Updated by 『森林循環経済』編集部 on November 05, 2026, 7:39 PM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
全国の里山や森林で放置竹林が拡大し、生態系の破壊や土砂災害リスクの増大といった「竹害」が深刻な地域課題となっている。従来の竹資材需要の低迷、伐採・回収にかかる高コスト、処理プロセスの未確立といった壁が立ちはだかるなか、近年では食料・農業・製造技術・金融・脱炭素など多角的なアプローチによって、竹を価値ある資源へと転換する動きが本格化している。国産メンマの事業化による幼竹の大量活用をはじめ、未利用竹材の土壌改良パウダー化、サステナブルな工業製品の開発、廃竹を用いた高密度バイオ成型炭の実証、ポジティブ・インパクト・ファイナンスを通じた事業成長支援まで、環境課題の解決を新たな市場創出と収益化に直結させる地域循環モデルが広がっている。
福岡県糸島市などで放置竹林の資源化に取り組む竹次郎は、2026年度の国産メンマ用塩漬け一次加工を5月に完了した。約3週間の加工作業で製造された塩漬け原料は約125トンに達し、国産メンマ製造として日本最大級の加工規模だという。同社は2021年4月より放置竹林を活用した国産メンマ製造プロジェクトを立ち上げた。今年度は地域住民や企業など延べ約500名が作業に参加し、約6万本に及ぶ幼竹の伐採および加工を実施した。同社は全国35都府県の生産者・団体と連携して環境保全と地域経済の活性化を両立する地域循環型事業「糸島モデル」の横展開を進めており、2027年度までに国産メンマ原料500トン体制の構築を目指している。森林や里山を侵食する放置竹林は、生物多様性の低下や土砂災害リスクの増大を招くとして全国的な環境課題となっている。一方、国内で流通するメンマの99%以上は輸入に依存している。竹の伐採・整備を食品産業として収益化する同社の取り組みは、放置竹林対策の持続的な推進と地域の産業振興を後押しする地域循環モデルといえる。

※参考リンク
日本で流通するメンマの99%以上は輸入品――その常識を変える挑戦。放置竹林から125トンの”国産メンマ”誕生 | 株式会社竹次郎のプレスリリース
長谷工コーポレーションとグループ会社の長谷工あんしんデリは、竹林整備で生じる未利用竹材を粉砕した「竹パウダー」と食品リサイクル堆肥を組み合わせた新たな土壌改良技術を共同開発した。実証試験は長谷工あんしんデリ大津農場の水稲2圃場で行われ、この土壌改良材を投入した施用区では慣行区に比べ、単位面積あたりの収穫量がそれぞれ17.8%、18.8%増加した。あわせて、京都大学発スタートアップのサンリット・シードリングスによる生態系DNA診断技術を用いて土壌を解析した結果、土壌微生物叢の構成変化が確認され、養分流出の抑制や病害抑制といった土壌機能の向上が示唆されたという。今後は施用条件の最適化や適用作物の拡大を進め、再現性を確認しながら実用化を目指す方針だ。未利用竹材と食品廃棄物を同時に循環させ、環境技術と農業現場をつなぐ取り組みとして、土壌生態系の機能を活かした循環型農業への貢献が期待される。

精密部品大手のサンコールは、京都府宮津市の城﨑雅文市長の表敬訪問を7月に受け、同市と連携して推進する「竹サステナブル事業」の進捗や開発成果を共有した。同社は宮津市内で伐採された放置竹林の竹を原料に、独自技術を用いて工業用竹炭「京かぐや炭(R)」「KYOBAMBLACK(TM)」を製造している。直近では、竹セルロース樹脂と竹炭由来の合成皮革を組み合わせた自動車用ハンドルを開発し、展示会で高い評価を得るなど、竹の機能を生かした多様な製品の実用化を着実に進めている。天橋立をはじめ豊かな自然を有する宮津市では、竹林の放置による竹害が深刻な地域課題となっている。地域が抱える厄介者としての竹を、高付加価値な工業材料へと転換する取り組みは、行政との連携による原料調達と高度なものづくりを結びつけた先進的な事例といえる。

※参考リンク
宮津市長がサンコール(株)を訪問 地域資源「竹」を活用したサステナブル事業の可能性を共有 | サンコール株式会社のプレスリリース
自動車部品大手のヒロテックと近畿大学工学部は、広島県内の牡蠣養殖いかだ等から生じる廃竹材を主原料とした「バイオ成型炭」の試作実証に成功した。同社が培ってきた大型プレス成形技術と近畿大学工学部化学生命工学科・白石浩平教授の材料加工技術を掛け合わせ、炭化した廃竹粉末を高密度に成形し、既存の石炭コークスと同等の発熱量を確保したほか、燃焼炉の腐食原因となるカリウムや塩素などを大幅に低減し、既存の石炭燃焼設備へ直接投入できる性能を実現した。同社は発電事業者や素材産業向けに2026年末までの商品化・販売を目指している。全国の牡蠣生産量の約6割を占める広島県では、年間約5000トン発生する竹製牡蠣いかだの多くが野焼き処理されており、環境負荷や近隣への影響が深刻な地域課題となっていた。また、産業界では既存設備を活かした現実的なCO2削減策が急務となっている。水産業由来の廃竹を産業用燃料として高付加価値化するこの技術は、産業廃棄物削減とCO2排出抑制の双方に寄与する1つの解として期待される。

※参考リンク
廃竹が燃料に。ヒロテック×近畿大学が実証成功 ~自動車プレス技術で「バイオ成型炭」を開発~ | 学校法人近畿大学
竹製品の企画・販売を手がけるアステップは、商工組合中央金庫から2度目となる「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)」による融資を8月に受けた。借入金額は1億7000万円で、モニタリング期間は7年間。今回のPIFでは商工中金経済研究所によるインパクト評価とKPI設定が行われ、日本格付研究所より第三者意見書が提供されている。同社は2023年の初回融資以降、竹箸やホテルアメニティなどの日用品から家具・インテリア、建材へと竹の利用領域を拡大した。約27トンの竹建材を用いたショールーム「TAKE TORI HOUSE」を今年竣工させたほか、間引き竹のメンマ化や端材の炭化・パルプ化など、竹を余すことなく循環させる「360度利活用」を推進している。さらにGXの一環として、竹歯ブラシ等におけるカーボンフットプリントの算定に取り組み、環境価値の定量的な可視化にも着手した。「楊枝から家まで」を掲げて竹の用途を広げる同社の取り組みは、環境価値の可視化と金融手法を連動させ、放置竹林対策を現実的な産業へと昇華させる試みとして注目される。

※参考リンク
アステップ、商工中金による2度目の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」を実行 | 株式会社アステップのプレスリリース