The key to “profitable forestry” is large-scale production and total purchase
Updated by 平石 和昭 on June 03, 2025, 3:49 PM JST
Kazuaki HIRAISHI
(一社)プラチナ構想ネットワーク
1984年東京大学工学部土木工学科を卒業後、株式会社三菱総合研究所に入社。海外事業センター長、政策・経済研究センター長、政策・公共部門副部門長、アジアパイプライン研究会事務局長、Northeast Asian Gas and Pipeline Forum Secretary General、エム・アール・アイ リサーチアソシエイツ株式会社取締役副社長を経て現職。専門は、インフラ計画、交通経済、エネルギー経済。博士(工学)、技術士(建設部門)
日本の森林資源ポテンシャルは大きいが、サプライチェーンの上流となる林業の現状は厳しい。林業・製材産業の労働力は減少し、補助金頼みで生業として産業化されていない。森林に人手は入らず、生産力も低下している。こうした課題を解決して林業経営をサステナブルにするため、すでに複数の対応策が提案されており、あとは着実に実行することが求められている。
造林・伐採コストの削減および事業継続性を担保するためには、施業面積の大規模化が鍵を握る。森林経営管理法を活用した林地集約においては、所有者不明森林等への対策が喫緊の課題である。施業面積の拡大のもと、施業計画と併せて林道整備を立案し、着実に整備を進めることが必要だ。長期的な林業事業の成立や将来的な二酸化炭素吸収作用の保全や強化に向けては、再造林の推進も不可欠である。さらに、木材需要が拡大していけば、全国規模で従前以上の資金需要が発生し、金融との連携もますます重要になる。森林CO2クレジットは国内外での取引実績があり、今後は木材生産とともに林業事業の重要な収益源となる可能性を持つ。
今こそ、森林・林業の革新に向けて動き出す時である。プラチナ森林産業イニシアティブでは、2050年に現状の4倍程度の国産材生産を目指し、森林資源をフル活用する事業モデルを提案した。大規模施業、主伐・再造林のサイクルと生産した素材の全量を買い取る「ストックヤード」をベースに、「儲かる林業」の標準型事業モデルを提案している。地域や範囲の検討に当たっては、経済・生産合理性、集材効率(運搬手段)、集材・選木・加工コスト、地域需要量、需要家までの距離、CO2排出量等の諸要素を考慮した。
本モデルの核として10万立方メートル/年を原木集材(全量買取)するストックヤードを設定した。ヤードを中心に、森林面積250ha/年を基準とした40年サイクルでの主伐・再造林を提案している(1サイクル当たり10,000ha)。
バイオマス化学や木造都市との連携に向け、ストックヤード隣接地での製材・チップ工場の設置やチップから液化等一次加工する化学プラントの併設も期待される。本モデルを踏まえた社会実装に向けた取組として、富山県西部では事業検討協議会が立ち上がり、ケーススタディのフェーズに入った。本取組を皮切りに、今後全国での展開を図っていく。(プラチナ構想ネットワーク事務局長 平石 和昭)