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自治体主導のガバメントハンター連携始動 クマやシカ被害に広域連携とDXで挑む【鳥獣対策の動向2026】292

Updated by 『森林循環経済』編集部 on May 08, 2026, 6:19 PM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

近年、クマの出没増加やシカ・イノシシによる林業・農業被害が深刻化するなか、対策の現場では「人の力」に頼った従来の手法から、デジタル技術を駆使した「効率化」と「広域連携」への転換が急速に進んでいる。狩猟免許を持つ自治体職員を行政の枠組みを超えて繋ぐ広域ネットワークの構築から、AIによるクマの自動検知、さらにはロボット犬を用いた防除システムまで、最前線ではこれまでにない解決策の実装や実証が進んでいる。

自治体主導の信州ガバメントハンター協議会が始動、広域連携で対策の高度化を目指す

長野県小諸市と大町市が発起人となり、Goat Plusを企画・運営事務局として設立した「信州ガバメントハンター協議会(SGHC)」は、4月27日に第1回定例会合を開催した。狩猟免許を持つ市職員が捕獲や対策を担う「ガバメントハンター」を主軸とし、担当者の孤立やノウハウの属人化を防ぐための広域ネットワークとなる。専用アプリを活用した解決事例のデータベース化や補助金情報の共有といったデジタル面と、実地訓練などのリアルな活動を融合させる。情報共有や高度な専門性を持つ職員の育成を通じ、地域全体で野生鳥獣への対応力を底上げする。自治体が現場の最前線に立つ先駆的な取り組みは、狩猟者の担い手不足が課題となるなかで、持続可能な野生動物管理の新たなモデルケースとして注目される。

出典:Goat Plus

※参考リンク
信州ガバメントハンター協議会(SGHC)第1回定例会合を開催します | 小諸市
小諸市・大町市が「信州ガバメントハンター協議会」を設立。現場主導の新たな鳥獣被害対策ネットワークが始動|株式会社Goat Plus

NTTドコモビジネス、クマ対策を一気通貫で支援するソリューション

NTTドコモビジネスは、クマの早期発見から情報共有、現地調査までをデジタル技術で支援する「熊対策ソリューション」の提供を4月1日より開始した。通信機能付きトレイルカメラとAI解析による早期検知と自動通知機能を備えて、迅速な住民への情報発信を可能にする。ドローンは状況確認にとどまらず、スピーカーによる「追い払い」や、夜間の追尾による獣道特定も行う。地域アプリは自治体からの注意喚起に加え、住民からの「通報機能」も備えており、電話窓口への集中を防ぎ自治体職員の負担軽減につながる。全国的にクマ被害が深刻化するなか、人命保護と業務効率化を両立するデジタルソリューションとして、今後の展開が注目される。

出典:NTTドコモビジネス

※参考リンク
熊の早期発見から情報発信・現地調査の効率化までを一気通貫で支援する「熊対策ソリューション」を体系化し、提供を開始|NTTドコモビジネス 企業情報

ソラコムとJWP、IoT×AIで見回り負担9割削減と自動追い払いを実証

IoTプラットフォームを提供するソラコムと農業ICTを展開するジョイ・ワールド・パシフィック(JWP)は3月に開催した鳥獣対策セミナーで、デバイスとAIを組み合わせた現場の効率化事例を紹介した。罠の扉の開閉を検知するIoTデバイス「ワナベル」を用いた実証実験では、不要な現地確認を排除することで、従来36時間かかっていた作業工数を3.4時間へと約9割削減した。さらに、AIが対象の動物を判別して音や光で追い払うシステムも検証しており、農家が畑に行く前に安全を確認するツールとしても有効に機能している。現場の知見とIoT技術の掛け合わせにより、鳥獣対策のさらなる高度化が現実味を帯びてきた。

出典:JWP

※参考リンク
見回り負担を9割削減、AIで熊も追い払う─IoTと鳥獣対策 | 株式会社ソラコム

はんぽさきが共有地図「LivMap」のクマ対策パッケージ、LINE連携で目撃情報を即時可視化

地理情報を活用したDX支援を手がけるはんぽさきは、共有地図プラットフォーム「LivMap」において、LINEから目撃情報を投稿して地図上に集約できる「クマ対策パッケージ」の無償提供を開始した。自治体や公的機関など、先着30組織が対象となる。住民が使い慣れたLINEを情報窓口にすることで、写真や位置情報を含む正確なデータのリアルタイムな収集と地図上への可視化を可能にする。収集されたデータは自治体や猟友会の迅速な対応を促すほか、対応状況の記録や地域住民との正確なリスク共有を可能にする。情報の即時性と可視化に強みを持ち、初動対応が鍵となる鳥獣対策の現場で威力を発揮しそうだ。

出典:はんぽさき

※参考リンク
「クマ対策パッケージ」の提供を開始しました | LivMap (リブマップ) – チームで使う共有地図

鳥羽商船高専、ロボット犬とLoRaWANを用いた対策システムで受賞

鳥羽商船高等専門学校の情報機械システム工学科の学生チームは、3月11日に開催された「WiCON2025」において、「ロボット犬を用いた完全自動害獣対策システム」で協賛企業賞(安藤ハザマ賞)を受賞した。三重県御浜町で深刻化する猿の農業被害解決を目指し、AIカメラが害獣を検知するとロボット犬が現場へ自律移動して追い払いを行う仕組みだ。また、携帯通信網が未整備な中山間地域でも稼働するよう「LoRaWAN通信」を活用し、検知情報はLINE通知を通じて農家が遠隔で把握できる。人間が24時間体制で監視を続けることは難しい現場の課題解決に向け、ロボティクスと通信技術による対策の実現可能性を示す試みとして注目される。

出典:鳥羽商船高等専門学校

※参考リンク
WiCON2025において協賛企業賞(安藤ハザマ賞)と奨励賞を受賞しました | 独立行政法人国立高等専門学校機構
採択チーム紹介 |Siraisi-lab(鳥羽商船高等専門学校) |WiCON2025

シカは303万頭・イノシシは122万頭で高止まり、半減目標は令和10年度に延長

環境省は、2023年度(令和5年度)末時点におけるニホンジカ及びイノシシの個体数推定結果を4月23日に公表した。全国のニホンジカは中央値で約303万頭、本州以南においては約230万頭。イノシシは中央値で約122万頭とされ、ともに依然として高い水準が続いている。平成25年度から掲げていた「10年後までの半減目標」は達成が困難となり、令和10年度への延長が決定された。各地の自然生態系や農林水産業へ深刻な被害をもたらしており、今回示されたデータは今後の広域的な管理計画において不可欠なエビデンスとなる。個体数の抑制に向けては、熟練者の専門的な知見やデジタル技術を多角的に組み合わせ、生息状況の把握や捕獲対策などのさらなる高度化が求められる。

出典:環境省

※参考リンク
全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果について | 環境省

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