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森林資源を高付加価値な工業材料へ、林野庁ビジョンを背景に官民で社会実装が進展【木質系新素材の動向2026】290

Updated by 『森林循環経済』編集部 on May 01, 2026, 2:28 PM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

日本の林業が抱える収益性の課題や、脱炭素社会の実現といった社会要請を背景に、木質資源から抽出される成分を用いた「木質系新素材」の社会実装が、政策と技術の両面で進みつつある。林野庁は3月末に、森林を起点とした次世代のバイオマス化学産業の構築を目指す新たなビジョンを策定した。民間でも、リグニンを活用した舗装材の実証、木質繊維由来の強化材の量産化、物流の脱プラスチックを加速させる紙製結束資材の製品化など、具体的な動きが相次いでいる。未利用の森林資源や製造副産物に新たな価値を付加し、化学原料や工業材料としての活用が広がりつつある。

林野庁が木質系新素材の実装ビジョン、未利用材の高付加価値化へ

林野庁は、林業イノベーションを推進するための新たな指針として「木質系新素材の社会実装ビジョン」を3月30日に公表した。林業の収支改善に向けて、木材チップの需要先を安定的に確保し、建築用材として利用できない低質材や工場残材などを原料とした高付加価値用途の開発が重要であると位置づけている。スギを原料とした「改質リグニン」やセルロースナノファイバー(CNF)などの成分を活用した新素材開発や、バイオマスプラスチックなどの製造技術の進展を整理し、研究から実証、商用化に至るまでの各段階で産学官連携による取り組みを推進する方針を示した。素材開発に留まらず、森林資源を起点としたサプライチェーンの構築により、持続可能な産業の確立と脱炭素の両立を目指す。

出典:林野庁

※参考リンク
スマート林業技術・木質系新素材の実装ビジョンの公表について | 林野庁

大成ロテック、森林残渣由来のリグニンとホタテ貝殻を活用した次世代舗装で都市の猛暑を低減へ

大成ロテックは、ホタテ貝殻やリグニンなどの未利用資源を活用した環境配慮型舗装材料「CFミックス」の実証試験を実施した。猛暑日における路面温度を、一般的なアスファルト舗装と比較して最大18.7℃低減させることに成功した。CFミックスにおける路面温度の低減は、主にホタテ貝殻由来の炭酸カルシウムが舗装面の明度を高め、太陽光を反射することによるものだ。一方、森林残渣由来の高純度リグニン(リグノバ)を石油アスファルトの一部置き換えとして利用することで、アスファルトの製造・輸送時のサプライチェーン排出量の削減や、木材が蓄積した炭素をインフラ内部に長期間貯留することに貢献している。未利用資源、猛暑、CO2排出量削減という異なる課題を複合的に解決するモデルとして期待される。

※参考リンク
未利用資源(水産・林業副産物)を活用した環境配慮型舗装「CF ミックス」に関する実証結果、および猛暑日における温度低減効果を公表します。 | 大成ロテック株式会社

DAIKEN、木質繊維由来のプラスチック強化材「ウッドファイバーダイス」の量産を開始

DAIKENは、ニュージーランドの製造拠点において、プラスチック成形用強化繊維「ウッドファイバーダイス」の量産体制を確立した。MDF(中密度繊維板)製造で培った木質繊維の加工技術を応用し、これまでプラスチックの強化に用いられてきたガラス繊維や鉱物系充填材に代わるサステナブルな素材として展開する。木質繊維は軽量かつ高強度で耐熱性にも優れており、車両の内外装や家電、家具、食器などのプラスチック製品への活用を見込んでいる。木材の新たな用途開拓を通じて幅広い産業での脱炭素化を支援し、2035年度までに年間60億円の販売規模を目指す計画だ。

※参考リンク
プラスチック成形用の天然木繊維由来強化材「ウッドファイバーダイス」の量産体制を確立~ボード製造で培った木質繊維の加工技術を活用し、新市場へ展開~ | DAIKEN株式会社

OSP、クラフトリグニンを活用した環境対応型の紙製結束バンド

OSPホールディングスは、ダイレクトサーマル印字が可能な紙製結束バンドを5月21日に発売する。プラスチックフィルム不使用でありながら熱圧着が可能で、表面にダイレクトサーマル印字ができる特長を持つ。従来の粘着剤を使用した結束資材の課題を解決するとともに、ラベル(印字)とバンド(結束)の機能を一つにまとめ、紙素材にすることでプラスチック使用量の削減を実現した。注目すべきは、サーマル紙の発色を担う顕色剤の一部にクラフトリグニンを活用している点である。木材からパルプを取り出す際に発生する廃液に含まれる成分を化学原料としてアップサイクルすることで、石油由来原料の使用を削減している。

※参考リンク
脱プラスチックフィルムと廃棄物削減を実現した環境対応製品 ダイレクトサーマル印字可能な、紙製結束サーマルバンド 「ペーパック®サーマルバンド」新発売|株式会社OSPホールディングス

【提言】森林資源で燃料・化成品を国産化するバイオエコノミー戦略 中東リスクで浮上した原料課題と森林循環経済のロードマップ

ホルムズ海峡を巡る中東情勢の不安定化は、化石燃料を海外に依存する日本のエネルギー・経済安全保障の脆弱性を改めて浮き彫りにした。資源確保や脱炭素への抜本的な構造転換が急務となる中、日本が豊富に有する「森林資源」を燃料や化成品の原料として活用し、国内生産基盤を構築する構想が本格的に動き出している。

一般社団法人プラチナ構想ネットワーク(小宮山宏会長)は「国内森林資源を活用した成長戦略型バイオエコノミーの推進」を4月2日に発表した。脱炭素化と経済成長を両立させる「森林循環経済」のビジョンを示した上で、コスト高や市場未形成といった課題をいかに乗り越え、ビジネスとして社会実装していくかについて、現実的なロードマップを提示している。全文を読む

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