Case Studies on Returning Biomass-Derived Materials to Soil (1): Can Pelletization and Drones Reduce the Labor of Spreading on Plantation Sites?
Updated by 仲川泰則 on September 30, 2026, 6:54 PM JST
Yasunori NAKAGAWA
編集プロダクション雨輝
森林科学アドバイザー/大学院時代より森林生態系の物質循環に関する研究に取り組み、博士(農学)を取得。大学院修了後は、日本学術振興会特別研究員として湿地林の物質循環をテーマに研究を行った。その後、自然再生事業やバイオマスエネルギー事業にも携わった。
前回まで、バイオマス造林地の土壌が持つ機能の損失を回避する、あるいは損失した機能を回復させるために、バイオマス由来資材を林地還元することを提案した。そして、利活用できる資材として、堆肥、バイオ炭、燃焼灰、消化液の成分を紹介した。今回は、それらの資材の実際の施用方法を紹介し、バイオマス造林地への適用可能性を検討したい。
農林水産省の「国内資源由来肥料の活用事例集」には、家畜ふん尿由来の堆肥を、広域流通や散布の省力化のためにペレットへ加工した事例が紹介されている(※参照1)。下水汚泥については、含水率を低下させた脱水ケーキにして堆肥化する例が、同事例集にも多数紹介されている。さらに、下水汚泥の脱水ケーキも、堆肥化後にペレット化されてから散布される事例もある(※参照1)。ペレットの画像(図1)と脱水ケーキの画像(図2)をそれぞれ以下に示す。


バイオ炭の例として、もみ殻を原料にしたもみ殻くん炭を図3に示す(※参照4)。脱炭素に向けた農林業環境研究コンソーシアムが編集した「バイオ炭の農業利用事例とその活用ガイドブック」(※参照5)では、間伐材チップ、クリイガ、竹、ナシ剪定枝、イネもみ殻を原料にしたバイオ炭が紹介されている。同ガイドブックによると、鶏ふんなどの家畜ふん尿や下水汚泥が原料になることもある(※参照5)。
図4にシャーレに入れられた燃焼灰(木質材及びパームヤシ殻由来)の画像を示す(※参照6)。燃焼灰には、家畜ふん尿を燃料として利用した後に発生したもの(※参照7)や、下水汚泥を焼却した後に残るもの(※参照8)などもある。


図5にビーカーに入れられた消化液を示す(※参照9)。図6にバイオガスプラント全景の様子を示す(※参照10)。このバイオガスプラントは北海道野付郡別海町に設置されている。事業主体である別海バイオガス発電株式会社は2013年に設立され、プラントは2015年7月に稼働を開始した。図6の左側の緑色の円筒状の建物がメタン発酵槽で、右側にある円形の池のようなものが消化液の貯留槽である。消化液は圃場に散布されるまで、このような状態で保存される。このバイオガスプラントは、家畜排せつ物が280t/日(乳牛4,500頭相当分)、産廃系食品残渣が5t/日、合計で285t/日の原料を受け入れている(2019年4月時点の同社公表値)。これは非常に大規模な施設で、図6の中央手前にタイヤの跡とつながっているトラックを基準にすると、施設の広大さがわかる。


バイオマス由来資材のうち、固形物はペレット化あるいは粒状化されて図7のような機器で土壌表面に散布される(※参照11)。消化液は、図8のような機器によって散布される(※参照12)。これらの機器は、平地での使用を想定されたものである。バイオマス造林地では、傾斜地になることもあり、そのような場合は図7と図8のような機器では散布は困難になる可能性がある。


