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製紙会社が挑む木質バイオリファイナリーの商用化 森林循環経済と化学産業:バイオマス化学の実用化に向けた企業の取組み(3)320

Paper Companies Tackle the Commercialization of Wood-Based Biorefineries

Updated by 鎌形 太郎 on July 09, 2026, 10:12 AM JST

鎌形 太郎

Taro KAMAGATA

(一社)プラチナ構想ネットワーク

1982年慶応義塾大学経済学部を卒業後、凸版印刷株式会社に入社。1988年三菱総合研究所に転職。都市・地域経営及び官民連携(PPP、PFI等)に関わる業務を担当。その後執行役員となり、地域経営研究本部長、プラチナ社会研究本部長、常務執行役員研究開発部門長等を歴任。2018年三菱総研DCS専務取締役として出向、 2021年に三菱総合研究所役員を退任、2022年プラチナ構想ネットワーク顧問に就任。プラチナ森林産業イニシアティブの事務局リーダー。

※前回のコラムはこちら
バイオナフサ輸入で国内石化大手が挑む「マスバランス方式」の商用化―森林循環経済と化学産業:バイオマス化学の実用化に向けた企業の取組み(2)

大手製紙会社各社は、紙需要が減少する中で、既存の製紙工場の設備や木質チップ等のサプライチェーンを活用し、燃料や化成品を生産するバイオリファイナリー事業を新規事業として推進しています。
製紙工場では、蒸解(成分分離の一手法)により、木材中のリグニンとセルロース・ヘミセルロースを分離し、セルロースからパルプを生産しています。リグニンやヘミセルロースの一部は黒液として回収され、これまで工場内のエネルギーとして利用されてきました。
こうした既存プロセスを基盤に、パルプ等を糖化・発酵してエタノールを製造し、将来的にはSAFや化学原料へ活用していく構想が具体化しつつあります。

【王子ホールディングス(王子製紙)】製紙技術を応用した「バイオものづくり」の実証研究

王子ホールディングスは、化石資源を原料とするプラスチックや燃料などの製造プロセスを、バイオマスベースへ置き換えることを目指し、「木質由来の新素材」の開発に取り組んでいます。なかでも、多用途展開が期待される「木質由来糖液」と、持続可能な航空燃料(SAF)や基礎化学品の製造に利用可能な「木質由来エタノール」を、バイオものづくりの基幹原料として位置づけています。

王子ホールディングスは、王子製紙米子工場内に木質由来糖液・エタノールのパイロットプラントを建設し、2025年5月に竣工しました。同プラントは、日本最大級の規模として、年間3,000トンの木質由来糖液、年間1,000kLの木質由来エタノールの生産能力を有します。今後、同プラントで実証を進め、2030年度の事業化を目指して取組を加速する計画です。

また、木質バイオマスを活用して溶解パルプおよびバイオエタノールの製造・販売を行う先進的企業であるAustroCel(オーストリア)の買収を通じ、バイオリファイナリー事業の強化も図っています。

王子グループが目指す木質由来のバイオものづくり(出典:王子ホールディングスホームページ)

【日本製紙・住友商事・Green Earth Institute(GEI)】「森空プロジェクト」で国産木材からSAF原料を生み出す

日本製紙、住友商事、Green Earth Institute(GEI)は、国産木材を原料としたバイオエタノールの製造・販売に取り組んでいます。本取組は「森空プロジェクト(R)」と名付けられ、国内で初めて、非可食のセルロース系バイオマスから航空燃料(SAF)の原料を安定供給する商用体制の構築を目指すものです。

2025年7月、3社は共同で合弁会社「森空バイオリファイナリー合同会社」を設立しました。宮城県の日本製紙岩沼工場内にセミコマーシャル規模のプラントを建設し、2027年から年産1,000kL以上のセルロース系バイオエタノールを製造する計画です。プラントでは、東北地域で持続的に確保可能な森林資源を原料とし、GEIが開発した低コスト・低炭素の発酵プロセスを採用します。さらに2030年には、年産数万kL規模の本格商業プラントへの拡張も視野に入れています。

製造されるバイオエタノールは、将来的にSAFへ転換されることが想定されており、日本航空(JAL)とエアバスも本構想に参画しています。

森空プロジェクト(出典:森空バイオリファイナリー合同会社ホームページ)   

【レンゴー(大興製紙)】建築廃材を活用した次世代エネルギーへの取組

レンゴーグループの大興製紙は、建築廃材を活用してバイオエタノールを製造するプロジェクトに取り組んでいます。

本プロジェクトでは、住友林業との協業により、2026年4月にレンゴーと住友林業の共同出資で「RSウッドリファイナリー株式会社」を設立しました。住友林業グループの住宅の建設・リフォーム・解体時に発生する建築廃材など、未利用バイオマス資源から生成するクラフトパルプを原料として活用し、持続可能な航空燃料(SAF)の原料となるバイオエタノールの製造を目指しています。

産業用微生物による自製酵素を用いたバイオエタノール生産技術の開発・実証を進め、2028年までに年間2万kLのバイオエタノール生産を開始する計画です。技術開発では、Biomaterial in Tokyo社との連携に加え、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援も得ています。

生産されるバイオエタノールは、販売先の燃料事業者によりSAFへ転換され、航空燃料として利用される予定です。

大興製紙の第二世代バイオエタノール実験用プラント(出典:レンゴーホームページ)

このように、製紙会社はバイオリファイナリー事業に積極的に取り組んでいます。一方で、現段階では石油由来製品に比べてコストが高く、商業プラントの建設にはなお課題が残されています。

最近のホルムズ海峡を巡る中東情勢の不安定化は、化石燃料を海外に依存する我が国の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。このため、燃料・化成品原料の国産化、すなわちバイオマス資源やリサイクル資源の活用を進め、輸入に依存しない資源循環型の産業構造を構築することが不可欠です。製紙会社が商業化を検討している国産バイオエタノールの一定割合の利用規制や生産基盤への投資支援など国を挙げてコスト高や市場未形成といった課題を乗り越え、燃料・化成品原料の国産化をビジネスとして実装していくことが求められます。(プラチナ構想ネットワーク顧問 鎌形太郎) 

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