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森林循環経済を先導する岡山モデル — 産官学金の本気が日本を資源自給国家へ変える310

The Okayama Model: Leading the Forest Circular Economy — A Serious Effort by Industry, Government, Academia, and Finance to Transform Japan into a Resource-Self-Sufficient Nation

Updated by 小宮山 宏 on June 10, 2026, 9:21 PM JST

小宮山 宏

Hiroshi KOMIYAMA

(一社)プラチナ構想ネットワーク

東京大学工学部教授、工学系研究科長・工学部長、東京大学総長(第28代)を経て、2009年三菱総合研究所理事長に就任。2010年プラチナ構想ネットワーク会長(2022年 一般社団法人化)。その他、STSフォーラム理事長、一般社団法人超教育協会会長、公益財団法人国連大学協力会理事長、公益財団法人国際科学技術財団会長、一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター理事長など。また、ドバイ知識賞(2017年)、イタリア連帯の星勲章(2007年。)や「情報通信月間」総務大臣表彰(2014年)、財界賞特別賞(2016年)、海洋立国推進功労者表彰(2016年)など、国内外の受賞も多数。

※前回のコラムはこちら
地方国立大学が社会実装のハブとなる — データと実践で地域課題に向き合う

岡山の産官学金のトップが結集した日経地方創生フォーラムで、地域の森林資源をフル活用する「岡山モデル」の実践に触れる中で、これを単なる一地域の事例で終わらせてはならないと確信しました。日本の森林が支える循環社会に向けて、その構造を提示します。

「繋ぐ人」を中心とした機能的な連携

岡山の最大の強みは、産官学金のトップが一堂に会し、同じテーブルでコミュニケーションが成立している点にあります。フォーラムの壇上でも、県知事、メーカー社長、地域金融機関の役員などが集い、現状の課題を本音でぶつけ合っていました。

ここで私が確信したのは、「人」の重要性です。産官学金の間に入り、コミュニケーションを成立させる「繋ぐ人」の存在が不可欠なのです。岡山の場合、地元メディアや商工会議所のトップがその役割を果たしていました。彼らがハブとなり、産官学金のトップを同じテーブルに着かせることが、モデルを機能させる最大の条件になります。

木材需要の可視化と、林業現場を「稼ぐ力」に変える仕組み

森林資源を活用したビジネスが回るには、「歩留まり改善」と「需要の見える化」という2つの課題を同時に解決する必要があります。

現状、岡山の事業者のケースですと、素材生産から製材・集成材・プレカットを経て最終製品になるまでの歩留まりは、原木のわずか「13%」だそうです。素材生産の段階では原木のまま燃料用に回るものが35%、また製材段階では原木から木材製品を生産する過程で69%が燃料に回っているという実態があります。燃料と比べて木材製品は10倍以上高く売れますから、各段階でのロスを改善することが林産業全体の収益改善に直結します。

現状、川上の素材生産事業者には原木市場しか見えておらず、原木がどう使われるかがわかりにくいようです。分断されたサプライチェーンをつなぐ鍵が、「需要の共有と可視化」です。県内の木造建築で10%程度のシェアを持つ川下企業であるライフデザイン・カバヤは、岡山大学や自治体、関連企業とともに協議会を立上げ、需要をサプライチェーン全体で共有する仕組みを作ろうとしています。さらに、木造建築のプレカットデータから部材の樹種や寸法、コストをデータベース化する取り組みを、岡山大学との共同研究で進めています。どんな原木がいつ必要になるかという川下の需要予測が見えることで、川上はそれに合わせた伐採計画を立てられるようになり、無駄のない連動したサプライチェーンが構築されるのです。

そして、木材という「モノ」を売るだけでなく、地域の現場そのものを「稼ぐ力」に変える視点も不可欠です。岡山県北東部に位置し「百年の森林構想」による林業再生で全国から注目される西粟倉村では、年間1500人以上もの視察者が訪れるそうです。ただ視察を受け入れるだけではなく、木造コテージなどの滞在型拠点を整備し、体験で対価を得る仕組みを作り始めています。地方に「ミニ東京」を作るのではなく、地域の林業や獣害対策の現場を価値ある体験として提供し、地域が自立して稼ぐビジネスにすることが重要なのです。

日本を動かす「ボトムアップ」の力

この岡山モデルを推し進める根底にあるのは、現場からのボトムアップの力です。フォーラムで民間企業と自治体が本音で議論したように、国が上から「さあやれ」と言うトップダウンのやり方では、今の日本はうまくいきません。現場で実際の課題に直面している企業や市町村が県を突き上げ、それがさらに国の施策へと反映していく。トップダウンとは「逆の流れ」を作らなければ、地域は、そして日本は変わらないのです。

「産官学金のトップ連携」「需要の可視化」「ボトムアップの力」これらが実態として動く岡山モデルこそが、日本が真の資源自給国家へ、そして住民出資や生涯成長を伴う「プラチナ社会」へと転換していくための強力な推進力となるのです。(プラチナ構想ネットワーク会長・『森林循環経済』名誉編集長 小宮山宏)

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