"Raising children in the forest, raising them in the forest" - A forest kindergarten in Chizu, a forestry area, offers the option of "rural parenting."
Updated by 西村早栄子 on May 07, 2026, 6:09 PM JST
Saeko NISHIMURA
NPO法人智頭の森こそだち舎
1972年生まれ。学生時代に林学を学び、大学院では熱帯林(マングローブ)の研究でミャンマーに留学経験も。結婚後に鳥取県に移り、2003年鳥取県庁入庁。2012年退職。2009年に『智頭町森のようちえん まるたんぼう』設立。その後、2013年に第2園の『空のしたひろば すぎぼっくり』、2014年には卒園児のためのオルタナティブスクール『新田サドベリースクール』、2016年に子育て世帯向けシェアハウス『はじまりの家』等の設立に関わる。2024年に事業承継し、現在は智頭町での暮らしを楽しんでいる。
鳥取県智頭町で2009年より「森のようちえん」という活動を通して子育ち・人育ちに関わってきました。わが子を山村で育てたくて移住した智頭町での子育てが、予想以上に素晴らしく、社会の中に「田舎こそだて」という選択肢を作りたくて、仲間達と活動をしてきています。



森のようちえんとはその名のとおり、森を園舎と見立てて森の中で保育や幼児教育を行う活動です。「森のようちえん」と名乗る/名乗らない、建物を持つ/持たない等、いろいろなスタイルがありますが、総じて室内の活動ではなく、自然の中での活動・育ちに重きを置く活動と言えます。
「森」と名付けていますが、森だけにこだわらず、海・川・湖・公園・人里等、自然を中心とした野外での活動を総称して「森のようちえん」と称します。
私達の森のようちえんは、智頭杉で有名な林業地である智頭町で展開してきました。特徴としては、①町の面積93%が森というリアルな山村で活動②中四国九州で初の本格的な森のようちえん③教育の専門家ではなく、子育て中の「お母ちゃん」達が立ち上げた④開園当初から智頭町(後に鳥取県)といった行政からのサポートを受けて運営、という特徴があります。
そもそもこの森のようちえんは、北欧デンマーク発祥と言われています。1950年代にデンマークの1人のお母さんが「わが子を森で育てたい」と、毎日森に連れて行ったのが始まりでした。次第に近所のお母さんが、「うちの子も一緒に連れて行って」と活動が広がっていきました。
現在は、世界中にその取り組みは広がっていますが、特に森林に親しむ文化的土壌のあるドイツは、森のようちえんの先進国であり、施設数も2000~3000にのぼるとも言われています。


ドイツに負けず劣らず森林と深い関係を結んできた日本でも、活動は広がっています。大正時代には大阪池田市で、野外で主に活動する「家なき幼稚園」という活動が広がった時期もあったようです。
ヨーロッパの森のようちえんに影響を受けた現代型の森のようちえんは、1970~80年代頃のいわゆる「自由保育」の系譜や、同じ頃始まった「自主保育※」の流れを受けて、1980~90年代に第一世代の活動が始まりました。2000年代になると、特に長野や愛知など中部地方を中心に活動が広がっていきました。
私達が活動を始めた2009年前後には、第二世代の活動が広がり始めた時期でした。2005年に森のようちえん全国ネットワーク連盟が「森のようちえん全国交流フォーラム」を始めたのも広がりの後押しになっていました。
私達の活動は智頭町との連携もあり注目され、地元テレビ局(山陰中央テレビ)やNHKとっとり等によりドキュメンタリー番組にして頂き、2011年に全国放送されました。特に、山陰中央テレビ制作の『自然のふところで~森のようちえん まるたんぼう流』は、FNSドキュメンタリー大賞にノミネート放送され、放送批評懇談会の「ギャラクシー賞」を受賞。のちに、NHKにより全編英訳されて世界160ヶ国に放映されるという幸運に恵まれ、全国に森のようちえんという活動を知って頂く一助になれたかもしれません。
※自主保育…母親(父親)同士で預け合いながら保育を行うスタイル。保育の専門家によらないが、「親育ち」の場にもなっている
世界的な自然環境への関心の高まりや、幼児の自然体験活動が減っている現状などから、森のようちえんへのニーズは高まっており、世界的にも国内でも活動は広がってきました。特に、日本では自主保育型が多いのが特徴でした。
しかし、2019年に始まった幼児教育無償化と急速に進む少子化により、日本の森のようちえんは現在岐路に立たされています。
元々、日本の森のようちえんは一般的に行政からの支援がもらえずに、厳しい財政状況にありましたが、幼児教育無償化による公立園等の無料化により、(支援をもらえない)森のようちえんを選択する家庭が激減し、さらに苦しい運営を強いられています。また、国の進める幼児教育無償化では、保育認定や施設類型によって支援内容に差があるため、自分の手で子育てをしたいと思っていた母親も、より支援を受けやすい施設を選ばざるを得ない状況があり、日本の特徴であった自主保育型の森のようちえんの運営も難しくなっています。
時代の流れは森のようちえんには厳しいですが、それでも灯を消してはいけないいくつもの理由が森のようちえんにはあります。このシリーズでは、森のようちえんの魅力やその意義について紹介していきたいと思います。(NPO法人智頭の森こそだち舎理事長 西村早栄子)

