Updated by 『森林循環経済』編集部 on April 13, 2026, 9:30 AM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
バイオマス由来の燃料・化学原料への転換に向けた取り組みが、事業・供給・技術・制度の各側面で進みつつある。住友林業とレンゴーは建築廃材を原料とするバイオエタノール事業に踏み出し、SAF(持続可能な航空燃料)の原料としての活用を視野に入れる。出光興産は船舶燃料としてのメタノール供給網の構築を検討し、ENEOSはバイオナフサ由来のパラキシレン供給を開始した。さらに、SAF製造に関わる触媒開発や、NEDOによるバイオものづくり支援も進められている。これらの動きは、バイオマス由来資源が従来の用途にとどまらず、燃料や化学分野での活用に向けて検討・実装が進んでいることを示すものといえる。資源の活用は供給量だけでなく、どの産業のグリーン化と結びつくかによって付加価値が左右される。
住友林業とレンゴーは、建築廃材などを原料としたバイオエタノール製造事業の推進に向け、共同出資会社「RSウッドリファイナリー株式会社」を4月1日に設立した。2028年までの年間2万kLの商用生産を目標に掲げ、事業化を進めている。この事業の特徴は、住友林業グループの住宅建設・リフォーム・解体現場で発生する建築廃材を有効活用する点にある。これまで燃料としての利用(サーマル利用)が主だった廃材を、レンゴーの技術で非食用の木質資源を原料とする第2世代バイオエタノールへと転換し、さらにSAFの原料として石油元売事業者へ供給する。これは森林資源のバリューチェーンを「建設」から「航空エネルギー」へと拡張する新たな試みであり、住友林業の「ウッドサイクル」を加速させ、付加価値の最大化と脱炭素の両立を狙うものだ。

※参考リンク
レンゴーと基本合意書締結、木質由来のバイオエタノール生産へ~持続可能な航空燃料SAFに建築廃材を活用~ | 住友林業
RSウッドリファイナリー株式会社の設立について|レンゴー株式会社
出光興産は、シンガポールを拠点に豊富な実績を持つバンカリング事業者Consort Bunkers社と、船舶燃料向けメタノールのサプライチェーン構築に向けた共同検討を開始した。国際海事機関(IMO)が掲げる「2050年ごろまでの温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ」目標を背景に、重油に代わる低炭素燃料としてメタノールの注目が高まっている。今回の検討では、出光興産が調達するメタノールを、Consort Bunkers社のネットワークを通じてシンガポールや東アジアの主要港湾で供給する体制の確立を目指す。現在、メタノールと重油の両方を使用できる「二元燃料焚き」船舶の導入が進んでおり、同社は将来的に、再生可能エネルギー由来のe-メタノールや、バイオマスを原料とするバイオメタノール(グリーンメタノール)の導入・普及も視野に入れている。
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船舶燃料向けメタノールのサプライチェーン構築に向けConsort Bunkersと共同検討を開始
日鉄エンジニアリングは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「バイオものづくり革命推進事業」に参画することを発表した。同社は、花王と連携し、未利用バイオマス資源を効率的に活用するための「糖化酵素供給プラットフォーム」の構築・実証を加速させる。この事業では、従来の化学プロセスから、微生物や酵素を活用したバイオプロセスへの転換による社会実装を目指している。日鉄エンジニアリングは、独自の酵素オンサイト製造設備「CellEzyme(TM)」を活用し、第2世代バイオエタノールやSAF原料などの製造プロセスの確立を推進する。

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NEDO「バイオものづくり革命推進事業」に参画|日鉄エンジニアリング株式会社
ENEOSは、廃食油などを原料としたバイオナフサを用いて製造されたパラキシレン(PX)を、三菱商事と協働してソニーへ供給した。このバイオPXは、ソニーのオーディオ・ビジュアル製品等に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)の原料として活用される。マスバランス方式(バイオマス原料等の特性を、投入量に応じて製品の一部に割り当てる管理手法)を採用していることにより、既存の石油化学コンビナートの設備を有効活用しながら、従来品と同等の性能を維持したまま製品のグリーン化を実現している。
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ENEOS、ソニー向けにバイオナフサ由来のPXを供給|ENEOS
JFEエンジニアリングは、富山大学と共同で、SAFを効率的に製造できる新触媒を開発した。この触媒は、原料ガスから燃料を合成する「FT(フィッシャー・トロプシュ)合成」に用いられるものである。従来のプロセスでは、合成後に「水素化分解」という別の工程が必要で、SAFの収率は25%程度に留まっていた。しかし、この新触媒は水素化分解工程の削減につながり、一段階でSAFを製造することを可能にする。これにより、SAFの収率は従来比2倍の50%以上に向上し、多額の設備投資や水素の新規投入も削減できる。この技術は、将来的にバイオマスや都市ごみ、さらには回収したCO2を原料とするSAF製造のコスト削減と普及に大きく貢献すると期待されている。
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持続可能な航空燃料(SAF)を製造できる新触媒を共同開発 ~世界TOPクラス※1(従来比2倍超)の収率を実現し、SAFの普及に貢献~ | JFEエンジニアリング株式会社
ホルムズ海峡を巡る中東情勢の不安定化は、化石燃料を海外に依存する日本のエネルギー・経済安全保障の脆弱性を改めて浮き彫りにした。資源確保や脱炭素への抜本的な構造転換が急務となる中、日本が豊富に有する「森林資源」を燃料や化成品の原料として活用し、国内生産基盤を構築する構想が本格的に動き出している。

一般社団法人プラチナ構想ネットワーク(小宮山宏会長)は「国内森林資源を活用した成長戦略型バイオエコノミーの推進」を4月2日に発表した。脱炭素化と経済成長を両立させる「森林循環経済」のビジョンを示した上で、コスト高や市場未形成といった課題をいかに乗り越え、ビジネスとして社会実装していくかについて、現実的なロードマップを提示している。全文を読む