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横浜市住宅供給公社、地方公社で全国初の6階建て木造賃貸 国産材を使用しP&UA構法を採用183

Updated by 『森林循環経済』編集部 on October 29, 2025, 3:28 PM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

横浜市住宅供給公社が推進する「(仮称)市ケ尾マンションプロジェクト」が、このほど国土交通省の「令和7年度 優良木造建築物等整備推進事業」(普及枠)に採択された。本事業は、全国の地方住宅供給公社として初めてとなる高層木造賃貸住宅の建設事例であり、脱炭素化推進と地域貢献を両立する試みとして注目される。

国交省の優良木造建築物等整備推進事業に採択

「優良木造建築物等整備推進事業」は、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、炭素貯蔵効果が期待できる中大規模木造建築物の普及に資するプロジェクトや、木造化に係る先導的な設計・施工技術が導入されるプロジェクトの実施に要する費用の一部を補助することを目的としている。

外観イメージパース(設計段階のため変更となる場合があります)

このたび採択された「(仮称)市ケ尾マンションプロジェクト」は、横浜市の中期計画および公社の中期展望で掲げる「脱炭素化」に資する取り組みを具現化するものとして企画された。大洋建設と協定を締結し、省エネルギー性能の高い6階建ての木造賃貸住宅(ZEH-M Oriented水準)を一般向けに供給する計画となっている。

木造による高層賃貸住宅の建設は、地方住宅供給公社として初めての事例となる。建物には中高層木造の普及と多用途化を目的に開発された技術「P&UA構法(Panel & Unbonded Anchor Structure System)」が採用された。国産スギ・ヒノキの構造用集成材を用いた「二方向ラーメン架構」を基本とし、1階下屋部分には国産材による在来軸組み架構を導入する。

二方向ラーメン鉄骨仕口のモデル

計画地は駅前広場に面した視認性の高さを活かし、脱炭素社会への転換を象徴する木質感のあるデザインを採用した。防火地域対応として、外壁などに木目調の不燃窯業系サイディング材を用いる。断熱性能は「ZEH-M Oriented」水準を達成し、太陽光パネルも活用するなど、環境への配慮も多方面に組み込まれている。

脱炭素化とコミュニティ・子育て支援を両立

建物は地域交流と子育て支援の場も創出する。住戸内は対面キッチンや可変性のある間取りを採用し、子どもの見守りやすさに配慮した設計とした。竣工前後では見学会や多目的スペースの活用を通じ、木造建築技術、脱炭素化、子育て支援等の普及啓発を行う方針だ。

多目的スペースイメージ(設計段階のため変更となる場合があります)

本事業は、地方公社として初の高層木造賃貸住宅建設を通じて、建築分野の脱炭素化と国産材利用の促進を具体的に示している。P&UA構法の採用は、中高層木造の汎用性を高め、技術普及を加速させる重要なマイルストーンとなるだろう。

■(仮称)市ケ尾マンションプロジェクト概要
所在地:神奈川県横浜市青葉区市ケ尾町1156-3
交通:東急田園都市線「市が尾」駅徒歩3分
敷地面積:617.00m2(登記簿)
延床面積:1,510.70m2(多目的スペース含む)
建物構造:木造 一部鉄骨造 6階建て
総戸数:29戸(予定)
耐火性能:1・2階:1.5時間耐火、3~6階:1時間耐火
竣工時期:2028年1月末(予定)
設計:大洋建設株式会社 一級建築士事務所
施工:大洋建設株式会社
設計協力:株式会社市浦ハウジング&プランニング

■参考リンク
P&UA 構法を用いた、地方住宅供給公社初※ 高層木造賃貸住宅建設事業
「(仮称)市ケ尾マンションプロジェクト」が優良木造建築物等整備推進事業に採択 -脱炭素と子育てに配慮した先導的モデル事業(横浜市住宅供給公社)

令和7年度「優良木造建築物等整備推進事業」採択プロジェクトの決定~炭素貯蔵効果が期待できる中大規模木造建築物の普及に資するプロジェクトを採択(国土交通省)

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