのだ。我が国の現在のCO2吸収は、森林緑地と海洋で6:4とすると、1.6億トン程度と考えられる。(森林緑地で樹木が1億5000万立方メートル/年育っているとすると、1憶トン/年程度のCO2吸収。0.83トン/年・人)。国民一人当たりのCO2排出は8.6トン/年程度だ。超過している年7トン以上をどうするか?

CO2とコストの両面で地域資源や食料の見直しを

まず、排出のほうは現在から半減させる必要がある。産業ではとことん再生可能エネルギーに移行し、原料は化石からバイオマスに切り替える。物や人はとことん動かす距離、動く距離を減らすべきだ。こう考えると改めて「地域循環経済」を目指すことの合理性に気付く。輸出入を含め運輸事業が現在の経済を成長させてきたが、CO2とコストの両側面より地域の資源や食料を見直すべきだ。オフィスワーカーも、照明やパソコンの利用、電車通勤でのCO2排出を常に意識し減らす努力をする。地方での自動車通勤は一人で運転している場合が多いが、同じような通勤路であれば2~3人の同乗でCO2排出は削減できる。

出典:カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省

森林緑地での吸収のほうは、2倍以上の吸収力を目指すことが可能だ。50年以上育った樹木はCO2吸収力が大幅に落ちてくる≒幹部容積の成長が減少する。植林後40年くらいまではぐんぐん伸びる≒成長する。植林をしなくてはいけないのだ。森林に加え、雑種地や耕作放棄地(荒廃農地)も対象として「植えさせてほしい」という気持ちになってくる。植えさせていただくために伐採する。25年間で可能な限り植えさせてもらえるならば、日本の森林緑地のCO2吸収力は2倍になる。2倍が計画できるまで「植えよう」だ。広葉樹林については、ひこばえ(萌芽更新)が可能な場所もあるので、とにかく森林緑地に愛をもって手を加えていこう。

CO2排出8.6トン/年・人から4.3トン/年・人へ半減させ、森林緑地のCO2吸収量を1.66トン/年・人、海洋吸収とあわせると2.14トン/年・人だ。まだ足りない。

2050年の我が国の人口はどうなっているか? 総務省によると、我が国の総人口は、2050年には9515万人となり、約3300万人(約25.5%)減少。ということは、経済産業省統計によると令和4年の日本のCO2排出総量は10億8500万トンだから、単純に考えればこれが25.5%減、すなわち8億833万トン/年、排出半減が達成できれば4億416万トンに減る。森林緑地の吸収量が倍になり海洋と足して吸収量は約2億6000万トンだ。その差はだいぶ縮まってきた。

CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素の回収・貯留)やCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素の回収・有効活用・貯留)の技術開発に期待するところではあるが、貯蔵安定リスク、酸化したものを還元させるときの水素との反応(吸熱反応)をどのように制御と効率化していくのか? 本当に工業化できるのか?

革新的な技術イノベーションと「里山と共に生きる新しい森林文化」で、カーボンニュートラル実現に邁進しよう。(株式会社アルファフォーラム・代表取締役社長、プラチナ森林産業イニシアティブ・ステアリングコミッティー 小林靖尚)

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