Updated by 『森林循環経済』編集部 on June 08, 2026, 6:22 PM JST
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プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。
「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現に向けた動きが、国、自治体、民間企業の枠を超えて多角的に展開している。これまでは定量化が難しかった自然資本や生態系の価値を算出・可視化する技術が進展し、森林をはじめとする環境の保全や評価を行う基盤が整いつつある。林野庁は森林の水資源貯留機能を数値化する簡易評価手法を公表し、環境省は、法制化された自然共生サイト認定を拡大したほか、ネイチャーポジティブ経営による企業価値向上の道筋も提示し始めた。さらに、衛星データを活用した生態系の広域推定技術の実証、地域に根差した産学官の取り組みも進んでいる。ネイチャーポジティブを社会経済の共通価値へと組み込む実践的な取り組みは本格化しつつある。
林野庁は、森林が有する多面的機能の一つである水資源涵養機能について、専門的な知識がなくとも算定可能な簡易評価手法「VWRR(The Volume of Water Resource Recharge in Forest Land)」を作成・公表した。従来、森林の保全や整備がもたらす水資源への影響を定量的に評価するには、膨大な観測データや複雑な解析が必要であり、現場レベルでの算出には高い壁があった。今回公開された手法は、概ね100ha以下で樹木の枝葉(樹冠)が接する程度に成長した(10~20年生以上)状態の森林を対象に、「水資源貯留機能」に特化して評価を行うもの。気象情報と、樹種や立木密度、樹高、胸高直径といった林分の基本情報を用いて、降雨量から直接流出量と蒸発散量を差し引き水資源涵養量を算定する。提供されるエクセル形式の計算ツールに必要項目を入力するだけで容易に算出でき、結果をグラフ化することも可能だ。算出された数値は、企業のTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)やサステナビリティレポートへの活用に有効であるほか、水資源涵養量が自社の水使用量を上回る場合は「Water Positive」として説明できるメリットもある。地方自治体における施策立案や住民の理解促進にも役立つ。森林が持つ水源涵養機能はネイチャーポジティブの土台となるものであり、今回の手法はその価値を定量的に示すための基盤として位置付けられる。民間企業による森林づくり活動や自治体の施策立案などへの活用も想定されている。

※参考リンク
林地における水資源涵養量(貯留機能)の簡易評価手法(The Volume of Water Resource Recharge(VWRR) in Forest Land)| 林野庁
地域生物多様性増進法に基づく「自然共生サイト」として新たに108か所が認定された。これにより累計569か所となり、かねてより掲げていた「早期に500か所以上」という初期目標を達成した。これは企業の社有林や工場敷地内の緑地、自治体の管理地、地域の里山など、民間などの活動によって生物多様性の保全が図られている区域を公的に位置づけ、ネイチャーポジティブの実現を目指す環境省の取り組みだ。対象となる活動は、豊かな生物多様性を維持する「維持」、管理放棄地などの生物多様性を高める「回復」、開発跡地などに生物多様性を生み出す「創出」の3タイプに分類される。令和7年度第3回となる今回の認定では、企業の敷地内緑地や社有林、自治体の管理地、地域の里山など多様な主体の活動が対象となった。単なる環境保護活動にとどまらず、企業のESG評価への反映や地域経済との連携を深めることで、社会全体での生物多様性保全を進める仕組みとして位置付けられている。

※参考リンク
地域生物多様性増進法に基づく「自然共生サイト」の認定 (令和7年度第3回)について| 環境省
ヤマハ発動機は、三重県尾鷲市で発足した「尾鷲ネイチャーポジティブコンソーシアム」への参画を発表した。日本自然保護協会や尾鷲市、民間企業らが連携し、森林整備や藻場再生といった自然環境整備、環境負荷低減、一次産業の担い手育成や教育を軸に、22世紀を見据えたサステナブルな地域づくりを掲げる。同社はコンソーシアムを共創基盤とし、地域観光や教育現場における電動アシスト自転車や「Mobilit.E.S(モビリテス)」の活用、開発中製品・サービスの実証実験などを進める方針だ。自社が持つ技術シーズを地域課題の解決に活用し、自然再生と地域活性化の両立を図る取り組みとして注目される。