筆者はこれまで、土壌の流亡を避けるために、バイオマス造林は平地か緩傾斜地が適していると述べてきた(※参照13)。傾斜地で機械が入りにくい場所では、ドローンの活用も有力な散布手段として考えられる。農業分野では、すでに農薬、肥料、種子などの散布にドローンが利用されている(※参照14)。果樹園のような傾斜地でも病害虫防除技術が開発されており(※参照15)、北海道のトドマツ植栽地では、薬剤散布用ノズルを用いて植物活性剤を散布した事例もある(※参照16)。こうした技術は、バイオマス由来資材の散布にも応用できる可能性がある。実際、国土交通省の「航空局標準マニュアル(空中散布)」は、農用地等における農薬、肥料、種子又は融雪剤等の散布を対象としており、肥料の空中散布は制度上すでに想定されている(※参照17)。
もっとも、農薬とバイオマス由来資材では危害の性質が異なる一方、飛散、臭気、生活環境への影響に対する周辺住民の懸念には共通する部分がある。実用化に当たっては、飛行場所、飛行方法、機体、資材の粒径、粘度、重量などを踏まえ、航空法上の許可・承認の要否を確認する必要がある(※参照17、18、19)。それに加えて、農薬散布で求められている事項(※参照18)に準じて、風速などに応じた散布中止基準、住宅・道路・水源等との位置関係と風向を踏まえた散布位置の設定、周辺への事前周知、散布区域への立入り管理、飛散や臭気を抑えるための運用方法を検討することが必要である。そのうえで試験散布を行い、特定飛行に該当する場合は、飛行前に飛行計画を通報し、飛行日誌を備えて飛行や整備等の情報を遅滞なく記載する必要がある。特定飛行に該当しない場合も、記録を残しておくことが望ましい。
消化液を散布する際の課題として、水分率が95%を超えることが挙げられる(※参照9)。前回の記事(※参照20)で紹介した消化液の全窒素濃度は3.40g/Lであった。もし、この消化液から全窒素1.0kgを散布するとしたら、約290L必要である。山地への運搬を視野に入れるのなら、濃縮をして容積を減らす必要があると考えられる。バイオ液肥の利用事例でも、運搬や散布の効率化のための濃縮が複数の事例で取り上げられている(※参照21)。
また、消化液のような液体肥料では、かん水チューブなどの管状の資材を使用できる可能性がある。実際に、アスパラガス栽培で液肥が施用された事例もある(※参照22)。他にも、福岡県築上町での、し尿及び浄化槽汚泥由来の液肥を固形分除去後に濃縮し、イチゴのハウス栽培でかん水チューブにより施用した事例や、沖縄県八重瀬町での、サトウキビ畑にダクトホースを設置して消化液を施用した事例がある(※参照21)。かん水チューブを使用する際には、目詰まりを予防するために、固液分離やろ過などの処理が必要になると考えられる。一方、八重瀬町では固液分離をしていない消化液がダクトホースで施用されており、資材によって必要な前処理の程度は異なる可能性がある。いずれの資材でも、粘度、臭気、散布量の均一性が課題となりうる。野外に設置することになると、小動物による食害や大型動物による踏圧に対する対策が必要になる場合もある。緩傾斜地で使用するためには、配液システムの改良が必要になることも考えられる。
図7や図8のような機器では、植栽後は樹木が障害になり使用が難しくなる。しかし、かん水チューブなどの管状の資材を使用した液体肥料の散布が可能になれば、樹木の植栽後も定期的に施肥できる可能性が高まる。
本記事では、バイオマス由来資材の形状を示し、土壌への還元手法の例を紹介した。次回以降も、土壌への還元手法の実例を紹介し、日本国内のバイオマス造林地への適用可能性について、さらに検討したい。(編集プロダクション雨輝・森林科学アドバイザー 仲川泰則)
※参照サイト
(1) 農林水産省農産局技術普及課生産資材対策室. 国内資源由来肥料の活用事例集.(閲覧:2026年9月16日)
(2) たまごや商店HP. 発酵ぼかし鶏ふんペレット商品ページ.(閲覧:2026年9月16日)
(3) 香川県HP. 下水汚泥の提供(試験研究用).(閲覧:2026年9月16日)
(4) 写真AC. 籾殻くん炭(写真素材).(閲覧:2026年9月19日)
(5) 脱炭素に向けた農林業環境研究コンソーシアム編 (2025) バイオ炭の農業利用事例とその活用ガイドブック.(閲覧:2026年9月16日)
(6) 苫小牧民報. 「燃焼灰を肥料に 年間5000トン販売目指す 日本製紙勇払バイオマス発電所」. 2024年2月20日記事
(7) 南国興産株式会社HP. 資源循環事業.(閲覧:2026年9月16日)
(8) 埼玉県HP. 下水汚泥の燃焼灰肥料化.(閲覧:2026年9月16日)
(9) 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 (2012) メタン発酵消化液の畑地における液肥利用 -肥料効果と環境への影響-.(閲覧:2026年9月16日)
(10) 別海バイオガス発電株式会社. 会社概要・施設概要・事業概要.(閲覧:2026年9月16日)
(11) ヤンマーアグリ株式会社HP. 営農情報 営農PLUS 肥料散布.(閲覧:2026年9月16日)
(12) 北海道十勝総合振興局産業振興部農務課. 畑作物への栽培に「メタン発酵消化液」を活用してみませんか?.(閲覧:2026年9月16日)
(13) 仲川泰則 (2026) 短伐期収穫時代のバイオマス造林を維持するには ― バイオマス由来資材の林地還元の可能性. 森林循環経済2026年7月21日記事.(閲覧:2026年9月16日)
(14) 農林水産省農産局技術普及課. 農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会.(閲覧:2026年9月16日)
(15) 農林水産技術会議事務局研究企画課. 傾斜地果樹園におけるドローン病害虫防除の実現.(閲覧:2026年9月16日)
(16) 国土防災技術北海道株式会社. ドローン(小型無人機)を活用した緑化〜スマート林業の挑戦.(閲覧:2026年9月16日)
(17) 国土交通省HP. 無人航空機の飛行許可・承認手続.(閲覧:2026年9月16日)
(18) 農林水産省HP. 無人航空機による農薬等の空中散布に関する情報.(閲覧:2026年9月16日)
(19) 国土交通省航空局. 航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行の取扱い.(閲覧:2026年9月24日)
(20) 仲川泰則 (2026) 燃焼灰・バイオ炭・堆肥・消化液などの養分データから探る、バイオマス由来資材の林地還元の可能性. 森林循環経済2026年8月21日記事.(閲覧:2026年9月16日)
(21) 一般社団法人日本有機資源協会 (2024) バイオ液肥活用先進事例集.(閲覧:2026年9月16日)
(22) 井上 惠子・古賀 武・石松 敬章 (2018) アスパラガスの点滴かん水同時施肥が土壌の化学性と収量・品質に及ぼす影響. 福岡県農林業総合試験場研究報告. 4, 135-140