Updated by 『森林循環経済』編集部 on May 12, 2026, 9:38 PM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
脱炭素社会の実現や地域資源の活用に向け、建築分野における国産材利用が官民で新たなフェーズを迎えている。4月の林政審議会で提示された次期「森林・林業基本計画」案では、非住宅・中高層建築物の木造化の推進が柱に据えられている。具体的には、2030年に建築用材等における国産材利用量を現状から約3割増となる2300万立方メートル・国産材率7割へと引き上げる目標を打ち出している。政策に呼応するように民間でも、廃材循環まで視野に入れた協定締結、生命保険会社の全国100拠点木造営業所計画の始動、都市部での国産材57%の4階建耐火木造竣工、システム天井向け国産木材ルーバーの開発など、ライフサイクル全体を見据えた実装が相次いでいる。
林野庁は4月22日、林政審議会において次期「森林・林業基本計画」案を公表した。「百年つづく『森の国・木の街』へ」をテーマに、国産材建築の分野での現状と対策を提示した。企業の環境意識の高まりや非住宅・中高層建築物における木材利用技術の進展、半世紀ぶりの建築用材自給率の過半数超えなど、ポジティブな変化を報告した。2030年までに建築用材等における国産材利用量を現状から約3割増となる2300万立方メートルへと増やし、国産材率を7割に引き上げる目標を掲げている。住宅需要が人口減少で下がり基調にあるなか、開拓の余地が大きい都市部の非住宅・中高層分野での木造化や木質化を推進する。また、建築物のライフサイクルカーボン評価を通じた環境貢献の可視化を図り、品質性能の確かなJAS製品の安定供給や大径材を活用した内装材への高付加価値化により、森林産業全体に好循環を生み出す方針を示している。

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林政審議会(令和8年4月22日)配付資料一覧 | 林野庁
農林水産省は、3月27日に「令和7年度建築物における木材の利用の促進に向けた措置の実施状況の取りまとめ」を公表した。着工状況(床面積ベース)は、3階建て以下の低層住宅の木造率が83.5%である一方、それ以外の建築物全体では6.6%にとどまる。低層非住宅は16.2%、中高層の住宅は0.2%、中高層の非住宅は0.1%以下と依然として低位にとどまっている。中高層木造の床面積は対前年横ばいながら、過去10年ではおおむね増加傾向にある。自治体や民間企業による「建築物木材利用促進協定制度」の締結件数は3月16日時点で国31件・地方公共団体217件、令和7年の協定に基づく木材使用量は13万2738立方メートルとなった。令和6年度に国が整備した公共建築物のうち、木造化された建物は51棟あり、林野庁と国土交通省の合同検証チームによる検証結果を踏まえた木造化率は100%を達成した。

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「令和7年度建築物における木材の利用の促進に向けた措置の実施状況の取りまとめ」等について | 林野庁
経済産業省、農林水産省、国土交通省、環境省は、日本繊維板工業会と「建築物木材利用促進協定」を3月10日に締結した。建設発生木材・未利用材・廃木材・被災木材を木質ボードの原料として再資源化する取組を推進する。建築物のLCCO2(ライフサイクルCO2)評価やSHK制度に関する環境効果の周知も盛り込まれた。協定期間内に対象事業におけるCO2排出量を2025年比で10%削減する。日本繊維板工業会は、木材の有効活用に不可欠なパーティクルボードやファイバー断熱材などの製造業者で構成する団体であり、未利用材や再利用材の付加価値向上において重要な役割を果たす。4省合同という枠組みは、木材利用が単なる農林業の振興策ではなく、産業競争力の強化、住宅・建築政策、そして環境保全という多極的な視点から推進されていることを示している。

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経済産業省、農林水産省、国土交通省及び環境省が、日本繊維板工業会と「建築物木材利用促進協定」を締結しました | 経済産業省
住友林業が設計・施工を手がけた日本生命保険の「岐阜海津平田オフィス」が3月に利用開始された。日本生命が進める全国100棟の木造営業拠点を整備する計画における1棟目となる。使用する木材の6割を国産材とし、構造に住友林業独自の「ビッグフレーム構法(BF構法)」を採用し、約9mのロングスパンによる柱や壁が少ない広々とした大空間の執務エリアを実現した。国産スギをふんだんに使い外装部材や構造躯体を現し(あらわし)にすることで木のぬくもりも感じられる。環境性能の可視化も図っており、建物の資材調達から建設までに排出されるCO2(エンボディドカーボン)を鉄骨造比で26%、RC造比で15%削減したという。木材使用は約81立方メートルにのぼり、約68トンCO2e bioの炭素固定にも寄与している。脱炭素とウェルビーイングを両立する次世代型木造オフィスのモデルケースとして注目される。



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住友林業が設計施工した日本生命保険の木造オフィス利用開始~木質感あふれた空間でCO₂排出量も削減~ | 住友林業株式会社
三菱地所ホームは2月、都市部における木造化の推進モデルとして、全8戸の4階建木造耐火建築「PRISM II」を東京都豊島区に竣工した。グループの連携を活かして九州産杉材などを積極採用した結果、構造材として使用した木材135立方メートルのうち、国産材比率57%を実現した。これはツーバイフォー工法における国産材利用率の全国平均の約3倍にあたる。また、木造特有の軽さにより杭工事を省略し、工期とコストも圧縮した。現場でパネルを組み立てる「手組み」施工でありながら、RC造比で躯体工事の労働時間を約30%削減する試算も得ており、建設現場の人手不足への一手としても期待される。炭素貯蔵効果の高さから国交省の令和6年度「優良木造建築物等整備推進事業」にも採択されており、都市木造の実践的モデルとして注目される。

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三菱地所ホーム株式会社が設計・施工をした4階建共同住宅「PRISM II(プリズムツー)」 | 三菱地所ホーム株式会社
三菱地所設計とパナソニック エレクトリックワークスは、システム天井に対応した「国産木材格子ルーバー」を共同開発した。利用者のウェルビーイング向上を背景に、普及率の高いグリッド型システム天井に組み込むことで容易に空間の木質化を実現する。大規模な下地工事は不要で、システム天井が持つ施工性や更新性を維持したまま木材特有の素材感や意匠性を高めることができる。照明設計との融合で最適な光環境も提供する。構造体の木造化が困難な既存ビルにおいても、設備や内装からのアプローチで国産材利用と木質化を推進することが可能となり、木材利用の裾野を広げるソリューションといえる。

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システム天井の意匠性を高める国産木材格子ルーバーをパナソニック エレクトリックワークス株式会社と共同開発 | 株式会社三菱地所設計
建築・不動産業界の最新トレンドを発信する「住まい・建築・不動産の総合展[BREX]2026」が、5月13日から15日までの3日間、東京ビッグサイトで開催される。350社超が出展し、100セッションを超える専門セミナーが予定されている。中でも注目すべきは「非住宅木造建築フェア」だ。大手ゼネコンやハウスメーカーが多数出展するほか、専門の建築士への相談ブース、展示会場で実際に建物を施工・実験する体験型企画「建築ライブ’26」なども実施される。非住宅建築の木造・木質化を巡る技術的な課題から、木材がもたらす新たな付加価値や可能性まで、最新の知見とソリューションが一堂に会する。