Preparing for Intensifying Forest Fires at Home and Abroad: Using Economic Mechanisms Like Insurance to Build Fire-Resilient Forests
Updated by 相川高信 on September 08, 2026, 12:13 PM JST
Takanobu AIKAWA
PwCコンサルティング合同会社
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアマネージャー/森林生態学および政策学をバックグラウンドに、林野庁や地方自治体の森林・林業分野の調査・コンサルティングに幅広く従事。特に欧米先進国との比較から、国内における林業分野の人材育成プログラムや資格制度の創設に貢献した。東日本大震災を契機に、バイオマスエネルギーを中心とした再生可能エネルギーの導入のための調査・研究に従事。FIT制度におけるバイオマス燃料の持続可能性基準の策定に参画。2024年7月より現職にて、気候変動を中心にサステナビリティ全般の活動をリードしている。京都大学大学院農学研究科において森林生態学の修士号、北海道大学大学院農学研究院において森林政策学の博士号を取得。
世界的に大規模な森林火災が相次いで発生している。日本においても、岩手県の太平洋沿岸で大規模な森林火災が2025年から2年連続で発生した。気候変動の影響により高温・乾燥が進むことが予想されている中で、火災に強い森づくりは、科学的なエビデンスを積み上げながら、保険などの経済的メカニズムを活用して実装を進める必要がある。
大規模な森林火災のニュースを見ることが増えたと感じている人も多いだろう。実際に2026年の夏も熱波が襲った欧州や北米で森林火災が発生した。
ただし意外なことに、森林や草地などで発生するWildfire(野火)の発生面積に明確な増加傾向は認められない。しかし、その内訳を見ると、草地での火災が減少傾向にあるのに対して、森林については横ばいか微増傾向にあり、かつ大規模な火災が頻発するようになっている。
一方、日本では、1970年代から件数ベースでは減少傾向にあり、過去10年間は1,000件程度の火災が発生していたが、湿潤な気候のおかげもあって、大規模な森林火災は少なかった。しかし、2025年には住民に避難指示が出るほどの大規模な山火事が、岩手県大船渡市、岡山県岡山市、愛媛県今治市、宮崎県宮崎市で、合計4件発生した。特に、大船渡市の火災は大規模で、焼損面積は3,370haとなり、平成以降では最大の火災になった(写真1)。しかも、翌年の2026年4月には、同じ岩手県の大槌町でも1,633haを焼く火災が発生し、平成以降では大船渡市に次ぐ2番目の規模となった。
このように、日本においても、森林火災の発生とその拡大を防ぐ手立てを講じることが求められていると言えるだろう。

(1) 人為的な失火の防止
まず、日本の森林火災のほとんどは、人為により発生していることを踏まえた対応が必要である。消防庁のデータによると日本で起こった森林火災の原因は、2020年から2024年の平均で、たき火(32.5%)、火入れ(18.9%)、放火(7.7%)、たばこ(4.1%)、マッチ・ライター(2.7%)などとなっている。大船渡市の火災の被害額は100億円を上回ったことを考えると、失火であっても、人為による発生を防ぐ取り組みを強化する必要がある。
そのため、大船渡市の火災を受けて、市町村長による「林野火災注意報」や「林野火災警報」の的確な発令などを通じた山火事予防を推進することになった。また、不注意で失火した場合は、森林法により50万円以下の罰金が科される。
なお、森林火災は落雷などで発生する場合もあるが、人為による発生が多いのは他国でも同様である。筆者は8月中旬にイギリスに滞在していたが、8月14日の晩に火災リスクが高まり、スマートフォンの警報音が鳴り響いた(写真2)。内容は野外でのバーベキューや庭での野焼き、花火などを控えることを要請するものであった。このように人為的な火災発生の予防を強化することは、世界的に重要視される共通の取り組みであると言える。

(2)火災に強い森づくり
次に、火災が発生しにくい、もしくは発生したとしても大火につながらないような森づくりを考えていく必要がある。これには、日本の気象条件や森林の状況にあった方法を科学的に追求するべきである。
森林火災の多くは、落ち葉や枯れ枝、下草や灌木などの地表(林床)の有機物を燃料として「地表火」として発生する。大船渡市の場合のように強風などの悪条件が重なると、樹木全体が燃える「樹冠火」になる。
日本の場合、葉の量が多く、林床に到達する太陽エネルギー量が少ない方が可燃物の湿度が保たれ、地表火のリスクが低くなることが分かっている。そのため、個々の立木が葉量を十分に持つように適切な間伐を行うことが重要である。一方で、間伐が十分ではない林分は、結果的に林床が暗くなるとしても、土壌の保持力や水源かん養機能に劣る可能性がある。そのため、総合的な公益的機能を十分に発揮できず、場合によっては土砂崩れなど他の災害を引き起こす恐れがあることにも注意が必要である。
