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割り箸の価値は「使い捨て」だけではない―もてなしの文化と廃材利用から考える役割の変化352

Waribashi Are More Than "Disposable" — Rethinking Their Changing Role Through Hospitality Culture and the Reuse of Wood Offcuts

Updated by 小倉朋子 on September 28, 2026, 9:04 PM JST

小倉朋子

Tomoko OGURA

株式会社トータルフード/日本箸文化協会

(株)トータルフード代表取締役 食の総合コンサルタント/宮城大学客員教授/東証上場企業の社外取締役/亜細亜大・東洋大学・東京成徳大学兼任講師/食輝塾主宰/日本箸文化協会代表ほか/トヨタ自動車広報部に勤務後、国際会議ディレクター、海外留学を経て現職。飲食店、食品関連企業のコンサルティング、メニュー開発のほか、諸外国の食事マナーと総合的に食と生き方を学ぶ教室「食輝塾」を主宰。「食と心」を柱に、トレンド(分析、開発)から食文化、マナー、栄養、健康経営、食環境とメンタルまで、あらゆる食の分野に精通、専門が幅広いのが特徴。「箸文化と儀式」「日本の箸と特異性」「割箸と外食産業」について学術論文、箸に関する著書、監修多数。世界で唯一の日本箸文化の研究者といわれる。 トータルフード公式サイト 日本箸文化協会サイト

日本で使用している割り箸は、今では90%以上を海外から輸入しています。ですが、割り箸と森林との関係は深く、また、日本人らしい精神文化もあるため、本サイトで割り箸を取り上げ今回は3回目になります。割り箸について研究し、日本フードサービス学会に出した(2016)論文をもとにしています。

客人へのもてなしにも

以前本サイトにて、割り箸は日本発祥と書きました。現在もラーメン店や日本料理店、また衛生面の見地から高級料理店などで割り箸の使用が一部に見られるものの、箸を日常的に使わない国々において割り箸は一般的とはいえません。箸を使う国でも、木製であってもコーティングされているものや、樹脂素材の箸やプラスティック、金属製の箸が目立ちます。また、ナイフ、フォークといったカトラリーを主に使用する国においても、日本の割り箸のような毎回未使用の道具を使用する習慣はありません。

では日本はどうでしょうか。もともと日本では箸は各自が自分専用をもつ専有性の高い道具です。そのため「箸は人なり」「箸は人柄をあらわす」とも言われたように、自分の手と一体化させる使い方をしてきました。そのため家庭においては割り箸ではなく塗箸の使用が主流です。天然の抗菌剤でもあった漆でコーティングしているため、何度も使用することを可能にしたのです。旅にも自分の箸を持参しました。このことから、割り箸の使用は、日本にとって家庭内の日常の食事とは一線を画す役割を示すものだと言えます。

海外からの訪日外国人が日本の飲食店のおもてなしに感動をする例のひとつに、「おしぼり」が挙げられます。冬は熱く、夏は冷たく冷やされた季節感のあるおしぼりがカジュアルな居酒屋でも出されるのは、日本ならではの心遣いだと感動につながるのです。割り箸も同じ意味を持ちます。使用する前に使う人間が自ら“割る”ことで未使用であることが明確になり、もてなしの意思が割り箸にはこめられるのです。

割り箸はこうした客人へのもてなしの意思を持ついっぽうで、正月や結婚式などの縁起の良いハレの日には使用はタブーとされています。縁を割ることを避けるためだと言われています。そのためハレの日には、2本がもともと離れた箸(祝い箸)を使用します。ハレの日に高級割り箸を使用するシーンをたまに見かけますが、本来の使い方ではありません。祝い箸に割り箸はありません。

木材ならではの良さや特徴

割り箸は大きく5つの形状に分かれます。そのうちの最も庶民的な割り箸を「丁六」といい、丁度六寸の長さであることから名前がつけられており、割り箸の中で最も長さの短い箸になります。面取りされていない箸で2本の間に溝がないのが特徴です。そのため割りにくく口触りも滑らかではありませんが、昭和の時代には駅弁についてくる割り箸には多く見られました。割った時に箸からささくれが出来たりするのはコーティングをしていない木製であるためです。

割り箸を落とした時や持参するのを忘れた時など、1人の割り箸を折って2人で使った思い出があります。短くて使いにくいですがなんとか用は足りました。これも割り箸が木製でコーティングされていなかったのでできたことです。今ではコンビニなどで手に入る割り箸ですが、当時は今より貴重でした。

割り箸はもともと廃材の再利用の意味と、江戸時代の外食産業における客人へのサービスの意味の両面から急速に発展したのですが、日本の箸が木製であることがそもそもの起因です。木製であるが故に洗浄しても未使用と同様にはなりません。そのため家庭内の銘々箸は他人と共有しないようにしました。加えて和食は、唐辛子やウコンなど着色しやすい刺激の強いソースや香辛料は多用しない料理です。木製であることと料理は連動しています。

コンビニやスーパーなどから無料で得られる現在では、家庭内においても自分の箸は持たず割り箸で食事をする人が珍しくはなくなり、非日常の道具ではなくなりつつあります。また、家庭内では木製以外の箸を使用し、木製の箸は外部の料理を購入した時だけの使用、という人も多く見受けます。食器が調理道具も兼ねる時代となりました。使い捨ての容器にお湯を入れたり電子レンジで温めて食べたり、使い捨ての容器と割り箸は廃棄することにより、個食は成り立ちます。

家庭の食事と外食と持ち帰りの中食の選別もボーダーレスの時代となり、割り箸の存在意義も本来のものとは変わりつつあります。「使い捨て」のイメージが強い割り箸ですが、元来の「廃材利用」「もてなし」の背景を海外の方に伝えると「おしぼり」同様に感動されます。割り箸には、木材ならではの良さや特徴とともに、日本人の精神性も込められています。「使い捨て」からの脱却に価値の高みが望めるのかもしれません。(トータルフード代表取締役・日本箸文化協会代表 小倉朋子)

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