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森の価値を五感で受け取る ─ 5人の女性が語った「自然との対話、価値観を揺さぶる暮らし」【森林女子の実践会議レポート】334

Updated by 『森林循環経済』編集部 on August 12, 2026, 9:41 PM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

オンラインイベント「森林女子の実践会議―森と地域をつくる女性たち」を7月17日に開催しました。夏のテーマは「自然との対話、価値観を揺さぶる暮らし」。400名を超えるお申し込みがあり、森との多様な関わり方を模索する実践に大きな関心が寄せられました。

子育て、里山保全、地域づくり、林業現場、プロダクト開発など、全国各地の異なるフィールドで活動する5名の女性が登壇しました。整えられた成功事例ではなく、迷いや葛藤、そして決断の過程を共有する場として、多様な働き方や暮らし方のリアルな声が語られました。

多種多様な「森のしごと」への入り口

一人ひとりがどのような経緯で森へ入ったのか、その入り口はさまざまです。

神奈川県の青木薫さんは、元看護師であり3児の母です。子どもの障害や不登校といった悩みを抱える中、森に助けられた実感から「人の成長を助ける場」としての可能性を見出し、里山で子どもの遊び場やリトリート事業を始めました。 長野県の天野紗智さんは元プロスノーボーダーです。カナダで見た「仕事と暮らしと遊びに境界線がない」ライフスタイルに惹かれて移住し、自伐型林業と多様なライフスタイルを組み合わせた活動を行っています。

徳島県の田中美有さんは、引き継いだ山林の価値を問い直し、自ら山に入りました。そこで得た感覚を現代生活に取り入れるブランド「yusan」を立ち上げ、茶空間や木製スツールを提供しています。 岡山県の忠田あかりさんは、事務職から林業の重機オペレーターへと転身した方です。子育てと両立できる通いやすい環境を求めて未経験から飛び込み、「私にもできるんだ」という感動と楽しさを見出しています。 鳥取県の西村早栄子さんは、過保護な日本の子育てへの危機感から「たくましく育てたい」と移住を決断。仲間とともに園舎を持たない「森のようちえん」を立ち上げ、田舎での子育ての場を作ってきました。

青木さんが代表を務める合同会社ヘリテッジキーパーのインスタグラム
天野さんが代表を務める一般社団法人ディバースラインのインスタグラム
田中さんが立ち上げたブランド「yusan」のインスタグラム

「感覚」や「ケア」を支える社会的基盤として森を捉える視点

今回のセッションで共通して浮かび上がったのは、森を単なる「資源」としてではなく、「感覚」「ケア」「教育」「地域コミュニティ」を支える社会的基盤として捉える視点でした。

田中さんの「山に入ると感覚が鋭敏になる」という気づきに対し、青木さんは「意識的に自然と対話することで、生き物としての感覚が呼び起こされる」と深く共鳴しました。森から積極的に受け取ることで感謝の念が湧き、双方向の「ケア(ケアリング)」が生まれるといいます。

つまり全員に共通していたのは、自然と向き合うことで、現代人が失いがちな感覚を再び呼び覚ましているという点です。 西村さんは頭で考えるのではなく、「当事者として森の中にどっぷり浸かり、身体で受け取るエネルギーを感じる」ことの重要性を強調しました。天野さんもカナダでの経験から「五感が研ぎ澄まされていた」自然とともにある心地よさに言及し、忠田さんも重機を操りながら、日々変化する自然を肌で感じる楽しさを見出しています。

忠田さんが勤務する戸川木材の公式サイト
西村さんのコラムはこちら

女性視聴者からの質問にも回答

女性視聴者からの事前質問では、「子育てとの両立」「女性であることへの不安」「山との向き合い方」など具体的に提示され、登壇者が回答しました。

子育てとの両立については、西村さんが「森のようちえん」でのコミュニティの力を挙げ、「同じ価値観を共有する仲間がいればなんとかなる」と背中を押しました。忠田さんも林業現場のリアルとして「暗くなったら終わりなので残業がなく、子どものお迎えに行きやすくなった」と、林業の意外な働きやすさを明かしました。

男性中心の林業社会に入る心得については、忠田さんが「同じようにしようとすると絶対に苦しいので、まず思わないこと」と指摘。「作業が綺麗、丁寧、掃除がきっちりできるといった自分らしさを大切にすればいい」と等身大のアドバイスを送りました。天野さんも、自身はチェーンソーで木を切るのではなく、森の計画や測量に携わっているとし、木を切るだけではない多様な森との関わり方を示しました。

山の資源活用と販路については、地域づくりにも通じる実践的なアプローチが共有されました。青木さんが「どこの森のストーリーなのかが受け取る人には大事」と語り、田中さんは「まずは山の中に入って、自分が楽しいことを探す」、西村さんは「一輪の花を生活空間に取り入れるハードルの低さ」から始めることを提案。天野さんは「講習会に参加して仲間をつくる」ことの意義を語り、誰もが今日から始められる新しい選択肢が示されました。

開催後に寄せられた視聴者の感想コメント(抜粋)

イベントの熱量を物語るように、視聴者から多くの感想が寄せられました。抜粋してご紹介します。

・みなさんが生き生きとお話されている姿、五感と思考を楽しく働かせているお話、たくさん希望をいただきました。
・「薪炭林としての需要から、感覚・感性を整える場としての需要」という話はその通りだなと感じました。自分がしようとしていることを言語化して頂いたように思います。
・森を大切に思い、その思いを行動に移して活動されている皆さんをたくましく思いました。
・森林の素材や環境を上手く利用し、社会に役立てている工夫・アイデアが参考になりました。

次回は10月16日「移住して森で働くという選択」

森林産業というと、木材利用や林業経営といった産業的な側面に目が向きがちです。しかし今回語られたのは、森が人の価値観や暮らしを変える「社会的基盤」としての側面でした。

女性たちの実践から見えてきた森の新たな価値、従来の男性中心の林業とは異なる多様なアプローチ、そして地域コミュニティを育むための新たな選択肢。これらは、単なるライフスタイルの共有に留まらず、今後の森林循環経済や地域づくりにおいて極めて重要な示唆を与えてくれます。

『森林循環経済』編集部では、「森林女子応援プロジェクト」として今後もこの実践会議をシリーズ開催いたします。次回は2026年10月16日(金)、「移住して森で働くという選択ー時間・場所・人間関係の再構築」をテーマに開催予定です。森と地域をつなぐ実践者たちの今後の展開に、ぜひご期待ください。

イベント名称:森林女子の実践会議―森と地域をつくる女性たち
テーマ:移住して森で働くという選択
開催日時:2026年10月16日(金)12:30〜14:00
開催形式:オンライン(Zoomウェビナー)
参加対象:どなたでもご視聴いただけます
参加費:無料(事前登録制)
見逃し配信:お申込みいただいた方は、当日ご視聴いただけなくても期間限定で見逃し配信でご覧いただけます
定員:500名
構成:前半 自己紹介とテーマトーク/後半 事前質問への回答
主催:「森林循環経済」(一般社団法人プラチナ構想ネットワーク)
協賛:株式会社戸川木材、株式会社トクヤマ

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