Updated by 『森林循環経済』編集部 on September 15, 2026, 9:28 PM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
近年、集中豪雨や異常気象の影響により、山地や森林を起点とする土砂災害や流木被害、大規模な林野火災のリスクが一段と高まっている。気候変動に伴い災害が激甚化・頻発化する中、急峻な地形や水利不足による消火活動の難航、土砂崩れに伴う大量の流木流出、治水工事が生態系へ与える負荷など、山地や森林における防災は複合的な課題を抱え、行政・企業・NGOなどは、制度の整備や新技術の投入、自然生態系の機能を活かしたアプローチを進めている。国土交通省による「流域治水」の加速化をはじめ、生態系を活用した防災・減災の事例提示、砂防堰堤に設置する流木対策製品の開発、山林火災を迅速に食い止める消火薬剤の供給や研究まで、森林保全と地域の安全確保を両立させる実践が各地で相次いでいる。
国土交通省は、全国で推進する流域治水プロジェクトの令和7年度の取組進展状況と、令和8年度以降の加速化に向けた方針を4月に公表した。「流域治水」とは、河川管理者だけでなく自治体や企業、住民など流域に関わるあらゆる関係者が協働し、集水域から氾濫域まで一体となって水害を軽減する取り組みのこと。水害リスク情報の空白域を解消するため、2021年の水防法改正に基づいて進めていた洪水浸水想定区域の作成および公表は、住宅などの防護対象がある全国2万819の一級・二級河川すべてで目標通り完了した。ハードとソフト両面での深化が進んでおり、流域全体で総合的な浸水対策を講じる「特定都市河川」に信濃川水系や荒川水系など12水系88河川を新たに指定したほか、4水系46河川で「流域水害対策計画」が策定された。洪水対策としては全国延べ41ダムで事前放流を実施した。また、リアルタイムで浸水状況を把握する「浸水センサ」のガイドライン(案)を作成し全国233市町村で実証実験を継続している。山口県下関市では、土砂災害リスクを踏まえた防災まちづくりを推進するため、砂防関係施設を重点整備する事業を新たに開始した。ソフト対策では、災害の教訓や記憶を伝える活動などを認定する「NIPPON 防災資産」として優良認定6件と認定4件の計10件を新たに選定した。今年度からは流域での雨水貯留や土地利用の工夫を支援する予算制度の拡充・創設を予定しており、関係省庁実務者会議を開催して政府一体での連携強化を進めている。


※参考リンク
令和7年度の流域治水の取組の進展について~令和8年度からの流域治水のさらなる加速化・深化に向けて~ | 国土交通省
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、九州大学、長崎大学、福岡県保健環境研究所と連携し、『流域治水でめざす ネイチャーポジティブ ポイントブック-九州北西部からの提案-』を4月に発行した。共同研究の成果をもとに、治水・防災と生物多様性保全を同時に進める知見を体系化している。健全な自然生態系が持つ機能を活かして災害リスクの低減と環境保全を両立する「NbS(Nature-based Solutions:自然に根ざした解決策)」の観点から、九州北西部における12の実践事例を整理している。森林や農地、河川など流域全体でのアプローチを提示し、筑後川流域の田んぼダムや松浦川の遊水地などを取り上げ、地域の歴史や地形、生態系などを捉えた流域治水の取り組みを紹介している。気候変動に伴い水災害が激甚化する中、従来の構造物中心の対策から自然環境の回復と調和した防災への転換を促す実践モデルとして、今後の流域治水や地域防災のあり方に重要な示唆を与えそうだ。

災害対策製品メーカーのプロテックエンジニアリングは、豪雨災害に伴う流木被害の軽減に向け、「RB(アールビー)キャッチャー」を5月に発売した。不透過型砂防堰堤の上流部に直接取り付けて流木の捕捉性能を高める。従来型の直線配置では目詰まりによる堰上げや越流が課題となっていたのに対し、RBキャッチャーはユニットの間に隙間を設けた配置構造を採用し、水の通り道を確保することで流木による閉塞と堰上げを抑制。後続の流木も確実に捕捉し続け、下流への越流を防止する。大がかりな改修工事を必要とせず、新設だけでなく既設の堰堤へ後付け施工できる点も特長だ。豪雨による土砂崩れに伴って流出する大量の流木は、下流域で橋梁の閉塞や河川の氾濫を引き起こす大きな要因となっていることから、流域治水のハード対策として防災および減災への貢献が期待される。

※参考リンク
砂防施設の流木対策を強化する新製品を発売 | 株式会社プロテックエンジニアリング
消火化学製品メーカーのファイテックは、岩手県大槌町で発生した林野火災の初動支援として、林野火災用消火剤「FOREST DEFENDER(フォレストディフェンダー)」500リットルを釜石大槌地区行政事務組合消防本部へ寄贈した。過去の岩手県大船渡市での林野火災支援実績を踏まえた緊急対応であり、ファイテックは納品直後に現地消防署で取り扱い方法のレクチャーを行うなど、速やかな現場導入を支援した。この消火剤は水で1〜6%に希釈して散布する仕様で、淡水だけでなく海水希釈でも性能が落ちず、自衛隊や防災ヘリによる空中消火にも使用できる。また、高い難燃性による効果的な防火帯の形成能力を備えるほか、界面活性剤やPFAS(有機フッ素化合物)を含まず肥料に近い成分構成にすることで土壌や周辺生態系への負荷を抑える点も特徴だ。4月22日に発生した大槌町山林火災は5月29日に鎮火したが、最終的な焼損面積は1,633ヘクタールにまで拡大した。山間部の火災では延焼や再発火を食い止める資機材の確保が被害軽減の鍵を握る。

※参考リンク
ファイテック、岩手県大槌町の林野火災に対し消火剤「FOREST DEFENDER」500Lを寄贈 | 株式会社ファイテック
総合防災メーカーのヤマトプロテックが提案した研究課題「林野火災用消火剤の消火・火災抑制効果向上の検討」が、消防庁の「令和8年度消防防災科学技術研究推進制度(緊急枠)」に採択された。同社が開発した消火薬剤「K/SMOKE LIQUID」を活用し、消火性能と延焼抑制効果の向上を検証する。薬剤の主成分は水、カリウム、リンの3種類で構成され、付着したリンが持続的に再発火を防止する。大規模な林野火災は一度発生すると制御が難しく、地域社会や自然環境に甚大な被害をもたらす。林野火災は現場へのアクセスや消火用水の確保が極めて難しいうえ、空中からの散布ロスや鎮火後の再発火、さらには薬剤散布に伴う土壌や生態系への負荷といった課題を抱える。自然界に存在する成分を主軸とすることで環境負荷を抑えつつ、ヘリコプターなどによる空中消火の散布効率を高め、迅速に延焼を食い止める消火技術の確立が期待される。

※参考リンク
大規模林野火災に挑む 「K/SMOKE LIQUID」を活用した消火技術研究が始動 | ヤマトプロテック株式会社