ただし、雨が降らない極端な天候が続けば、林の状態がどうであっても、林床可燃物の乾燥を避けることは難しい。そこで、上述の失火を防ぐことが一義的には重要であるが、延焼を防ぐための防火帯の設置も有効とされている。防火帯としては、舗装された道路の設置が推奨されているが、地表火の防止であれば、舗装されていない林道や作業道でも十分かもしれない。ただし、いずれの場合も、乾燥しやすい灌木や草に覆われないように、維持・管理が必要である。
また、常緑樹などには古くから火災の拡大を阻止したり、延焼速度を遅くしたりといった効果を持つ種類があることが知られている。その地域に自生する常緑樹を中心に、人家と森林の間や尾根部など、延焼を食い止めるべき箇所に植えることも有効な可能性がある。
(1)火災に強い森づくり活動の原資としての保険の活用
一方で、防火帯としての常緑樹の植栽などは、現状では普及しておらず、日本の多くの小規模な個人所有林で自発的な広がりが期待できるものではない。
そこで検討したいのが、経済的なメカニズムの活用だ。具体的には、科学的に証明された災害に強い森づくりを行う主体や作業に対して対価を支払う。これは一般的には「生態系サービスへの支払い(PES: Payment for Ecosystem Services)」と呼ばれるものであるが、問題はその財源をどのように確保するかということにある。
森林火災の防止については、保険の仕組みを使える可能性がある。一般論として、保険は自然災害の被害低減を促すツールとして用いることができる。具体的には、リスクマップの作成などを通じて、物件や場所ごとのリスク情報を提供するとともに、保険料に反映させることで負のインセンティブを与えることができる。逆に、森林火災を予防・軽減させる森林管理が行われた場合に保険料を減額することで、正のインセンティブとする。これは、自動車保険において、いわゆる優良ドライバー(ゴールド免許)であれば保険料が割引されるため、安全運転を心がけるインセンティブとなっているのと同じである。
さらに、保険会社にとっては、火災の発生頻度や被害規模を抑えることで、保険金の支払い額を抑えることができれば、その活動に投資する価値が生まれることになる。実際に、森林火災による保険金支払いが膨大な金額になっている米国西部では、そのような検討がすでに行われている。火災リスクが高く住居が近接しているエリアでは、住宅の火災保険が撤退を始めていることを考えると、新たなスキームが普及する可能性は高い。
(2)地域コミュニティを主体とした取り組み
日本では森林自体の被害をカバーする保険として、森林保険法に基づく国営の森林保険制度がある。保険金額は、樹種・林齢によって決まっており、火災以外にも保険対象となっている風害や水害、雪害などの災害リスクは考慮されていない。保険金額への反映は、科学的なデータの積み上げが必要であり、今後の研究の蓄積が期待されるところである。
一方で、注意報・警報の運用や、火災予防の普及啓発、地域による見回りの強化、そして防火帯の設置など地域コミュニティが主体となって初めて実施できることも多い。こうした活動に、国営森林保険や、地域の住宅向けの火災保険を提供する保険会社が被害と保険金支払いを減らすことを目的に、自治体や地域の消防組織、森林・林業関係者と連携して、火災に強い地域づくり・森づくりを進めていく方向性がありえる。これは火災以外にも、さまざまな減災活動、そして多様な生態系サービスを地域で支え、促進させる地域のプラットフォームにもなりえるだろう。(PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアマネージャー 相川高信)
※参考文献
・ Samborska,V., et al., (2024) “Wildfires” OurWorldinData.org(2026年8月26日アクセス)
・ National Park Serviceウェブサイト“Wildfire Causes and Evaluations”(2026年8月26日アクセス)
・ 玉井幸治(2025)「大船渡市における大規模森林火災について」(森林保険だよりNo.39)
・ 鹿児島県ホームページ「取り組み例(樹木による防火機能を利用する)」
・ OECD(2023) “Enhancing the insurance sector’s contribution to climate adaptation” OECD Business and Finance Policy Papers, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/0951dfcd-en.
・ The Nature Conservancy with Willis Towers Watson, Sarah Heard (2021)“Wildfire Resilience Insurance: Quantifying Risk Reduction of Ecological Forestry with Insurance”