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【神主の目線】森は「伐らない」ほど守られるのか? ― 新たな森林・林業基本計画から考える、100年後に森を継ぐ方法343

[The Priest’s View] Is a Forest Better Protected the Less It's Cut? — Rethinking How to Pass On Our Forests, 100 Years from Now, Through Japan's New Basic Plan for Forestry

Updated by 青木和洋 on August 31, 2026, 8:16 PM JST

青木和洋

Kazuhiro AOKI

株式会社WSense 代表取締役 / DELTA SENSE 製作委員会

株式会社WSense 代表取締役 / DELTA SENSE 製作委員会 福島県会津若松市出身。華道/茶道/能楽を嗜む家柄で、幼い頃から日本文化に触れて来ました。木に興味を持ち始めたのは、宮大工の「カンナ削り」を目撃して業の奥深さに気付かされた時から。現在は神主として得た知見を基に公益に繋がる取り組みを推進中。東京青年会議所所属 / 大学院卒、MBA(経営学修士)取得 / 4歳の頃からボーイスカウトとサッカーも両立中。DELTA SENSE 公式HP 株式会社WSense

「森を守る」と聞いたとき、私たちは何を思い浮かべるでしょうか。

木を植える。伐採を止める。人の手を入れず、自然のまま残す。

そこには「木を伐る=自然を壊す」「木を残す=森を守る」という、分かりやすい構図があります。
しかし、日本の森林を実際に見ていくと、この二択だけでは説明できない現実が見えてきます。
日本の国土の約3分の2は森林で、その約4割にあたる約1,009万haが人工林です。戦後から高度経済成長期に造成されたものが多く、その約6割が50年生を超え、本格的な利用期を迎えています。
2026年6月に閣議決定された新たな森林・林業基本計画も、「百年つづく『森の国・木の街』へ」を掲げました。そこで示されているのは、単に森林を保護する政策ではありません。林業に適した森林では再造林を確保し、国産材の供給力を高め、木材利用と健全な森づくりを循環させていくという考え方です。

つまり、森を守るために、木を使うことが求められている。

ここに、私たちの認識を揺らす小さな矛盾があります。
もちろん、「だから木は伐れば伐るほどよい」という話ではありません。
天然林、生物多様性上重要な森林、林業に適した人工林では、果たす役割も管理方法も異なります。重要なのは、「伐るか、伐らないか」という一つの軸だけで森を判断しないことです。

「残す」と「継ぐ」は同じなのか

私は神主として、長く「残すこと」と「継ぐこと」の違いを考えてきました。
神社には、古いものをそのまま固定して残すこととは異なる継承の文化があります。
象徴的なのが、伊勢の神宮で20年に一度行われる式年遷宮です。社殿を造り替え、御装束や神宝を新たに調製する。その営みを繰り返すことで、宮大工をはじめとする技術や文化も次代へと受け渡されてきました。

形を変えるからこそ、長く継承されるものがある。

この視点を森林に重ねると、「守る」という言葉の意味が変わってきます。
100年間一本の木も伐らないことが、100年後の森を守ることと同じとは限りません。
反対に、今日木を伐ることも、その後に植え、育て、再び使える森をつくるのであれば、未来の森林を継ぐ行為になり得ます。

森を継ぐには「経済」がいる

では、なぜ森林の循環は簡単に実現しないのでしょうか。
ここには経営の問題があります。

木を伐る。市場へ出す。加工する。建築や製品として使う。

そこで経済価値が生まれても、その価値が次の再造林や保育へ戻らなければ、循環は途切れてしまいます。
「森林を大切にしよう」という善意だけでは、苗木代も、人件費も、そこで働く人の暮らしも支えられません。
森林循環には理念と同時に、生まれた価値が、次の森へ還流する仕組みが必要なのです。
新たな森林・林業基本計画でも、林業適地での確実な再造林に加え、再造林コストや森林・木材の持続性に関する情報共有、合理的な価格形成などが掲げられています。
森林問題は環境問題であると同時に、経営と制度設計の問題でもあるということです。

「守る/使う」の外側にある第三の視点

ここで、一度問いそのものを変えてみたいと思います。

「森を守るべきか、使うべきか」ではなく、「100年後に、どんな森を継ぎたいのか」。

守るか、使うかという二つの選択肢に対して、私は第三の視点として「継ぐ」を置きたいと思います。
これは、守ることと使うことの中間を取るという意味ではありません。
100年後から現在を見ることで、両者を「目的」ではなく「手段」として捉え直すのです。

未来へ継ぐために、手を入れず守る森がある。
未来へ継ぐために、伐って使い、植え直す森もある。
二つの対立の間で妥協点を探すのではなく、別の時間軸や視点を加えることで、対立そのものの意味を変える。

私は、こうした認識の転換を「三元論」という視点から探究しています。

企業や自治体にとっても、これは同じです。
森林に関わる施策を考えるとき、「どれだけ森林を保有しているか」「どれだけ木材を使ったか」だけではなく、その活動によって生まれた価値が、次の森林や地域へどう戻っていくのかまで設計する必要があります。

単年度の成果ではなく、10年、50年、100年という時間軸で考える。

そのとき森林は、単なる「資源」でも、触れてはいけない「保存物」でもなく、世代を越えて受け渡していく関係へと見え方を変えていきます。
森を前にすると、私たちはつい「伐るべきか、伐らないべきか」と考えます。
けれど、本当に必要なのは、その二択から正解を選ぶことではないのかもしれません。

私たちは、100年後にどんな森を継ぎたいのか。

問いが変われば、見える選択肢が変わります。
そして認識が変われば、私たちがつくる未来もまた、変わっていくはずです。
(株式会社WSense 代表取締役 / DELTA SENSE 製作委員会 青木 和洋)

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