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森林資源をフル活用し地域産業に ― 年間10万立方メートルを基準とする事業モデルと、需給を可視化するFSの手法356

Making Full Use of Forest Resources to Build Local Industries

Updated by 鎌形 太郎 on October 05, 2026, 8:09 PM JST

鎌形 太郎

Taro KAMAGATA

(一社)プラチナ構想ネットワーク

1982年慶応義塾大学経済学部を卒業後、凸版印刷株式会社に入社。1988年三菱総合研究所に転職。都市・地域経営及び官民連携(PPP、PFI等)に関わる業務を担当。その後執行役員となり、地域経営研究本部長、プラチナ社会研究本部長、常務執行役員研究開発部門長等を歴任。2018年三菱総研DCS専務取締役として出向、 2021年に三菱総合研究所役員を退任、2022年プラチナ構想ネットワーク顧問に就任。プラチナ森林産業イニシアティブの事務局リーダー。

日本の森林は今、大きな転換点を迎えています。林業・製材産業の担い手減少や森林整備の停滞、中山間地域の人口減少といった課題が顕在化する一方、脱炭素化や経済安全保障、非住宅木造建築の拡大、バイオマス化学など、森林資源に対する新たな期待も高まっています。
プラチナ構想ネットワークでは、2050年を見据え、持続的・自律的に成長する林業・木材産業と、持続可能で多様な機能を有する森林の実現を目指してきました。その重点的な取り組みの一つとして検討しているのが、地域の森林資源を余すところなく活用する「森林資源フル活用事業モデル」です。

「植えて・育て、伐って・集めて・使う」を一つの事業モデルに

森林資源フル活用事業モデルの特徴は、森林から木材を生産する部分だけではなく、「植える、育てる・伐る・集める・使う・再資源化する」という一連の流れを、一つの地域産業として捉えることにあります。
その核となるのが、地域から生産される原木を集積する「ストックヤード」です。森林から搬出された原木をストックヤードで全量受け入れ、用途や品質に応じて選別し、建築用材、木質バイオマス、さらには化学原料などへ振り分けていきます。これにより、従来は十分に利用されにくかった低質材や端材、副産物まで含めて活用し、森林資源全体の価値を高めることを目指します。

図1 森林資源フル活用事業モデルのイメージ(出所:プラチナ構想ネットワーク)

プラチナ構想ネットワークでは、この仕組みを「種苗」「育林」「素材生産」「ストックヤード」「熱供給・バイオマス化学」といった事業に整理するとともに、それらを横断する「物流」と「森林ファンド」の仕組みも含めた事業モデルとして検討しています。単に木材を生産するのではなく、川上から川下までのサプライチェーン全体を設計することがポイントです。

一つの目安となる「年間10万立方メートル」

このモデルでは、検討の基準ケースとして、年間10万立方メートル程度の原木を取り扱うストックヤードを想定しています。

これまでの検討では、1万立方メートル、5万立方メートル、10万立方メートル、25万立方メートルといった複数の規模について、生産合理性、地域内需要、輸送に伴うCO2排出、雇用、設備効率などを比較しました。その結果、10万立方メートル/年程度は、一定の加工効率を確保しながら、建築用材とエネルギー・バイオマス利用等を組み合わせやすい規模として位置づけられています。

図2 ストックヤード規模の比較とKPIベンチマーク例(出所:プラチナ構想ネットワーク)

もっとも、「10万立方メートル」という数字を全国一律に当てはめるものではありません。実際には、地域ごとに森林資源量、地形、道路条件、既存の製材・加工施設、木材需要、輸送距離などが異なります。このため、10万立方メートルを一つの基準としながら、それぞれの地域に適した規模とサプライチェーンを検討することが重要です。

図3 年間10万立方メートルを想定したサプライチェーン概略例(出所:プラチナ構想ネットワーク)

地域ごとに必要なFS(実現可能性調査)

そこで今後、重要になるのがFS(Feasibility Study:実現可能性調査)です。

森林資源フル活用事業を実際の地域で立ち上げるためには、「地域にどれだけ森林資源があるのか」という確認だけでは十分ではありません。どの森林から、どれだけの原木を安定的に供給できるのか。伐採・搬出にはどの程度のコストがかかるのか。ストックヤードをどこに配置するのが効率的なのか。そして、集めた木材を建築、エネルギー、化学原料など、誰がどれだけ利用できるのか。これらを一体的に確認する必要があります。

FSでは、大きく四つの段階で検討を進めます。まず、地域の森林資源量や既存サプライチェーン、素材生産コストなどを把握し、課題構造を整理します。次に、その地域に適したストックヤードの規模や配置、必要機能を検討します。その上で、原木供給側と需要側の双方へのヒアリングを行い、実際の需給条件や事業主体となり得るプレイヤーを確認します。最後に、これらを踏まえて事業収支や事業スキームを組み立て、事業化までのロードマップを描きます。

図4 森林資源フル活用事業モデルFSの4つのステップ(出所:プラチナ構想ネットワーク)

つまりFSとは、単なる森林資源量の調査ではありません。「どこに、どれだけ資源があり、誰が、何に、どれだけ使うのか」を数量で可視化し、地域の森林資源を起点とした産業の姿を具体化するプロセスです。年間10万立方メートルのサプライチェーン例では、伐採・集材から選木、製材、チップ化、木造建築やバイオマス利用までを数量でつなぎ、森林と需要を一体で検証する考え方を示しています。

森林を「コスト」から地域の「資産」へ

森林資源フル活用事業モデルが目指しているのは、木材の販売量を増やすことだけではありません。森林整備、再造林、木材利用、地域エネルギー、バイオマス化学、物流、さらには森林のCO2吸収価値や金融までをつなぐことで、森林を地域の持続的な産業基盤として捉え直すことにあります。地域の条件は一つとして同じではありません。だからこそ、まず地域ごとにFSを実施し、森林資源と需要、事業者、インフラ、資金を具体的につないでいくことが必要です。一つひとつの地域で森林資源が循環する事業モデルをつくり、それを各地へ展開していく。その積み重ねが、森林を守りながら使い、使うことで再び森林を育てる「森林循環経済」の形成につながると考えています。(プラチナ構想ネットワーク顧問 鎌形太郎)

※本稿は、プラチナ構想ネットワークの「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」-ビジョン実現に向けた推進戦略とロードマップ-をもとに作成。

※「森林資源フル活用事業モデル実現可能性調査(FS)」提案書のダウンロードはこちらから

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