※参考リンク
自然再生と地域の発展を目指す「尾鷲ネイチャーポジティブコンソーシアム」に参画 | ヤマハ発動機株式会社
所沢市、NTTドコモ、日本自然保護協会は、衛星画像データやAIを活用して地域の植生や生物の生息状況を推定する共同実証実験を開始した。3者は2023年に所沢市のネイチャーポジティブの実現を目的とした連携協定を締結し、トンボ相の自動同定モニタリング手法の開発検討や里山保全活動などに共同で取り組んできた。今回はドコモのAI解析技術などの強みをさらに活かし、新たに衛星画像を用いた広域推定技術の実証を導入。市内にある「菩提樹池里山保全地域」を中心としたエコロジカルネットワークの重要エリアを対象に、従来の現地踏査をICT技術で補うことで、調査の負担軽減や効率化を目指す。また、取得したデータは自然共生サイトへの登録やモニタリング、新たな保全施策の立案や効果検証などへの活用を見込む。自治体と企業、公益財団法人が手を取り合い、最先端技術でネイチャーポジティブの実現を加速させる先進的な取り組みとして、今後の成果が期待される。

※参考リンク
所沢市、ドコモ、日本自然保護協会が衛星画像データを活用した、植生および生物の広域推定技術の実証を開始~所沢市におけるネイチャーポジティブの更なる加速をめざす~ | 株式会社 NTT ドコモ
生物多様性の保全・回復の取り組みに向けた3者連携協定 | 所沢市
京都大学フィールド科学教育研究センターとパナソニック ホールディングスは、「森里海連環学」の推進とネイチャーポジティブの実現に向けた連携協定を締結した。京大フィールド研が持つ研究知見とパナソニックHDの企業活動の場の融合を目指す。具体的には、環境DNAや炭素・窒素循環を軸とした最先端の生物多様性および生態系機能の評価手法を、滋賀県草津市の「共存の森」や工場緑地へ適用する。生態系機能の解析や自然資源の持続可能な利活用を進め、周辺地域における生態系ネットワークの構築や人材育成を目指す。大学の高度な研究と企業の環境資産を組み合わせ、成果の社会実装と生物多様性の保全を両立させるモデルケースとして、今後の展開が期待される。

※参考リンク
京都大学とパナソニックHD、森里海連環学の推進およびネイチャーポジティブの実現に向けた連携協定を締結 | パナソニック ホールディングス株式会社
バイオームは、企業向けに提供する自然資本・生物多様性データの可視化マッピングツール「BiomeViewer(バイオームビューア)」の分析精度を大幅に強化した。約1kmの高解像度メッシュで自然資本の分布を可視化・評価できるのが特徴だ。今回のアップデートでは、各種データを統合したことで生物データ量を従来の約2.5倍、対象の種数を約1.2倍に拡大。さらに、最大4種類の解析モデルを組み合わせる「アンサンブルモデリング」の採用や最新の衛星データの導入によって、より高精度な生物分布予測が可能となった。TNFDへの対応などを背景に企業経営における自然資本の定量把握が急務となるなか、事業活動が生態系に与える影響の可視化を強力に支援する。

※参考リンク
ネイチャーポジティブの実現へ、自然資本を拠点・種単位で可視化する「BiomeViewer」の分析精度を大幅強化 〜TNFD対応に向け、自然資本の可視化・分析をより高精度化〜 | 株式会社バイオーム
環境省は、ネイチャーポジティブ経営を進める企業の実践事例をまとめた「ネイチャーポジティブ経済移行に向けた企業価値向上ストーリー集」を3月に公表した。これは2025年7月に策定された「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025–2030年)」を踏まえたもので、先行企業20社の具体的な取り組みを紹介している。背景には、ネイチャーポジティブ経営と事業機会や企業価値向上との関係性が不明瞭であるという課題があった。各企業にとっての重要課題をはじめ、植林活動や土地利用の改善など具体的な施策を紹介し、自然資本への依存をリスクではなく新たなビジネス機会へと転換した事例をまとめている。企業規模を問わず、これからネイチャーポジティブ経営へ取り組む企業にとって、事業の継続性と競争力の強化を両立させる実践的なヒントとなるだろう。
